Treasure | ナノ


Secret my Heart

written by 月琉様

時は遡り、亜美達がスリーライツの三人と別れる半月前のお話し。


その日、亜美がいつものように朝早く学校へ行くと自分の机の上に置き手紙があった。

「何かしら?“放課後裏庭にて待つ”??」

そこには名前などは何も無く、ただその言葉だけが白い紙に書かれていた。

字体もパソコンのワードで書かれたように整っていて、文面だけでは男か女かすら分からない。

その時は、気に止めずにいたが生徒が登校しだして、HRが始まり午前中の授業が終わる頃には亜美の頭の中は、そのメモのことでいっぱいになっていた。





「お腹へったーっ!お昼っ、お昼♪食べよーっ」

「待って!亜美ちゃんがまだ来てないでしょ、うさぎちゃん」

開け放たれた窓から食堂のいいにおいが漂ってくるお昼時。

いつもなら、チャイムが鳴って暫くすればうさぎたちのクラスにくる亜美が来ない。

「そういえば、さっき亜美ちゃんのクラスの前通ったらさ、亜美ちゃん窓の外ポーッと見てたよ」

「「あの亜美ちゃんが?ぼーっとしてた?!」」

まことの言葉に、うさぎと美奈子は二人揃って驚きの顔をする。

その声に、黙って読書をしていた大気が顔を上げた。

「おっ!何だよ大気、水野のこと気になんのか?」

もぐもぐと昼食を食べながらの星野と

「最近、何だか仲良さそうだもんね。ふぁぁ〜…おやすみ」

昼食よりも睡眠を優先し、寝る体勢に入る夜天にそう言われ、大気はふと考えた。

「あ?もしかして大気、気付いてねーの?」

「何がです?星野。」

「お前、水野と話してる時って俺たちといる時より笑顔だぜ」

「まさか、そんなことあるはず…」

ガラッ

大気が続きの言葉を言おうとした瞬間、前のドアが開き噂の張本人が浮かない顔をして入ってきた。

「あ!亜美ちゃん、いらっしゃい…ってそんな顔してどうしたんだい?」

「まこちゃん…実は…」




「なになに、“放課後、裏庭にて待つ”??」

うさぎがお昼のおにぎりを片手に亜美が差し出した紙を見ると、無機質な字で一言そう書いてある。

「きゃ〜っ!!ね、ね!これって告白じゃない?!」

「美奈子ちゃん…何でこれだけで男って分かるのさ?」

「そりゃー、昔から裏庭って言ったら愛の告白に決まってるでしょっっ」

ふんっっと鼻息を荒くして興奮する美奈子をとりあえず落ち着かせ、まことは続けた。

「で、亜美ちゃんはどうするの?」

「えっ!?」

「放課後、行くの?もぐもぐ…」

「うさぎちゃんは、食べてから喋りなさいよ。お行儀悪いわよ〜」

ごっくん

「いや〜、あはは。」

「で。亜美ちゃん!!」

「み、美奈子ちゃん……」

何だか嬉しそうな美奈子に押され、悩んでいたが結局行くことに決めた亜美。

その一部始終を見ていた星野は缶コーヒーに口を付ける大気に小声で言った。

「あれ、いーのかよ大気。」

「別に…私には関係ありません。」

「へー、ふーん?」

星野の態度に少し苛ついたが、そこで何かを返す気にもなれず大気は再び本に視線をうつした。




そして、一日が過ぎ放課後大気は図書館にいた。

「さて、そろそろ仕事に行くとしましょうか。」

大気が鞄を持ち帰ろうと席を立った時、奥の手にある窓からブアッと突風が舞い込んだ。

「ごめんなさい、そこの窓閉めてくれるかしら?」

「はい。」

カウンターにいた司書に言われ、窓の方へと向かうと、外から怒鳴り声が聞こえる。

少し身を乗り出して覗いてみると、そこには一人の女生徒と二人の男子生徒に囲まれた亜美がいた。

そう、図書館は学校の裏に建って居て外はちょうど裏庭にあたる。


あぁ、そういえば裏庭に呼び出されたと言っていましたね。でもあれでは…


先程その場にいたみんなが美奈子のせいで亜美は告白されるものとばかり思っていた。

それは大気も例外ではなく、だからこそなんとなく気になっていたのだ。

けれど、そう思っていた大気が見たものは、とても“告白”などと可愛らしいものではなく一人の少女に三人の男女が寄って集って苛めているようにしか見えない。

「!! あれは…」

亜美を取り囲む少女達の中心にいる人物に気付いた瞬間、大気は嫌な予感がした。

その人物とは、自分のファンで男子にも人気のある可愛らしい少女だ。

だが、彼女はそれだけでは終わらない。
ファンはファンでも熱狂的すぎて、貰ったファンレターはざっと100枚近くはあり、暫く付きまとわれ、挙げ句の果てには家までついてこられたことも度々ある。

言わば、ストーカー。

そんな人物が取り巻きを引き連れて亜美を囲んでいるのを見たら、嫌でも悪いことを考えてしまう。

普段の大気ならば、冷静沈着に物事を考えてから行動に移すが、気づけば身体はもう動いていた。


一方その頃亜美は…


「だーかーらぁ!大気様に近付くんじゃないわよって言ってるの!大気様は貴女なんて何とも思ってないんだからっっ!」

先程からずっと怒っているこの少女は何を言っているのだろう?

確かに、あの戦いが終わりスリーライツの三人とも多少、仲は良くなったかもしれないが…それは他のみんなも同じで。

それなのに何故、この少女は自分に、しかも大気のことで怒っているのだろう?


亜美が首を傾げながら悩んでいると、痺れを切らした少女が ドンッ 亜美の後ろ背にあった壁に押し付けた。

「あんたのっ!そういう所が勘に触るのよっ!」

「いたっ!…さっきから言っているように、私は大気さんたちとお友達をやめるつもりはありません。彼らは私の大切なお友達よ」

「こん…のっっ!」


ヒュッ!


ぶたれる…っ!!


少女が手を大きく振り上げ、亜美の頬を打とうと降り下ろそうとした時、誰かがその腕を掴んだ。

「ちょっとっ!誰……っっ?!」

「間に合いましたね。」

そこには、はぁはぁと息を切らした大気が立っていた。

「大…気…さん…?」

「水野さんはこちらに。」

「きゃっ?!////」

亜美を自分の胸に引き寄せ、大気はアメジストの瞳でギッと睨み付ける。

その瞳は、テレビでは見たことがないほど冷たく、内に怒りを秘めており彼女が愛する大気とは180度違う。

「ひっ…?!」

「私のことを応援してくださるのは、結構ですが私の周りの方たちに手を出すのは許しませんよっ!!」

怒ることなど滅多にない大気が見せた一面に少女は驚き後退るが、再び亜美の目を見て

「…い…」

「え?」

「ずるいっ!いつもは勉強しか頭にないような顔してるくせに、こんな時ばかり大気さんに庇ってもらうなんて卑怯よっ」

ずきん

その言葉に胸が痛んだ。

昔に、何度か同じようなことを言われたことがある。

友達の好きな男の子が実は自分の事を好きで、仲のよかった友達に今と同じことを言われ彼女は離れていってしまった。

あぁ…そうよ。
あの時決めたんだわ…

誰かを傷付けるくらいなら男の人には近づかないって。

彼らと仲が良くなり忘れてた。

やっぱり…私は…


「卑怯なのは、貴女でしょう。男子を二人も連れて一人の水野さんに寄って集って…恥ずかしくないんですか!!それに…貴女のような非常識なファンはいりません。二度と私と水野さんに近付かないでください」

とキツく大気に言われ、涙を流し罵詈雑言を吐きながら少女は走って去っていった。




「ふう。水野さん、申し訳ありませんでした…水野さん?」

気づけば腕の中に居た亜美が、その場にしゃがみこみ下を向いていた。

「なんでも…ないです。大丈夫ですから…帰ってください」

「こんな…貴女を置いて帰れるわけがないでしょう?」

大気に言われ、おずおずと顔を上げた亜美の瞳は潤んでいて心なしか震えていた。

その場にしゃがみこんでいた亜美を正面からふわりと腕に包み込み、大気は優しく続ける。

「怖い思いをさせて…すみません。もう、大丈夫ですから。」


温かい…
抱きしめられるとこんなに気持ちいいのね…

でも…


「…離してください」

「水野さん?」

大気は自分の腕から逃げようとする亜美の異変に気付く。涙は止まっているが、悲しそうな瞳をしていて今にもまた泣いてしまいそうな顔をしていた。

「私は…っ…男の人には近づかないって…決めていたんです…っ、誰かを傷つるくらいなら自分からって…だから…離して…」

必死に自分の腕の中もがく亜美の瞳からついには涙が零れ、痛々しいくらい想いが溢れ大気の胸を切ない程に締め付けた。

「…っ、離し…ません。」

「え…」

「いいんですよ、そんなこと関係ない。貴女は貴女のままでいればいい。ただ、それだけのことです。」

そうは言われても、今まで何度も同じようなことがあった亜美には大気の言葉は到底受け入れられず首を横に振る。

「…水野さん。もし、貴女が私たちと距離を置くというのでしたら、少なくとも私は悲しいです。」

「何で…ですか」

大気はふぅ…と一呼吸置くと、腕の中にいた亜美を離し、しっかりと目を見ながら困ったような顔を浮かべた。

「多分…私は、貴女が好きです。」

「…………えっ?!/////」

まさかの答えにパニックになる亜美をもう一度抱きしめ、大気は続けた。

「だから…貴女に避けらるのは嫌なんです。これでは…理由になりませんか?」

腕の中で真っ赤になる亜美を見て、好きという想いが愛しさへと変わっていくのを大気は確信した。

「顔を上げて…亜美。」

「ひゃっっ!!ん〜……っ、無理…です」

はじめて父親以外の男性に呼び捨てで呼ばれた名前が、亜美の耳元をくすぐり更に顔を赤くさせた。

恥ずかしがる亜美の両頬に手を添え、なかば強引に上を向かすと額にちゅっとキスを落とし、髪を撫でると観念した亜美の力が抜けてくるのが分かる。

「うー…突然酷いです。」

「でも…」


──嫌じゃないでしょう?


「〜〜〜〜っ////」


わざとまた、耳元で低く囁く大気にはもう分かっていた。

これから、彼女はきっと自分を好きになる。

故郷に帰らねばならないが、それでも想いは変わらぬほど自分も彼女を好きになるということを。

あと少ししか、この星にいられないけれど別れの時が訪れるまで彼女が自分を忘れられなくなるくらい愛そうと決めた。

「覚悟…してくださいね?」

「し、しませんっ////」

亜美も、今まで胸にわだかまっていた想いがゆっくりほどけていくのを感じていた。


──そう、それは二人だけの秘密。
誰にも教えない、誰にも言いたくない幸せの瞬間。


End,






『流れ星へ…』の管理人の月琉様から相互記念に戴きました。

月琉様ありがとうございますっ(≧ω≦)

どーですか?
私はもうきゅんきゅんです(≧∇≦)

大気さんが平静を装いながら亜美ちゃんのことを気にしてるのが、たまりません!
最後には素敵なSっぷりを見せてくれる大気さん素敵♪

そして大気さんの行動にあわあわする亜美ちゃんが可愛いのです〜(*´∇`*)

月琉様本当にありがとうございました。
大切にしますm(__)m



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