夜天×美奈子 | ナノ




それだけ

「明後日の夕方、地球を発つ事になったよ」
「そう…なんだ…」
「うん」

ギャラクシアとの闘いが終わり、街は元に戻り脅威は去った。
火球プリンセスとライツの四人はすぐにキンモク星には帰らず、少しだけ様子を見てから戻ることに決めた。
夜天は自分の口から美奈子に帰星することを伝えたいと申し出た。
大気は亜美に告げると言っていた。

『言えばいいんじゃないの?』
『何を...ですか?』
『水野に“好きだ”って』
『……』
『多分、気付いてるの僕だけだよ』
『…夜天は愛野さんに言うんですか?』
『……そうだね。僕は言わない後悔はしたくないんだ』
『そう…ですか』

夜天は大気との会話を思い出す。
(そうだ…後悔だけはしたくない)
自分の中の決意を新たにする。
一方の美奈子も決心していた。
お互いが想いを告げる事を…
――とは言え、どう切り出したものか…迷う。

「驚かないの?」
「え?」
「アンタの事だからもっと騒ぐかと思った」
「…そう…ね。夜天君がそう言うなら騒いでもいいけど?」
「いや…いい…」
「そ?」
「…うん」

二人の間に静寂が訪れる。
「復興作業、大変よね…」
「うん。でも…プリンセスも見つかって、ギャラクシアの脅威も去った」
「うん」
「もしかしたら...僕たち以外にも生き残った仲間がいるかもしれない…」
「うん」
「少しずつでも、元のキンモク星になればいいなって…思ってる」
「うん」
ポツリポツリと話す夜天の言葉に、美奈子は頷く。

「帰ったら、もう“夜天光”じゃなくなる…」
「――――うん…」
「だから…最後くらいは...君と…」
「え?」
本当に小さく呟かれた夜天の言葉は、風に攫われ美奈子の耳には届かなかった。

伝えたい言葉がどうしても言い出せずに、それでも夜天は口を開く。
「――ねぇ」
「なに?」
「明日...なんだけどさ……ヒマだよね?」
夜天の言葉に美奈子が目をぱちくりさせる。

「ヒマじゃないんなら、別にいいよ」
そんな反応をされるとは思っていなかった夜天は、少し拗ねたように美奈子からふいと視線を反らせる。
「あ、ううん!ヒマ!ヒマです!」
くるりと振り向き、自分を見つめる夜天の瞳が優しくて、美奈子はドキリとする。
妙に気恥ずかしくて
「あ、何?もしかして夜天君てば、あたしをデートに誘ってくれちゃったり?」
目をキラキラさせていつものノリでそう言う。

そんな美奈子に夜天は真剣な表情を見せる。
「そうだよ」
「え?」
「明日、二人でどこか行こうよ」
「う、うん///」
「どこ行きたい?」
夜天の言葉に美奈子は思考をフル回転させる。

(夜天君とデート!?どうしよう…どこ行こう?えーっと…えーっと…)
うーんと考え始めた美奈子に夜天はこっそりと小さく微笑む。
「別にそんなに必死にならなくても、今夜中にでも連絡くれればいいよ。寒いからそろそろ帰ろう」
「あ、待って!」
「なに?」
「どこでもいいの?」
「――いいよ」
「ホントに?」
「うん」

「じゃ、じゃあ…ね」
「うん」
「……」
「愛野?どこ行きたいの?」
「――遊園地」
少し遠慮がちに言った美奈子の言葉に夜天はこくりと頷いた。
「分かった。遊園地ね」
「いいの!?」
「行きたいんでしょ?」
「うん。でも寒いし、人多いよ?夜天君いいの?」
美奈子から言い出したのに何を遠慮してるんだと思ったら、人混みが嫌いな自分に気を遣ってくれたのかと気付いた。

(普段はハチャメチャなくせに、そういうところは気が利きすぎだよ)
「いいよ。行こうよ。遊園地」
「うん!」
「寒いだろうから、ちゃんとあったかくしてきなよ」
「うん!夜天君もね?」
「僕は寒いの苦手だから、言われなくてもあったかくして行くよ。
明日、9時半に迎えに行くから寝坊しないでよね?」
「うんっ!」

(明日こそ愛野に言おう)
(明日ちゃんと夜天君にあたしの気持ちを伝えなきゃ!)



