浅沼×まこと | ナノ




告白
〜ずっと近くに〜


『俺、まこと先輩の事が好きです』
『俺の事“一人の男”として見てください』
『返事はすぐじゃなくていいですから』




浅沼ちゃんにそう言われたのが二週間前。
あたしは突然の事にパニックになって、何も言えなかった。

そんな、あたしに浅沼ちゃんは優しく笑って『じっくり考えてください』って言って、頭をポンポンした。

それから彼には会ってない。
彼の気持ちに、どうしたらいいのかわからなくて会えない。

一人で悩んでたら、まぁ当然、みんなに様子がおかしいとかって気付かれた。

レイちゃんはともかくとして…うさぎちゃんや美奈子ちゃん、それに亜美ちゃんにこの手の事を話すのはなんだか気が引けた。

彼女達の“好きな人”は、遠い遠い星に帰ってしまった。
この先、また逢えるかどうかなんて分からない。
そんな彼女達に“恋の話”なんかしてもいいのかな?って……

それをチラッとレイちゃんに言ったら、呆れられて叱られた。
涙目で───ごめん。

「みんながそんな事を思うわけないでしょ!まこちゃんのバカッ!それ言ったらうさぎ達、絶対に悲しむわよ?あたしも…悲しいわ」ってさ。

そうだよなぁ。あたし何バカな事考えてたんだろう?って思ったらなんか心が軽くなって、そしたらみんなに聞いてほしくなった。

だから、あたしは勉強会じゃない時に、みんなに相談したい事があるからって言って休みの日に集まってもらった。

それで、肝心の相談を持ちかけた。

みんなに浅沼ちゃんに告白された事を話した。
不思議とみんなあんまり驚いてなかった。

それから、迷っててどうしたらいいのかわからないのかも……。
その『理由』を───
『“浅沼ちゃん”てさどこも“先輩”に似てないんだよ』
って言ったら、みんなにそれはもうすっごい呆れられた。
亜美ちゃんまでが呆れてた。

「ま〜こ〜ちゃ〜ん…」
うさぎちゃんが本気で呆れた声であたしを呼んだ。
「いや、だってさ!」
言い訳しようとしたら、美奈子ちゃんに溜め息混じりにボソリと囁かれた。
「まこちゃんたら……にぶちん」
にぶち…ん?
「本当よ…」
え?亜美ちゃんもあたしを“にぶちん”だって思ってるの?
「だってまこちゃん、最近全然“先輩”って言わなくなったでしょ?」

───え?

「そうよねぇ〜?」
「だよねぇ」
亜美ちゃんの衝撃発言に美奈子ちゃんとうさぎちゃんが同意してる。

───えぇ?

「まこちゃん?どうしたの?」
レイちゃんの心配そうな声が聞こえる。

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっっっ!!!!????」

心の底からあたしはびっくりして、絶叫した。

「「「「!?」」」」
「ちょ、ちょっと待ってよ?みんな…何言ってるのさ?そんなはずないだろ?
あたしはずっと先輩にそっくりな人を──っ!?」

そう言えば“最近”出会ってない。
“先輩”に、そっくりな人に……。

───ちが…う
“最後”に“先輩”にそっくりな人を見かけたのは『いつ』だった?



いつからだろう?
“先輩”を
思い出さなくなったのは…

いつからだろう?
“先輩”に
似た人を
探さなくなったのは…

いつからだろう?
“先輩”に
似てない“彼”を
カワイイ“後輩”じゃなく
『異性』として
意識するようになったのは…

いつだろう?
“彼”のことを────



『まこと先輩』



「っ!?」
「「「「まこちゃん?」」」」
「──え?」
「大丈夫?」
心配そうにあたしを覗きこむうさぎちゃん達。
「あ、うん。だいじょ…ぶだよ。ごめん」
「本当に大丈夫?」
「うん。ちょっと…びっくりしちゃってさ」

「何に?」
あたしの言葉に鋭く切り込んできたのはレイちゃんだった。
「ねぇ、まこちゃん。“何”にびっくりしたの?」

「それ…は」
言いよどむあたしを急かすわけでもなく、みんなあたしの言葉を待ってくれた。
「その…通りだなって…思ったんだ、よ」

亜美ちゃんに言われた通り、最近のあたしの心には“先輩”じゃなくて───
“浅沼一等”っていう一人の“男性”がいて……。

あたし、なんで今の今まで気付かなかったんだろう?
あたしの心はとっくに答えを知っていたのに…

過去-先輩-に捕らわれすぎて
自分の気持ちにすら、気づけなかったんだ。

「ようやく気付いたみたいね」
レイちゃんがすごく優しい声音で言う。
「ほーんと、まこちゃんたらにぶちんなんだもん」
美奈子ちゃん、その“にぶちん”って言うのやめて…
「先輩の事を言わなくなったくらいから、よく浅沼君の事を言うようになってたもの」
亜美ちゃんは人の事となると、ホントに気が回るって言うかよく見てるな…
なんでそれをちょっとでも自分に向けないのかな?もったいない…

「まこちゃん」
うさぎちゃんがあたしを呼ぶ。
「───目を閉じて」
うん。
「ゆっくり、深呼吸して」
言われたとおりにあたしはゆっくりと深呼吸する。
もやもやを追い出すみたいに…ゆっくりと───

すぅっ───はぁっ



『まこと先輩』



「誰の顔が浮かんだ?」

ゆっくりと目を開けると、目の前には優しく微笑むうさぎちゃんがいる。

「今浮かんだのが、まこちゃんが今一番“会いたい人”だよ?」

「うさぎちゃん」
「ん?」
「ありがとう」
「ううん」
「うさぎちゃんはやっぱりすごいや」
「そんな事、ないよ?」

「レイちゃん」
「なぁに?」
「ありがとう」
「今度またあんな事言ったら、本気で怒るからね?」
「うん、もう言わない」

「美奈子ちゃん」
「はぁい?」
「ありがとう」
「えっへん」
「やっぱり自称“愛の女神”はすごいね」
「“自称”じゃなくて“正真正銘”よ?純正よ?」
「ははっ、そうだね」

「亜美ちゃん」
「はい」
「ありがとう」
「うん」
「亜美ちゃんはその洞察力をもっと自分に向けなよ?」
「え?」
「もったいないよ」
「そう…かしら?」
「うん」

みんなに抱きついて“ありがとう”を言ったあたしは決意を固める。

「「「「まこちゃん」」」」
いつも、あたしを包んでくれる優しい親友でもあり、仲間でもある彼女達の優しい声。
「みんなありがとう!あたし、行って来るよ!」

「「「「いってらっしゃい」」」」
あたしはみんなの言葉に背中を押されて一気に駆け出す。



あたしは、浅沼ちゃんの優しい笑顔が好きで
頭をポンポンされるのが、好きで
ひとつ年下なのに、時々見せる大人びた表情が好きで
でも、子どもっぽい無邪気な笑顔も好きで

『まこと先輩』って呼ばれるのが好きで───っ



───浅沼ちゃん!



「まこと先輩!?」

───え?

「どうしたんですか?そんなに急いで…」

浅沼ちゃんだ…

「お出かけですか?あ、もしかして遅刻ですか?」

会うの三週間ぶりだ……

「また遅くまでお菓子作りに夢中になってたんですか?」

───また背、伸びてる?

「それとも…?まこと先輩?どうしたんですか?」

浅沼ちゃんだぁっ…

「浅沼...ちゃん」
「はい?」
「あ、あ、あの…さ」
ど、どうしよう…こんな急に会えると思ってなかったから、心の準備が…
いや、会いに行く途中だったんだけど…じゃなくて…
えーっと…うーんと…

「あの…」
「───まこと先輩」
「な、なに?」
「俺、まこと先輩を困らせてますね…すみません」
「え?」

「忘れてください」
「───え?」
「この間、俺がまこと先輩に言った事、忘れてください」
あたしは咄嗟の事に声が出なかった。

「迷惑になるなんて考えもせずに…すみません…」
何、言ってるんだよ?
「ちょっと優しくされて、仲良くしてもらえて、俺、調子に乗ってたって言うか…」
意味、わかんないよ…




「まこと先輩には“やらなきゃいけない大切な事”があるのに…すみません…ホントに俺…っ」
俺、自分のことばっかりで…
「バカっ!!!」
言いかけた言葉を思いっきり遮られた。
「っ!?」
驚きすぎて、言葉が出ない。
「迷惑ってなんだよ!?調子に乗ってたって、何!?」
「え?」
「いいんだよ!あたしが優しくしてもらえて嬉しかったんだ!
あたしを怖がらないで、仲良くしてくれたのが嬉しかったんだよ!」
まこと先輩の声が少し、泣いてるみたいに聞こえる。
「まこと先輩…?」

「───っ、あたしが浅沼ちゃんと一緒にいたかったんだ!」

「え?」
「“好き”って言ってもらえて嬉しかったんだよ!」
「───え?」
「なのに…っ、忘れるなんて、出来るわけないだろ!?」
そう言って真っ直ぐに俺を見るまこと先輩の瞳は今にも涙が零れそうで、すごく可愛かった。

なにより、今の言葉は───
「まこと先輩」
「なにっ…」
「──俺、自惚れてもいいんですか?」
「///」
耳まで真っ赤になるまこと先輩が可愛くて、俺はくすりと笑う。

「まこと先輩」
「な、なに///」

「俺、まこと先輩の事が好きです。俺の事“一人の男”として見てください」
この間と同じ言葉で想いを告げる。
「返事は───すぐに欲しいです」

「〜っ///」
「まこと先輩?」

「あ、あたしっ/// あたし...も…浅沼ちゃんの事が好き…です///」
うっわ、俺、今人生で最高に幸せだ。

「まこと...さん///」
「は、はい///」
「俺の彼女になってください!一生大事にしますっ!!」
「なっ///」
まことさんがびっくりしたように俺を見て口をパクパクさせる。

え?俺なんかヘンな事言った?早速やっちゃったのか?

「まるで“お付き合いの申し込み”って言うより“プロポーズ”ね」
「み、美奈子ちゃん!?///」
「派手にやってるわねぇ」
「レ、レレレレレ」
「角でいつも掃除してるおじさんみたいに呼ばないでくれる?」
「レイちゃんまで///」
「あたしと亜美ちゃんもいるよ?」
「う、うさぎちゃん!?亜美ちゃんまで///」
真っ赤になったまこと…さんが友達の登場に驚いて真っ赤になってる。可愛い。


「ど、どうしてここに?」
「そりゃぁ、ここは往来のどまんなかですものっ!イッツ大通り!」
慌てるまことに美奈子が威風堂々と宣言する。

一等に会うことに必死になっていたため、彼に会えた瞬間に周りの状況をすっかり失念していたらしいまことが本気で驚いて、キョロキョロと周りを見回す。

道行く人の視線がこっちに集まってる───気がする。

「ーーーーーーっ!?」
まことは思わずその場にうずくまる。

「まこと先輩!?」
一等が驚いてまことを覗きこむと、湯気が出そうなほど真っ赤になっている。

「ま、まこちゃん?大丈夫?」
「あ、亜美ちゃん!」
「はいっ?」
「あたしを水でもかぶって反省させて〜っ」
「えぇっ!?」
「まこちゃん落ち着いて」
「レイちゃん!悪霊退散してくれよぉっ」
「しないわよ!」
「まぁまぁいいじゃない」
「もうこの際だから美奈子ちゃんでもいい!」
「でもって…なーんですかぁ?」
「あたしにっ───はっ!?やっぱり美奈子ちゃんじゃダメだ!」
「やっぱりってなによぉ!?」
「美奈子ちゃんも落ち着いて」
「亜美ちゃ〜ん」
「ほら、美奈子ちゃんは愛だから、ね?(小声)」
「なるほど〜、それもそうね」

「ほーら、まこちゃんそこのパン屋さんのコーヒー牛乳でも飲んで落ち着いて、はい」
「ありがと」
「うさぎ、いつの間にパン屋さんに?」
「ここの焼きたてメロンパンは絶品なのよ。はい浅沼君もどーぞ☆」
「あ、ありがとうございます。いただきます」
一等とまことはコキュコキュとコーヒー牛乳を飲み干す。
「「おいしい」」
「でっしょ〜?」
にこにことうさぎが言う。

「まこちゃん」
「なんだい?」
「本当に邪魔する気はなかったんだよ?」
「うん///」
「クラウンに行こうとしただけなの」
「そっか」
「うん」
「ごめんね」
「いや、いいよ」

「ほら、あたし達お邪魔虫は消えるわよ?」
「えーっ」
「美奈子ちゃん焼きたてメロンパンあげるから」
「やったぁ♪」
「それじゃあ、まこちゃん、浅沼君またね?」

「うん」「はい」
通りすがりというには賑やかな四人はクラウンの方に歩き出す。

「……っ///」
まことは恥ずかしそうに下を向く。
「まことさん?」
「な、なに?」
「今から、初デートしませんか?」
「えっ?///」
「あ、クラウンがいいですか?今からならみなさんに余裕で追いつけますね」
「え?え?」
まことは驚いたように一等を見つめる。

「浅...沼ちゃん?」
「はい?なんですか?まことさん」
「っ///」

くすぐったい…
そう呼ばれる事が。
さっきまでと違う呼び名で呼ばれる事が
二人の関係が“先輩”と“後輩”から
“恋人”に変わったことを顕著に知らされる

「どうしたんですか?」
「浅沼ちゃんは…」
「はい?」
「なんでそんなに余裕なの?」
「え?」
「い、いきなり恥ずかしいよ///」
真っ赤になるまことに一等はくすりと笑う。

「言っときますけど俺、全然余裕なんかじゃないですよ。
まこと先輩とせめて同じ位置に立ちたくて、すっごい足掻いてるんです」
「え?」
「俺は“ただのちっぽけな人間”でしかないから…。
だからせめて、まこと先輩が俺の傍にいる時くらい“ただの女の子”でいられるようにしたいんです」
「浅沼ちゃん///」
「すみません。いきなり格好悪くて…っ///」

「そんな事ないよ」
「え?」

「ありがとう“────”」
「っ/// まことさん///」
「えっと/// こ、これからよろしくお願いします///」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」







ふっふっふ…
実は浅まこは去年の11月から構想はできてたりするんですよ。
ただ、雄レイに手こずったので、ね?

とにもかくにも、お読みいただきありがとうございます。
最初は道端で四人が出てくる予定じゃなかったんです。

でも、なんかこう…夜中のテンションてなんか色々大変ですね!

さて、次こそは夜美奈をくっつける!

あ、ちなみにまこちゃんの最後のところの
「ありがとう“────”」の
────には、まこちゃんの浅沼君の呼び方が入ります。
しかも、二人きりの時だ・け・の♪(深夜テンション)

浅沼君は「まことさん」から「まこ」に変わる時がきっとくる!

では、お粗末さまでした!



目次
Top
[*prev] [next#]






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -