仕事を片付け、リボーンが席を取ってくれた飛行機に乗り込んだ綱吉は、1人窓際に座り骸の事を考えていた。護衛や付き添いは「すぐ帰って来るし、自分で何とかなるから」と言って断った。
目的地、イタリアまであと2時間程。
「骸―――」

***


イタリアの地に降り立った綱吉は、迎えの車に乗ってアドリア海のダルマチア海岸を目指していた。車を出してくれたのはバジルだった。
別にそこが骸の任務先な訳でも、思い出の場所である訳でもない。
確かに骸の任務先がイタリアである事に違いは無かったが、イタリアの何処にいるのかまでは綱吉も知らない。
ただバジルに海の綺麗な場所は何処か、と訊ねたらアドリア海だと言われたので、そこを目指す事にしただけである。
「沢田殿、到着です」
「ありがとう、バジル君」
綱吉が歩き出すと、バジルも後ろから着いて来る。
「あの、沢田殿? 突然どうなさったのですか?」
バジルは綱吉がイタリアに来ると聞いた時からずっと疑問に思っていた事を口にした。忙しい綱吉が突然イタリアを訪れる訳は無い。何か理由があっての事だろうとは思っていたが、彼にはその理由が思い当たらなかった。知り得る範囲では此方で問題は起こっていない筈だ。
「骸が、死んだ」
綱吉はキラキラと輝く蒼い海を見つめたまま平淡な声でそう言った。
バジルは驚いて息を飲む。
「骸殿が?! ……過去形なんですね」
「多分、オレがちょうど飛行機に乗ってる間かな」
やっとバジルの方を振り向き、綱吉はやや苦笑気味に言った。その端整な顔には形容し難い表情が浮かんでいる。
「超直感、ですね。骸殿が何処で亡くなられたのかは?」
綱吉はゆるゆるとかぶりを振った。超直感はそこまで何でも分かる物ではない。
「そこまでは分からない。別に骸の所に行こうって訳じゃないんだ」
言いながらイタリアの良く晴れた空を見上げる。雲ひとつ無い快晴だった。
「骸が死んだって伝えたらヒバリさん、残念がるんだろうなぁ……。自分の手で葬り去れなくて」
ね、とバジルに向かって笑い掛ければバジルは苦笑いを綱吉に向ける。
「獄寺くんは昔から骸の事、敵視はしてたけどちゃんと悲しんでくれそう。山本、お兄さんは黙って悔やむかな。ランボは………未だに直接会った事無いんだよな」
「ランボ殿もお悔やみされますよ。ランチア殿は、きっと悲しみます」
バジルも少し悲しそうな瞳をする。
「骸と結構関係深いし、いい人だからね、ランチアさん。クロームは、あの子は強くなったからちゃんと受け入れられると思う。オレはそう信じてる。……皆、何だかんだ優しいっていうか骸の事、認めてくれてるんだよね」
まさか本当に骸が死ぬなんてね、と綱吉は小さく溜息を漏らす。
「沢田殿……。吹っ切れたような顔をしてらっしゃるんですね」
「骸と約束したからさ。笑って生きる事」
綱吉はそれっきり何も喋らなかった。水平線をただ見つめている。

「花、持ってくれば良かったな」
綱吉が唐突に呟いた。
「花、ですか?」
「そう、花。海に花でも流してさ、お供え物の代わりにしたいなって、今思った」
そう言って、綱吉はおもむろに方膝を突いてしゃがむ。そのまま手を合わせて目を瞑り、黙祷を捧げ始めた。黙祷を捧げる綱吉の顔には穏やかで優しい笑みが浮かんでいた。バジルも綱吉に倣ってしゃがみ、黙祷した。
長い黙祷を終え、綱吉が立ち上がる。次いでその気配を察したバジルも立ち上がった。
「じゃあ、そろそろ行こうか。今日はボンゴレの屋敷に泊まる」
「お送り致します、沢田殿」
綱吉の要請に、バジルはにっこり笑って快諾した。
バジルの後ろを着いて行きながら最後にもう一度、綱吉はアドリア海を振り返った。陽が傾きかけて、海は少しずつオレンジに染まりつつある。


骸。お前に、花水木の花を……


10.6.26



ハナミズキの花言葉→「私の想いを受けてください」「返礼」

骸誕2010で大人な骸ツナでした。
遅くなってごめんなさい(大遅刻)
H氏リクで「重い骸ツナ」
一度書いてH氏にチェック貰ったのですが、彼女の一言。
「お前の骸は、優しいな(笑)」
はい、私の骸は優しいです←
大体10年後ぐらい。あまり年齢は意識していませんが、大人でツナはボスになりました。
骸、お誕生日おめでとうございました!!


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