――――そして
「……はぁっ」
「大丈夫?はい、あったかいカフェオレ」
「ありがと…」
ベンチに座り込んだ夜天に紙コップを差し出し、隣に座り彼の顔色を見る。
「ホントに大丈夫?」
「大丈夫だよ。でも、ちょっと絶叫系はしばらく待って…」
夜天の顔色はそこまで悪くないようには見える。

夜天は時間通りに美奈子を迎えに行き、そのまま遊園地で朝から遊んでいた。
美奈子の乗りたいと言うアトラクション(ほとんど絶叫系ばかり)を乗り尽くしたのではないかと思うほど、楽しんだ。

夜天は絶叫系が苦手なわけではないが、さすがに三回転するジェットコースターに五回連続で乗れば気分も悪くなる。
一方の美奈子はケロリとしており、夜天は感心していた。
「君の三半規管どうなってんの?」
「え?」
「……なんでもない…」
夜天はコクとカフェオレを飲む。
「あれ?」
「え?なに?」
「自分の分は?」
紙コップを持っていない美奈子に聞く。

「あ、ううん。あたしはいいの」
夜天はパタパタと手を振る美奈子をじっと見つめる。
手袋をしていない手は見るからに寒そうだ。
「……ちょっとこれ持ってて」
夜天はおもむろに美奈子に紙コップを差し出す。
反射的に受け取った美奈子に「すぐに戻るから」と、告げるとベンチから立ち上がりスタスタとどこかに去って行く。
「え?え?夜天君?」
突然の事についていけずに呆然とする美奈子。

夜天はきょろきょろとあたりに視線を巡らせながら歩く。
「まったく。なんで自分の分も買ってこないかな…」
何も気にしていない時に限ってやたら見つける自動販売機も、いざ探すと見つからないのは不思議なものだ。
「あれ?このへんになかったかな?」
夜天は自動販売機を探し歩く。

その頃の美奈子は、ベンチに座り夜天の帰りを待っていた。
「夜天君、どこ行っちゃったのかなぁ…」
今日の格好は気合いを入れた。
お気に入りのミニのワンピースに寒くないようにカラーのレギンスをはき、編み上げのロングブーツ。
髪にはゆるくウェーブをかけた。
つまり、今日の美奈子はとびきり可愛かった。
そんな美少女がベンチに座り、ほぅとため息をついている姿は、とても絵になっている。

「ねぇ、かーのじょ」
「一人なら俺らと遊ばない?」
ナンパ目的の男たちに声をかけられるのは当然と言えば当然だった。
「……結構です。人を待ってるんで…」
美奈子が突っぱねるように言うと、男たちは顔を見合わせ美奈子の前に立ちはだかる。
「そんな事言わないでさ」
「ちょっとだけでいいからさ」
男の一人が美奈子の手首を掴み、ぐいと引っ張る。
「ちょっと何すんのよ!」
無理に引っ張られたせいで紙コップを落としてしまう。

「うあっち!」
「あーあ、どうしてくれんの?俺の靴汚れたんだけど?」
「あんた達が無理に引っ張るからでしょ!」
「別に金払えとか言わないから、ちょっと付き合ってよ──っ!?」
美奈子にしつこく迫っていた男たちがその場に膝から崩れ落ちる。
「なんだ!?」
驚き振り向くと、そこには――

「夜天君」
夜天が立っていた。
「へぇ?意外と効果あるんだね」
「テメェ俺らに何しやがった!?」
「何って…ただの膝カックンだけど?」
「「は?」」
夜天の言葉に男たちは唖然とする。
「それで?あんた達こそ彼女に“何しやがった"?」
夜天がすっと目を細め、しゃがみこんで彼らにしか聞こえないトーンで話す。
「「っ」」
「残念だけどこの子は僕のなんだ。あんた達みたいな軽い奴らが手ぇ出していいような安い女じゃない」
「「…っ」」
夜天の気迫に飲まれた男たちは呆然と夜天を見つめる。

夜天は立ち上がり彼らを見下ろす。
「僕の言った事が分かったら、さっさとどっか行ってくれる?」
「「…お、おぉ」」
そそくさと男たちは去っていく。

「夜天君、一体なんて言ったの?」
「……あっちのコーヒーカップの所に可愛い子がいましたよ」
「え?そうなの?夜天君コーヒーカップのところまで行ってたの?」
「どうしても自動販売機が見つからなかったんだよ」
「え?自動販売機?」
「うん。──はい」
ポケットに手を入れ、そこから缶を一本取り出すと美奈子に手渡す。
「夜天君、これ」
「手、寒そうだったから」
「ありがとう」
「どういたしまして」

夜天は再びベンチに座る。
「あの…夜天君?」
「なに?」
「夜天君のカフェオレさっきこぼしちゃって…ごめんね」
美奈子がシュンとうなだれる。
「いいよ、別に」

美奈子の飲み物を買って戻ってきた夜天は、ちょうど美奈子が強引に腕を引っ張られた場面が視界に飛び込んできたのだ。
一瞬で状況を把握し、気配を殺し美奈子をナンパしていた男たちの背後に素早く回りこみ、見事な膝カックンをくらわせた。

「でも」
「いいってば、とりあえず座れば?」
「うん」
美奈子はちょんと夜天の横に座ると、もらった缶を開けようとする。
「あ、あれ?」
寒さで手がかじかんだようで、いつもなら簡単に開けられるはずなのになかなかうまくいかない。
「…何やってんの?ほら」
美奈子の手から缶を取り、プルタブを開けて再び返す。
「ありがとう」
「どういたしまして」
夜天が買ってきてくれたのは、温かいミルクティーだった。
「おいしい...」
「そう」

二人の間に沈黙が訪れる。
「ねぇ」
「ん?」
缶で手を温めながら、ミルクティーを飲んでいた美奈子に夜天は衝撃的な言葉を投げかける。
「それ一口くれない?」
「うん。……え?///」
「ダメ?」
「いいけど、でも…っ///」

ほんのり頬を染めて口ごもる美奈子の手からミルクティーの缶を素早くかっさらうと、こくりと一口飲む。
「あ///」(か、間接キス)
「はい、ありがと」(甘い)
「う、うん///」(どうしよう)
夜天は真っ赤になっている美奈子の横顔をチラリと見る。

「愛野?もういらないの?」
「え?ううん!飲むわ!」
「?」
夜天は一気に缶の中身を飲む美奈子を不思議そうに見つめたあと、入園時にもらったパンフレットに目線をうつす。

「次どこ行きたい?」
「え?」
「あ、ただし絶叫系以外だからね」

(どうしよう…夜天君に早く言わなきゃ!ゆっくり話せるようなアトラクションは…そうだわ!)
美奈子は遊園地で一番の高さを誇る物を思い出す。
「観覧車!」
「は?」
「観覧車乗りたい!」
(観覧車!?なんでよりによってここでそれを選ぶかな…)

以前、楽屋に置いてあった雑誌に遊園地特集が載っていて、暇だったのでなんとなく目を通した事があった。
そこには『恋人で最後に乗るならやっぱり夜景の見える観覧車!』みたいな事が書かれていて、ご親切なことに全国の人気の観覧車ランキングまで載っていた。

これにより夜天の中で『なんでかはよく分からないけれど、観覧車は恋人同士が最後に乗って夜景を見るもの』という認識になった。
つまり夜天は観覧車は最後に乗ろうと決めていたのだ。

「ダメ?」
美奈子の真剣な眼差しに嫌だとは言えず
「いいよ…」
と答える夜天に、美奈子が嬉しそうに微笑む。



明るいうちから観覧車に乗る人は少ないらしく、並ぶことなく乗る事が出来た。
「わ、ちょっとあったかい」
「ホントだね」
二人は向かい合わせに座る。
「……」
「……」

さて、どうやって切り出そうかな…
いくらなんでも、いきなり「僕は君が好きだ」なんていうのはなんか違うよね…
でも愛野って、僕の事好きだよね?
って、事はあれ?僕ら両想い?
――そうだ。僕は後悔しないように
今日、愛野に好きだって言おうって決めてきたんじゃないか


ど、どうしよう…緊張して、なんて言えばいいのか…
ううん。今日は言いに来たんじゃないっ!夜天君が好きだって!
――よしっ!




