※先に「僕だけを見て」からお読みください!


なる夜に



聖なる夜に、雪は降る。
街はすっかりクリスマスムードだった。恋人たちは手を繋ぎ、雪の中を幸せいっぱいに歩いているのだろう。
「失礼します」
執務室のドアを開ければこんな日でも骸の恋人は仕事に追われていた。
「メリークリスマス、骸」
「………メリークリスマス。何ですかこれ」
骸は書類の山をざっと一瞥し、綱吉の方に目を戻す。机上の高層ビル――もとい積みあがった書類の向こうには疲れきった童顔がある。
「某リボーン大先生からのクリスマスプレゼント」
「なるほど、素晴らしいプレゼントですね」
「だろ? いつものに加えて年末だから決算とか来年度予算とかそういうのが色々とあるの。お分かり?」
ギシ、と音を立てて椅子に沈み込み、大きく溜息を吐く。因みにリボーンなら愛人とデートとのことだ。
「要するに押し付けられたと」
「そうそう。一から全部オレが考えるってワケじゃないんだけどさ、やたらにゴーサイン出して後で痛い目見んのオレだから」
「こんな紙切れと格闘してる男の何処が巨大マフィアのボスなのか教えて欲しいものですね、まったく」
「オレが教えて欲しいぐらいだよ。ねえむくろー、終わったらご褒美やるから手伝ってー」
デスクの前に腕組みをして立つ年下の恋人を期待の目で見つめる。断られないことを確信している目だ。
「……それじゃあ僕のじゃなくてあなたのご褒美じゃないですか」
(ご褒美なんて別に求めてないのに。手伝えって言われれば手伝うんですけどね)
結局は体ばかり求められているのだと考えると胸が苦しくて、些か拗ねたような声が出た。
「ん? 要らないならクリスマスでも暇してる女のコでも呼ぼうかな」
それでも綱吉は意味深な笑みで携帯電話を取り出す。本気で風俗嬢を呼ぶつもりだ。こういう色事が絡む時、綱吉の頭に「冗談」という概念は存在しない。
「別に要らないとは言ってません!」
「要るとも言ってないだろ。欲しいなら口で言えっていつも言ってるよな?」
「………っ」
「骸。だんまりはノーだぞ」
椅子にゆったりと凭れたまま、絶句する骸の表情を楽しそうに観察する。手伝ってと言い出したのは綱吉なのに、気付けば骸が懇願する側になっていた。
(ダメだ。気にしちゃ、いけない。自分が苦しいだけだ)
無言は通じないものだと教育されている骸にしてみれば、断れるはずがなかった。追い討ちまで掛けられて、骸は諦めることにした。
「…………仕事、手伝いますから、………ご褒美、ちゃんと下さいね?」
体などどちらでも良い、だから愛して欲しい。これが本音だ。しかし伝えるだけ無駄だということもよく分かっていた。
「お盛んな時期って大変だなー」
複雑な心境の骸をよそに、綱吉は楽しそうだ。何も知らなそうな顔をして全てお見通しなのだから厄介だった。
「黙れ色ボケ無能ボス」
「リボーンみたいなこと言うなよ。可愛いなあ骸は」
「手伝いませんよ」
「ちょ、それは困る! 機嫌直せよ」
「……綱吉のバーカ」
「バカで結構だから、手伝って」
罵っても拗ねても何をしても、綱吉はくすくす笑うだけだった。捨ても愛しもしない。全てを知っているくせに、何も言わないし何もしない。
(どうせ何も変えられないのだから、ぐるぐるした感情は、他愛ないやりとりの中に混ぜてしまえばいい)
思い詰めるくらいなら、目を逸らしてしまった方がマシだった。
聖なる夜に、淡々と雪は降る。


End..
11.12.27.
Buon Natale!
久しぶりに小説書いたらすごく楽しかったです。
骸の些細な心の機微まで全て分かってるのに応えてあげない綱吉様萌える。
そんな綱吉様のことを好きになっちゃってぐるぐるしてる骸萌える。

■Mainへ戻る
■TOPへ戻る

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -