アンスリウムを君に 1周年フリー!

愛しい香り


「ん…」

ぼんやりと目を開けた綱吉が、ゆっくりと周囲に首を回した。
背中に当たる柔らかなソファと見慣れた自分の物ではない家具と天井に自分が黒曜にいるのだと認識し、安堵の息を漏らす。
骸の姿は見えないが、眠っている自分を置いて遠くへ行ってしまうような人間ではないから、その内戻ってくるだろう。
そう思って、もう一度眠ろうかと瞼を下ろしかけた。
しかし寝返りを打とうとして感じた腰と下半身の違和感に、先程の行為を思い出して赤面する。
服を何も着ていない体の上に掛けられた、骸の上着が更に綱吉の羞恥心を煽った。
今この部屋には自分1人しかいないのに恥かしくて堪らなくて、その恥かしさから逃げるように綱吉は骸の上着を顔を隠すように引き上げる。
そのせいでより強く香ってしまう骸の匂いに、綱吉の頬が益々染まった。

『綱吉君』

そう骸が耳元で囁いたのを思い出して、綱吉がきゅっと目を瞑る。
脳内で再生される骸との行為は、目を閉じたことでより鮮やかになった。
情欲に濡れた骸の視線や、切なげな熱い吐息を思い出すだけで綱吉の息が上がっていく。
つい先程まで抱き合っていた体は簡単に熱を思い出し、下半身が熱くなってくる。

「骸……あっ!」

もどかしく脚を擦り合わせようとすると、勃ち上がり始めていた自身の先端を骸の上着に擦ってしまい、綱吉が小さく声を上げた。
一度刺激を与えてしまったそれは、もっともっとと言うように主張を強くしてくる。

「はっ…ぁ、ん…」

横向きで丸くなった綱吉が、震える指先でそっと自身に触れた。
軽く扱いただけで嬉しそうに自分の指を濡らすそれに、綱吉の興奮が高まる。

『気持ちいいんですか?綱吉君』
「ふあ!あっ…むくろぉ」

骸の指使いを思い出しながら慰めると、痺れるような快感が背筋を駆け上がった。
深く息を吸うと骸の香りが胸を満たして、まるで骸に抱き締められながら自慰をしているような気分になってくる。
そう思うとどんどん快楽が増していって、自身を慰める手が早まった。

『可愛いですね…』
「あっ、う…ひあ!!」
先走りを全体に塗りたくりながら、何度も裏筋を擦り上げる。
自身の根元を押さえながら先端を虐めれば、あまりの快感に綱吉の腰が跳ねた。

『ほら、こうするともっと気持ちいいんですよ』
「んあ!やっ…あ!やだっ!」

やだやだと言いながら、痛いぐらいに先端に爪を食い込ませる。
そうすると、ぎゅうっと閉じた綱吉の目尻から快感から来る涙が零れ、虐めている先端からも先走りが溢れた。

「く、あっ!むくろ!むくろっ!!」
「おや、随分と可愛らしいことをしていますね」
「!?」

快感で白くなっていた綱吉の頭が、一瞬で冴える。
興奮で赤くなっていた顔を蒼くして目だけを声のした方へ向けると、ニヤニヤとした笑みを浮かべている骸が扉に背を預けるようにして立っていた。
その手に握られている湯気の立つタオルは、きっと自分の為に用意された物なのだろうと綱吉の思考がどうでも良い方へ働く。
骸は笑みを湛えたまま骸の上着の下で小さく固まってしまった綱吉の元へ歩み寄ると、空いている綱吉の足元側へと腰を下ろした。
それを不思議そうに見ていた綱吉と目が合うと、にっこりと笑う。

「どうぞ?」
「へ?」
「続き、していいですよ?体を拭くのは終わってからの方がいいでしょうから」
「なっ!?」

つまり骸の目の前で自慰をして達してみろと言われているのだ。
綱吉が耳まで真っ赤にして怒鳴る。

「そ、そんなこと出来る訳ないだろ!!」
「では、それはどうするんです?」

下半身を指差されて綱吉がぐっと言葉に詰まった。
骸に見つかって驚いた割には元気なままの自身が憎らしい。
抜かないことにはどうにもならないが、骸の前でするなど綱吉には考えられなかった。
それに何より恋人が目の前にいるのに触ってもらえず、一人でしなければいけないということが耐えられない。
すぐ傍に骸がいると思うと、触ってもらいたいという思いが綱吉の中でどんどん大きくなった。
放置されたままのそこが疼きだし、綱吉がもじもじと膝をすり合わせる。

「むくろぉ…」

縋るような目で見ながら綱吉が強請ると、骸が呆れたように溜息を吐いた。
その反応に綱吉の体が怯えるように小さく震える。
そんな綱吉に骸が優しく笑って、茶色の髪をフワフワと撫でた。

「別に、怒っているんじゃありませんよ」
「そうなの…?」
「ええ」

骸が不安そうに訊く綱吉の前髪を掻き上げてキスをすると、そのまま覆い被さり額同士をくっつける。
綱吉の頬をゆるゆると撫でながら、骸が眉を下げた。

「ただ、そんな風に言われると、また君を抱きたくなってしまうと思っただけです」
「…さっきあんなにしたのに?」
「だから本当はもう、君に無理をさせたくないんですけどね」
「あっ!」

綱吉に掛かっている上着ごと綱吉のものを掴めば、綱吉から嬉しそうな嬌声が上がった。
骸が扱く度にグチュグチュと淫猥な音を立てるそこは、すぐに湿って色が変わってくる。
もっと触ってと言うように無意識に両足を広げる綱吉に、骸は唇を舐めた。

「綱吉君がそんなに僕にイかせてほしいって言うなら、期待に応えてあげないといけないですよね」
「ひゃめ!ああっ!イく!!」
「いいですよ。イかせてあげます」

言いながら骸が綱吉に掛かっている上着を剥ぐと、先走りをぬらぬらと光らせながら愛らしく勃ち上がった綱吉のものが現れた。
先程散々イッたくせに浅ましく欲望を露にするそこに苦笑して、骸が綱吉の両足を抱える。
いつの間にか取り出した骸の怒張を後孔に押付けると、綱吉の体がビクリと震えた。
首だけを上げて、自分の足の間にいる骸を恐る恐る見上げる。

「ひあ、あ……い、挿れるの?」
「ええ。僕にイかせてほしいんでしょう?」
「でも、もう、オレこれ以上は……」

疲れて無理だと言う綱吉に骸が薄く笑った。
軽く腰を進めると、綱吉は簡単に骸のものを飲み込む。
切っ先だけを埋めると、骸は綱吉を覆い被さるように抱き締めた。

「こんなに嬉しそうに飲み込むのに?」
「ふあ、あ…!むくろ!むくろっ!!」
「可愛い綱吉君……。でも、もし君が本当に嫌なら抜いてあげますよ?」

骸の言葉を聞いて、綱吉の後孔がきゅっと締まった。
いやいやと首を振りながら、綱吉が骸の背に腕を回して抱き付く。

「や、あ……抜かないでぇ…」
「クフフ……素直でいい子ですね」
「ああっ!!」

骸が一気に奥まで突くと、綱吉が大きく背を反らして甘い声を上げた。
緩急をつけて骸が腰を打ち付ける度に、涙を散らしながら綱吉が悦がる。

「ぅあ!!あっ!むく…ひっ!!ぁ…きもちいっ」
「はっ……僕も、気持ちいいですよ…」

骸が微笑みかけると綱吉の締め付けが強くなった。
湧き上がる射精感を堪えながら綱吉に口付けると、綱吉もすぐに口を開いて骸を迎え入れる。

「んんっ…む、ぅ……んっ!!」

舌を絡め合いながら骸が綱吉の良い所を突くと、綱吉が咎めるように骸の舌に軽く歯を立てた。
骸が唇を離してやると涙に濡れた瞳が不満そうに見上げてくるので、腰の動きを緩やかにしてやる。

「あっ、ダメ、だろっ…!」
「何がです?」「オレ、2回もイけない…!!」
「大丈夫ですよ。綱吉君ならあと3、4回は余裕でイけます」
「無理だって、……ひあっ!!」
「はいはい。煽った君が悪いんですよー」

綱吉の言葉を途中で無理矢理中断させて、骸が律動を再開した。
ガクガクと揺さぶられる綱吉の中心で、可哀想なくらい膨らんだ綱吉のものが先走りを溢れさせる。
数度骸が腰を動かしただけで、もう限界だと言うように綱吉の足先が痙攣を始めた。

「だめだめだめ!!……あああっ!!」
「っ……!」

ボロボロと涙を流しながら首を振る綱吉の良い所を骸が抉るように突いてやると、あっけなくもう色の薄くなった精を吐き出した。
ギュウギュウと締め付けてくる刺激に耐えると、骸は間髪要れずに腰を動かす。
骸が綱吉の奥を突く度に、綱吉の先端から出きっていなかった残滓が溢れた。

「ひゃめ!はげひっ…!むくろ!あっ、あっ!!」
「綱吉君…可愛い……綱吉君」

骸が綱吉の口の端から垂れる、飲み込みきれなかった唾液を舐め上げる。
それから上気したまろやかな頬に口付けると、唇を塞いだ。
吐息さえ味わうように何度も角度を変えながら深く口付ける。

「ふっ…う、ん……んんっ!!」

唇を塞いだまま深く貫くと、綱吉がもう何度目か分からない絶頂を迎えた。
骸もその締め付けにつられるように、綱吉の中に欲望を吐き出す。
お互い達した後も暫く舌を絡めた後、骸がゆっくりと唇を離した。

「ぁ…はっ、は…はあ……」

朦朧とした様子でぐったりとする綱吉に微笑んで、骸が頬にキスをする。
汗で額に張り付いている髪を退かしてそこにも口付けると、綱吉の中から自分のものを抜いた。
その些細な刺激にさえ、敏感になりすぎた綱吉の体は小さく震える。

「折角綺麗にしてあげたのに、また掻き出してあげないといけませんね」
「それは、骸が中に出すからだろ…」

呆れたように言う綱吉に笑みだけ返して、骸が綱吉を抱き締めてソファに横になった。
2人で横になるには少々狭く、ソファの背凭れと骸に押し潰された綱吉が苦しそうな呻き声を上げる。

「ちょ、狭い!寝るならベッド連れてって!」
「えー?僕だって疲れちゃったんだから、少しくらい休ませてくださいよ」
「嘘ばっかり……」

自分と違ってピンピンしている骸を綱吉がジトっと睨み付ける。
しかし骸は綱吉のそんな視線など意にも介さず、綱吉の柔らかな髪に顔を埋めた。

「クフフ、ふわふわです」
「やめろ!嗅ぐな!!」
「いいじゃないですか。いい匂いなんですから」

綱吉が必死に骸を離そうと胸を押すが、骸はビクともしない。
いくら体格差があるとはいえ、1つしか年齢が違わないのに全く歯が立たないことに情けなさを感じる。
己の非力さに自己嫌悪に陥りつつ綱吉が抵抗を諦めると、頭の上で骸が笑う気配がした。

「なに笑ってんだよ」
「いえ、あんまり君が微笑ましかったから」
「微笑ましいとか言うな」

唇を尖らせながら骸の胸を叩く綱吉の手を取って骸が指先を絡めると、綱吉も応えるように自分の指を絡める。
手を握り合ったまま骸が空いている方の手で綱吉の髪を梳いていると、綱吉から小さな欠伸が漏れた。

「眠いですか?」
「まあ、あれだけすれば……」

赤くなった顔を隠すように骸の胸に押付ける綱吉に笑って、骸が綱吉の旋毛に口付ける。

「じゃあ、取り敢えず中のを出しちゃいましょうか。体は拭こうにもタオルが冷めちゃいましたから……」

処理をする為に起き上がろうとした骸の首に綱吉の腕が回る。
そのまま引っ張られて、骸は起き上がることが叶わずもう一度綱吉の横に寝転んだ。
綱吉の行動を不思議に思って、窺うように骸が綱吉を呼ぶ。

「綱吉君?」
「後でいい…」
「後?」
「うん。このままでいい…」

甘えるように擦り寄る綱吉に骸が困ったように眉を下げた。

「でも、掻き出さないとお腹痛くなっちゃいますよ?」
「いいんだって」

骸の首に回していた腕を背へとずらし、綱吉がしがみ付くように骸に抱き付く。
胸に擦り付けていた顔を少しだけ上げると、綱吉はへにゃりと笑った。

「今、凄い幸せだから、このまま寝たい」
「君は……」

ぎゅうっと骸が抱き締めると、綱吉も嬉しそうに背に回している腕に力を込めた。

「あんまり可愛いことばかり言うと、また犯しちゃいますよ?」
「恐っ!でももうホント無理だからな!オレ寝るからな!」
「クフフ…じゃあ起きたら一緒にお風呂に入りましょうね」
「へ、変なことしないなら……」
「それは君の言動次第ですかね」
「何だよそれ……」

言い合いをしている間に綱吉がうつらうつらとしてくる。
更に眠りに引き込むようにと骸が綱吉を撫でると、疲労から綱吉はすぐに寝息を立て始めた。
あどけなく眠る綱吉を見て、骸が微笑む。

「愛してますよ、綱吉君」

言って柔らかな髪に口付けると、腕の中の幸せを抱き締めたまま骸も目を閉じた。


■Mainへ戻る
■TOPへ戻る