美奈子はすぅっと深呼吸をして目を上げる。
「あのね夜天君。どうしても伝えたい事があるの」
夜天は美奈子の真剣な声色に小さく息を飲む。

「あのね」
美奈子の瞳に何かを感じた夜天は焦る。

「あたし、あたしね...っ、あたし「待って!」――夜天く「ちょっと待って。ストップ」…むぐっ」
美奈子は夜天の手で口元を塞がれた事に驚く。
「ーっ」
まるで、自分の言おうとしたことを悟られて拒絶されたような、そんな気持ちになる。

「今から僕の言うことを、お願いだから口を挟まないで聞いて欲しいんだ」
夜天のエメラルドの瞳が美奈子の空色の瞳をまっすぐに見つめ、言い聞かせるようにそう告げる。
一瞬、心が挫けそうになった美奈子だが、夜天の瞳が今までにないくらい真剣に自分を見つめていて、思わずこくんと頷く。

「いい?絶対だよ?」
念を押すようにそう告げられた美奈子はもう一度しっかりと頷いた。

納得したのか、夜天はそっと美奈子の口元から手を下ろすと、小さく深呼吸をひとつ。

「あのさ、僕…さ。君の事最初はただうるさいだけの子だって思ってたんだ」
夜天はゆっくりと話し始める。

“夜天光”として“愛野美奈子”への想いを。

第一印象から、同じセーラー戦士だと分かった時の事。
アイドルオーディションを受けていた事に、呆れたこと。
けれど、それ以上に一生懸命で輝いていた美奈子に、その頃から芽生え始めた気持ちのことを。

ギャラクシアとの戦いで、ヴィーナスがスターシードを奪われた時に感じた絶望感。

夜天は洗いざらい自分の気持ちを美奈子にぶつけた。

「いつの間にか、君の事が“特別”になってたんだ。
気がつけば君の事を考えてて、君の笑顔がチラついて…さ」
言いながら、段々と恥ずかしくなってきた夜天は美奈子の方を見られずに少し、うつむきがちに話をする。

「すごく自分勝手な自覚はあるんだ」
夜天は、少し辛そうに瞳に憂いをにじませる。
「僕は明日、地球を去る。
それなのに、君にこんな事を言って、縛り付けるみたいになるのは、ひどいってわかってる――でも僕は、自分の気持ちに嘘なんて付きたくないんだ!!」
夜天は、パッと顔を上げ、まっすぐに美奈子を見つめて、息を飲む。

美奈子は一滴、涙を零す。

夜天は表には出さず内心で焦る。

泣かせたっ!?やっぱり勝手だったからかな…
それにしても――綺麗、だな


不謹慎にも涙を流す美奈子に見惚れてしまう。

「――夜天君」

「っ...なに?」

「それじゃあ、まるで…っ」

「……なに?」

「夜天君があたしを“好きだ”って言ってるみたいに聞こえるわ?」

「っ、〜/// そうだよ!僕は君のことが好きなんだよ///」

「っ」
美奈子は息を飲む。

ホント…に?“好き”って言った。夜天君があたしの事を?

「――夢?」

「ちょっと!人の一世一代の告白を夢扱いとかひどいんじゃないの!?」

「だ、だって///」
美奈子は真っ赤になって夜天を見つめる。
「っ…だって、何?」

「だっ...て――」



――ガチャン

「お疲れ様でしたー」
美奈子が何かをいいかけたところで、観覧車の扉が開き、係りの人が営業スマイル満開で出迎えてくれた。

夜天は軽い眩暈を覚えつつも、なんとか口を開く。

「…………もう一周おねがいします」
腕に巻かれたフリーパスを見せる。
美奈子の手を取り、袖を捲ると同じようにフリーパスを見せる。

「はーい。それではいってらっしゃいませ〜☆」

――ガチャン

「……」
「……」
「ーっ///」
「……」
観覧車内が静寂で満たされる。

「――ねぇ」
そんな静けさを破ったのは夜天だった。
さっき美奈子の袖を捲ったままだったので、彼女の手首を握ったままの体勢だった。

「さっき僕が言った事、ちゃんと聞いてた?」
「っ/// もう一周」
「その前だよ!!ったく、わざとでしょ?」
「っ!」
「そうやってとぼけて、シラでも切るつもり?」
「ちがうっ」

「じゃあちゃんとこっち見なよ」
夜天は手首を掴んでいた方とは反対の手で、俯いた美奈子の流れる髪を彼女の耳にかけると、そのままそっと彼女の頬に触れる。
「っ!」

「僕を見てよ――美奈」
「っ///」
少し切なそうな声で名前を呼ばれたことに驚いて、美奈子は反射的に顔を上げる。
「ーっ///」
そこには、出会ってからこれまでで一番優しい瞳で自分を見つめる夜天がいて
「やっとこっち見てくれた」
無邪気に笑った彼の笑顔に美奈子の胸はきゅぅっとなった。

「〜っ、夜天くーん」
「わっ!ちょっと危ない!抱きつかないで!!揺れてる!めっちゃ揺れてるから!!」
「うーっ」

ぎゅっと抱きつきポロポロと涙を零す美奈子に夜天はくすりと笑う。

「まったく…しょーがないなぁ…」
よしよしと美奈子の頭をそっとなでる。
「うーーっ」

優しい、やっぱり夜天君は優しい。
今だって「しょーがないなぁっ」て言いながらも、泣きついたあたしを優しく抱きしめてくれる。
好き――大好き…っ


「やっ、てん…くっ」
しゃくり上げながら話そうとする美奈子を優しくなだめる。
「大丈夫だよ。ゆっくりでいいから」
「う…うん」

それからすぐに美奈子は落ち着きを取り戻した。

「落ち着いた?」
「うん///」
「そう」
言葉は少しぶっきらぼうだが、夜天の声色はひどく優しい。

「夜天君」
「何?」
「“さっき”の言葉…ホント?」
「……嘘だと思ってるの?」
「違うの!そうじゃなくて…だって夢みたいで――っ!」

言いかけた美奈子のくちびるを夜天が自身のそれで塞いだ。

「んっ///」

すぐにくちびるを離すと、驚いている美奈子の瞳を正面からエメラルドが射抜く。

「これでも“夢”だって思う?」
「っ/// なん…で?」
「さっき言ったでしょ?“僕は君が好きだ”って」
「うん///」

「君は?」
「え?」
「僕のことどう想ってるの?」
「えっ///」
「僕だけが言うのはフェアじゃないでしょ?」
そう言ってニッとイタズラっ子のように笑う夜天を見て、美奈子は自分の気持ちがバレている事に気付いた。

「や、夜天くっ///」
「なに?」
「ズルイ!」
「どこが?」
「だって…知ってるんでしょ?」
「何を?」
「あたしの気持ち」

「知ってる“つもり”だけど、勘違いだったら僕が馬鹿でしょ?」
「う…」
「それに僕はちゃんと君に言ったよ?“好きだ”って。
なのに、その応えを言わない君の方がズルくない?」
「う、うん」

「……」
夜天がまっすぐに美奈子を見つめる。
美奈子は彼の視線を受け止め、一つ深呼吸をする。

「あたしは――夜天君の事が好きっ...大好きなの///」
美奈子の告白を聞いた夜天はニコッと笑う。
「うん。知ってる」
と、呟く。

「〜〜〜〜っ/// 夜天君ズルイっ!」
「なんで?僕は知ってる“つもり”だって言ったでしょ?」
「何が“つもり”よ!ばっちり知ってるじゃない!」
「そりゃあ、まぁ…」
「な、なに?///」
「僕を好きってオーラが出てたから」
「っ/// 嘘っ!/// ホントに?///」
「まぁ、うん」
「ぅ〜っ///」
美奈子は真っ赤になってうつむく。

「照れてる」
「あ、う/// 夜天君がからかうからでしょ!」
「からかってないよ。可愛いなって思って」
「ーっ/// 夜天君ってそう言う人だったんだ///」
「そう言うって?」
「意外と意地悪っ///」
「美奈にだけだよ」
「っ///」
「ホントだよ?」
「う、うん///」

「ところで、さ」
「何?」

「美奈は僕のどこを好きになったの?」
「えっ///」
「教えてよ」
「は、恥ずかしいし///」
「ふーん…言えないんだ…」
「ちがっ///」
慌てる美奈子を見て夜天はイタズラっ子の笑顔を向ける。
「教えてよ?美奈」
「っ/// あのね――」

