まるたさんはぴば!
過保護


「………あの、いつまでこうしてなきゃいけないんですか」
「ずっとだ」
「ずっとォ?!」
思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。2人は綱吉の部屋でテレビゲームをしていたのだが、途中から何故かジョットが胡坐をかいた上に綱吉が頬を染めてちょこんと納まっていた。
――事の発端はかなり自信を持って挑んだゲームに綱吉が負けたことによる。その罰としてジョットの足の上に乗せられ、しかもいつまで経っても勝てないのだ。
「じいちゃんが孫をこうして抱く事など普通だろう」
「そーかもしれませんけどっ! でもオレもうちっちゃい子じゃないんですから!」
「ダーメーだ」
抵抗を試みるものの、力勝負ではゲーム以上に勝ち目はない。結局シートベルトのように体を固定されてしまった。
「200年以上も生きてきたんだ、14歳なんてまだまだ赤子のようなものだぞ?」
「いやいやいや! 空白の死後200年間を勝手に人生に含まないで! 言い分は分かったんでオレが勝ったら離して下さいね」
暑いしやりにくいし恥ずかしいんで、そう言って綱吉は再びジョットに挑み始めた。

――のだが。勝つどころかジョットは益々スキルを上げて来て、結局一勝も出来ていなかった。
「あのハンマーは面白いな!! 一度ですぐにふっ飛ぶ。偽物を取ってしまうと辛いところだがな……綱吉?」
上機嫌で喋っていたが、自分の上に座る綱吉が黙ったままで動かなくなったのを不思議に思い、顔を覗き込んでみた、ら、何故か神妙な顔つきで目を瞑っていた。
「………何でえええ?! じいちゃんアイテム取るの早過ぎる!」
そして突然顔を上げ、ジョットを振り返って睨み付ける。相当悔しかったらしい。
「早過ぎると言われてもな……見つけたらすぐ取りに行くしかあるまい」
綱吉の剣幕に目を丸くする。しかし文句を言われても出現したら綱吉より先に取らなければ取られてしまうだけである。反射行動に近いのだ。
「そうですけど! それにしたって始めたばっかりなのに素早過ぎます!」
理不尽な責められ方だと思ったが、負け続けている綱吉の気持ちを考えると責めたくなるのも分かる。しかしわざと負けるような事をしたら彼のプライドを傷付けてしまう。強情な孫に弱りきって溜息を吐いた。
「ハンデは嫌か?」
「そんなのフェアじゃないですもん……。自力で勝ちますから! もう一回!」
綱吉は諦めなかった。興奮しているのか力強く拳を握り、こちらに向かって期待を込めた眼差しを送ってくる。
ジョットは頬を緩め、端正な顔に不釣り合いな腕白な子供の目付きをした。
「望む所だ」


「………」
「………」
「…………か、勝ったああああああ!!」
両手を天井に向けて大きく伸ばす。手の平はグッと握ってガッツポーズに。
「負けた……」
嬉しそうに自分から離れる綱吉を名残惜しそうに見つめながら呟く。ゲームに負けたことはあまり気にしていないが――綱吉の努力と意地の賜物だと思うから――、綱吉が膝の上に乗っていないと違和感を覚えた。足が気になって仕方なかった。
「ジョットさん、つっくん! おやつよー!」
奈々の呼ぶ声がする。ジョットと綱吉は顔を見合わせた。
「一時休戦だな。もう負けないからな」
「オレだって負けませんからね」



「――という事があったんだ。可愛いヤツだろ?」
「うっせー、お前の孫自慢はもう聞き飽きた」
「まーた始まったものねー」
ジョットは自分の守護者達に自分の孫自慢を披露していた。嬉々とした様子で話すが、真面目に聞いているのは雨月くらいだ。因みにアラウディは話が始まる前に帰った。
「本当に可愛い孫でござるな」
「だろう?! 雨月はよく分かっているな。お前らまともに聞いているのか?」
「まともに聞く気なんざねーよ」
Gが溜息混じりに突っ込む。最早慣れっこだ。
「ンー、失礼な。私はちゃんと聞いていますよジョット!」
スペードが主張をしたところで音を立ててドアが開けられた。
「賑やかですね。何の話してたんですか」
入って来たのは綱吉だった。そもそも此処は綱吉の部屋である。各々にジュースを渡しながらジョットを見た。
「昨日の話だ」
ジョットが何故か嬉しそうに答える。
言っている事の意味が分からず、綱吉が小首を傾げた。
「昨日ゲームしててあった事を聞かされてたんだ。要はデーチモが昨日如何に可愛かったかって話題だな」
「んなっ?!」
「G、お前よく分かっているじゃないか!」
「デーチモがあの話を聞いていたらきっと耐えられなかっただろうな」
Gが感想を誇張して綱吉をからかう。綱吉は真っ赤になった。
「なあああああ?! 何処まで話したのかは知りませんけど、そういうのやめて下さいよ!!」
「デーチモ……? 何処まで、とはどういう意味ですか? 昨日何かあったのですか?! 話されると恥ずかしいあんな事やこんな事でもしていたのですかどうなんですか!!」
「色々あったよな、綱吉」
「ちっがああああう! 勝手に変な事考えるなああああああ! そして紛らわしい事言うなあああああ!!」
突然スペードが質問攻めにしてきてギョッとした。真っ赤になったことでどうやらあらぬ疑いをかけられているらしい。しかもジョットが頬を赤らめて変な事を言うからスペードが更に睨みつけてくる。部屋中に綱吉の絶叫が響き渡った。


11.5.11
まるたさんお誕生日おめでとうございました!\(^O^)/
作中でやってるゲームは任/天/堂のス/マ/ブ/ラですww


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