美奈子は少し俯きかげんに夜天への想いをポツリポツリと紡ぐ。

夜天の事がいつの間にか気になっていたことを。
そして――過去の事を話そうとして美奈子は言葉に詰まる。

「っ…あたしは…」
「……」
「あた、しっ......」
「――話したくないならいいよ」
「っ」
「そんな辛そうな顔させたかったわけじゃない」
「え?」
美奈子が驚いて顔を上げると、切なそうな瞳の夜天と目が合う。
「辛いなら、無理に話さなくていいから」
「っ」
「誰にでも、人に話しにくいこととか、言いにくい事の一つや二つあるんだからさ。
だから、言いたくないならいいよ」
そう言って夜天が美奈子の目尻をそっと拭う。
「ごめん。泣かないで、美奈」
腕を引かれ夜天の胸元に引き寄せられる。
「夜天くっ...」

「美奈、僕がいなくなってもこれだけは忘れないで」
「っ」

「――愛してる」
「っ!?」
「僕は何があっても君の事を愛してる。
キンモク星に帰って“夜天光”の姿を取ることがなくなったとしても、ヒーラーとして君を想うよ。
元気にしてるかとか、また馬鹿なことしてるのかなとか、敵が来てないかとか、ちゃんと笑ってるかなとか、毎日、君の事を考えるよ」

「夜天...君///」
夜天の言葉に美奈子の瞳に涙がにじむ。

「あたし...も、毎日、夜天君のこと考えるっ///
復興作業うまくいってるかなとか、ちゃんとご飯食べてるかなとか…、無理してないかなとか、元気かなとか…っ」
「うん。うん。ありがとう――美奈」
夜天はギュッと美奈子を抱きしめる。
美奈子も夜天の背中に腕を回して抱きついた。

「ねぇ、美奈」
「ん〜?」
「観覧車が天辺に来た時にキスをするといいんだっけ?」
「そう...なの?」
「違うの?」
本当に不思議そうな夜天に美奈子はくすくすと笑う。
「なんで笑うの?」
「だって、夜天君可愛いんだもん」
「ーっ…男が可愛いって言われて喜ぶわけないでしょ?」
「でも、可愛いんだもん」

くすくすと笑う美奈子のくちびるを夜天はそっと塞ぐ。

「んっ///」
「笑いすぎ」
そう言う夜天の声が優しくて美奈子は恥ずかしくなる。
「っ///」

「あ、そうだ!忘れるところだった」
夜天がゴソゴソとポケットから何かを取り出し、美奈子に手渡す。
「はい、あげる」
「えっ?」
「プレゼント」
「え?貰っていいの?」
「うん。美奈のために買ったんだ」
美奈子は袋を開けて中身を取り出す。

そこには――今、自分が付けているものと似たような赤いリボンがあった。

「リボン?」
「似たようなやつだけどさ、貰ってくれる?」
「うんっ///」
美奈子は自分が付けているリボンを解いて、夜天がくれたそれをキュッと付ける。

「お気に召しましたか?姫」
美奈子の髪を一房指に絡め取り、口付ける。
「っ/// うんっ///」
とびきりの笑顔を見せた美奈子はとても綺麗だった。



明日、遠く離れ離れになるけれど、その想いは決して変わらず二人を繋ぐ。



「美奈」
「夜天君///」
「愛してる」
「あたしも――愛してる///」






お読みくださってありがとうございます!

後半グダグダになってしまいましたが、これで無事に全CPをくっつけることが出来ました。

夜美奈は唯一ライツ帰星前にくっついていたのに一番最後になってしまいまして…

最初は美奈から告白する予定だったんですが、書き進めるうちに夜天君が告白。
あら?私もびっくりです。

そして美奈が照れすぎてますが、面と向かってそんな風に言われたらきっとあわあわするはずだと思いました。

でも、書いてて楽しかったです。

美奈に振り回される夜天君も楽しいですが、夜天君に翻弄される美奈も書いてて楽しいです。

最初は帰る話をしたところで告白してって思ってたんですが、どうしても夜天君に「残念だけどこの子は僕のなんだ。あんた達みたいな軽い奴らが手ぇ出していいような安い女じゃない」って言わせたくなってしまいまして、レッツ遊園地になったわけです!

では、ありがとうございました。



目次
Top
[*prev] [next#]






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -