捧げ物 | ナノ


海の終わり
ちゃぷんと揺れる白く濁った水面とうっすらと立ち昇る湯気。

その向こう見えるのは───誰よりも愛しい人



ここはライツマンションでも亜美のマンションでもない。

スリーライツの新曲のレコーディングと、ジャケット並びにミュージックビデオの撮影、雑誌取材などが無事に終わり、あとはテレビやラジオでのプロモーション活動が始まるまでの貴重なオフの日のデート。

ここしばらく続いていた秋雨前線がなりをひそめ、快晴で降水確率は夜まで0%ですと天気予報士も言っていた。
気候も良かったため大気が珍しく車ではなくバイクでのデートを提案し、一時間半ほどかけて海へと出かけた。
海を見て砂浜で遊び、隣接した水族館にも行った。
海でのデートを満喫した二人は夕方になり帰路についたのだが……

バイクを走らせはじめて三十分もしないうちに、叩きつけるような激しい豪雨に見舞われてしまった。
一度、雨宿りにコンビニに寄り空を見上げた。
「天気予報…アテになりませんでしたね…」
「そう、ですね」
「すみません。私がバイクでなんて言わなければ…」
「そ、そんなっ!大気さんのせいじゃないです…だから、謝らないでください」
「……はい」

その時、ゴロゴロと低い音が聞こえた。

「っ!?」
「雷まで……」
自分にピタリとくっついてきた亜美を見つめると、不安そうに空を見上げている。
もう一度、低く雷鳴が響いた。
「…っ」
ぎゅっと大気にしがみつく。

「亜美?」
「っ/// あ、ごめんなさい」
慌てたようにつかまっていた手を離そうとした亜美の手を大気が包み込む。

「亜美」
「はい」
「行きますよ」
「え?」
「ここで雨宿りしていてもこの様子じゃ当分は止まないでしょうし、そのままでは風邪を引いてしまいますから」
「でも、行くってどこに…」
「少し戻ったところにホテルがありましたから、そこで雨宿りしましょう」
「え?」

その瞬間、雷が光った。

「っ!」
亜美がぎゅっと大気に抱きつく。
「ここだとあまり雨もしのげませんし、当分やみそうにはありませんから、ね?」
大気が優しく言うと亜美が頷いた。

そして、来た道を十分ほど戻って二人は『いかにも』なホテルに入った。

「……」
「……」
「亜美」
「はい…」
「先にお風呂どうぞ?」
「え?」
「いつまでもびしょ濡れでいては風邪を引いてしまいますから、ゆっくり温まっておいで?」
大粒の雨に打たれたせいでふたりはびしょ濡れだった。

ちなみにここはどういうわけか温泉が湧いているらしく、いつでも入れるようになっているらしい。
「ダメですっ!大気さんの方が濡れてるじゃないですか」
「私なら心配いりませんから、ね?」
「そんなわけにいきません!もうすぐお仕事忙しくなるじゃないですか?」
亜美の瞳が絶対に譲る気が無いことをみてとった大気は内心で苦笑する。

「そうですが、だからと言って私が先に入るなんて出来るわけないでしょう?」
「あたしなら平気なので大気さんが先に入ってきてください」
「……ですから、そんなわけにいかないでしょう?」
「大丈夫です」
「頑固ですね」
「それは大気さんの方です」
「やれやれ……では仕方ありませんね」
はぁっとため息をついた大気の言葉に、亜美は納得してくれたのだと思ってホッと安心する───が

「せっかくですし一緒に入りますか?」

続けられた大気の言葉に目を丸くした。
(今、なにか、聞こえた気がしたけど……気のせいよね)
どちらかと言えば現実逃避に近かった。

「亜美?ちゃんと聞いてましたか?」
「え?」
「一緒に入りますか?って聞いたんですが?」
「…………っ!?えぇっ!?///」
真っ赤になって慌てる亜美の反応に大気はふっと笑った。

「嫌ですか?」
「えっと…嫌とか、いいとかじゃなくて……」
「なくて?」
「だ、だめですっ!」
「なぜ?」
「恥ずかしすぎます///」
「なるほど」
大気はうろたえる亜美の可愛さに内心で笑いながら、それならばと言葉を放つ。
「では、やっぱり亜美が先に入ってきてください」
「それは嫌です」
これには間を置かずにはっきりと返事があった。

「……亜美?私の話を聞いていましたか?」
「聞いてました」
「だったら、先に入ってきてください」
「それはあたしのセリフです。大気さんが先に入ってきてください」
「亜美、レディファーストですよ?」
「あいにくここは日本です。いつでもそれが通用するわけじゃないんですよ?」
「……譲る気は無いんですね?」
「ありません」
こうなった亜美はちょっとやそっとの事では動かない。
ならば、強行手段しかない。
「そうですか、では───」
大気は亜美の手を掴み脱衣所へと入る。

「な、なんですか?」
「脱いでください」
「はい?」
「一緒に入るので脱いでください」
「っ/// なんでですか?///」
「いつまでも濡れた服のままでは風邪をひいてしまいます」
「それは、そうですけど///」
「亜美」
「っ」
怒ったような大気の声音に亜美が困ったような泣きそうな瞳をする。
「私は亜美に風邪なんかひいてほしくないんです」
「それはあたしも同じです。大気さんお仕事で大事な時期なのに…んっ///」
大気は亜美のくちびるをふさぐ。

大気は亜美のくちびるの冷たさに驚くが、きっと自分も同じに違いない。
くちびるを離すと、そっと亜美のくちびるをぬぐう。
「ほら、こんなにくちびる冷たくなってるでしょう?」
「っ///」
亜美のサファイアが揺れる。
今にも泣き出しそうに瞳を潤ませる亜美に大気は優しく微笑みかける。

「亜美」
「大気…さんっ///」
「そんなに怖がらなくても大丈夫ですから、ね?」
「でもっ///」
「絶対に変な事しませんから」
「っ///」
「このままでは二人とも風邪をひいてしまいます…」
「っ、だから、大気さんが先に」
「私が亜美を差し置いて、そんな事が出来ると本気で思ってるんですか?」
亜美は真っ赤になって小さくうつむく。
「亜美が先に入ってくれるなら、私はそれで構いません」
「それはダメですっ!そもそも大気さんの方がびしょ濡れじゃないですか!」
「だったら、わかるでしょう?」
「うぅっ///」
「何も心配しなくても変な事しませんから、一緒に入りましょう?」
「っ///」
亜美は耳まで真っ赤になってこくんと頷いた。



───そして

「亜美は服を脱いで先に入っていてください」
「え?」
「私はそこの乾燥機付きの洗濯機に脱いだものを入れてから入りますから」
「あの、あたしがやりますよ?」
「そうしたら亜美、私が出るまで入ってこないでしょう?」
大気の指摘にぎくりとする。

「……うぅっ…分かりました。あの///」
「外に出てます」
「ありがとう…ございます///」
亜美は、着ていた服を脱ぐ。
雨に濡れているため体に張り付いて脱ぎにくい。

「っ、くしゅん」
「ほら、早くお風呂に入らないと風邪ひきますよ?」
亜美のくしゃみが聞こえたのか、大気がくすりと笑う。
「うぅっ///」
「脱いだら洗濯機に入れておいてください。今日着ていた服の中で洗ったり乾燥したらダメなものはありますか?」
「大丈夫です」
「わかりました」
「すみません」
「どうして謝るんですか?」
「いえ…あ、の、それじゃあ、お先に入ります」
「私もすぐに入りますから鍵はかけないでくださいよ?」
「はい///」

亜美はタオルで隠しながら浴室の扉を開け、中に入る。
全体的に広く、浴槽も大きい。
海が近いからなのか浴槽が貝殻をイメージしたフォルムになっているのが少し、いや、かなり気になった。
その浴槽からは天然温泉の湯気がもうもうと立ち上っている。
亜美はシャワーをひねると少しぬるめの温度で体に水をまとわせる。
思っているよりも体が冷えているため、いきなり熱いお湯を浴びると良くない。
少しずつ温度を上げて体を慣らすとシャワーを止め、浴槽へと入る。

(あったかい)
まさかこんなところで温泉に入る事になるとは思っていなかったが……。
幸いにもお湯はにごり湯なため見えにくく亜美はホッとした。
(雨、止まなかったらどうしよう…)
あとで天気予報をチェックしようと考えていると…。

───コンコン

「ひゃぁっ」
「すみません。驚かせてしまいましたか?」
「い、いえ、ちょっと考え事を…」
「入っても構いませんか?」
「え、あ、ドウゾ///」
亜美は扉を背中にして隅っこに寄る。

大気は緊張した亜美の声音にくすりと笑う。
緊張するなと言う方が無理な話だろう。
大気としてもまさかこんな形で“はじめて一緒にお風呂”に入る事になるとは思っていなかったのだから。

初体験の自分の誕生日から約四ヶ月。
“あの日”以来、そういう事は何度かあった。
けれど、一緒にお風呂に入った事はまだ一度もなかった。
大気が何度か誘ってみた事はあるのだが、真っ赤になって「絶対に無理です」と即答されてしまったのだ。

(とにかく亜美を怯えさせないようにしないと…)
はじめて一緒にお風呂に入って“何か”しようものなら、金輪際二度と一緒にお風呂に入ってくれなくなる可能性が極めて高い。

だからと言ってあのままだと亜美は絶対に先に入ろうとしない。
亜美は一度こうだと決めたら譲ってはくれない。
そうなった亜美を動かせる人間はおそらく“月野うさぎ”だけだろうと思う。

だから大気は強行手段で一緒に入る事を決めた。
『何があっても絶対に我慢する』
これが大気の今日の密かな目標だ。

深呼吸をひとつして、扉を開けて中に入ると思っているよりも広くて大気は少し驚く。
隅っこで小さくなっている亜美にくすりと笑う。
「そんなに警戒しないでください」
「べ、べつに警戒してるわけじゃないです///」
亜美は振り向かず声だけを返す。
『絶対にそっちを見ません』と言う意思が感じられる。
「そうですか?」
大気が聞くと小さくこくりと頷く。

大気は掛け湯を済ませると、浴槽に浸かる。
「どうしてそんな隅っこにいるんですか?」
「お、オカマイナク…」
「せめてこっち向いてください?」
「いやです」
「そうですか。それは残念ですね」
大気はそう言うとそろりと亜美の方に近づく。
「……っ!?」
パッと亜美が振り向く。
どうやら水面の動きでばれたようだ。

「なっ///」
「随分とつれないですね?」
浴槽の隅にいたため逃げ場などあるはずもなく、いとも簡単に大気は亜美を追い込む。
「あ、ぅ///」
真っ赤になって視線をさまよわせる。
「亜美」
「っ///」
「せっかくなんですからゆっくり入りましょう?」
真っ赤になりながらこくこくと頭を縦に振る。
大気はふっと笑うと亜美の髪をなでる。
「っ///」
恥ずかしそうにうつむく亜美に抱きしめたい衝動に駆り立てられるが…それをぐっと抑え込む。
(これは…ちょっと、かなりマズイかもしれませんね…)
分かりきっていた事だが亜美の反応の初々しさが可愛すぎて、このまま何もしないでいられるだろうか…と、不安になってしまう。

これがはじめてのお風呂でなければもう少しやりようもあったのだが…と、大気は内心でひとりごちる。
(それにしても…)
大気がじっと亜美を見つめると怯えたようにビクッと反応する。
(ここまで怯えられるといっそちょっとくらい意地悪してやろうかという気になってきますね…)
少々物騒な事を考えてしまうあたり、理性のベクトルがいつもと違うかもしれない。



しばらく温泉で温まったあと大気と亜美は交代で頭や身体を洗う事になった。
亜美が大気に先を譲ったために、大気は彼女がのぼせないうちに早めに済ませて交代した。

「絶対に見ないでくださいね」
「わかりました」
「絶対ですよ?」
「はい」
「……」
「亜美」
「はい?」
「もし、もしもですよ?私が“約束”を破ったらどうしますか?」
「───二度と大気さんと一緒にお風呂入りません」
「……デスヨネ」
大気は盗み見ることを潔く諦めて、亜美の方に背中を向ける。
亜美も大気の方に背中を向けるとわしゃわしゃと頭を洗いながら背中越しに声を掛ける。
「あの…大気さん」
「なんですか?」
「雨、止まなかったらどうするんですか?」
「そうですね……このまま一緒に泊まるか…、あるいは星野か夜天に電話して亜美だけでも迎えに来てもらうか…ですね」
「大気さん…は?」
「さすがにあの大きさのバイクを車には乗せられないので、私だけ泊まって明日の朝にでも帰りますよ」
「……っ」
亜美はシャワーで髪を洗い流す。

その音を聞きながら大気は考える。
おそらく亜美にとってはその方がいいかもしれない、と。
今のこの状況は自分にとってかなりおいしい事には違いないが、振り向きたい衝動をはじめとした男としての本能部分が正直かなりキツイ…。
亜美を傷つけたくない気持ちと、彼女を抱いてしまいたい本能と───。

一方の亜美も浴室内を満たすシャワーの音と身体を伝うお湯のぬくもりを感じながら大気の言葉を考える。
仕事で忙しいはずで、合間のオフでゆっくり休みたいはずなのに…わざわざバイクで海に連れてきてくれた。
雨が降らなければ今ごろもう自宅界隈にたどり着いていたはずだった。

キュッとシャワーを止めるとコンディショナーを済ませる。

「……」
夕飯は外で済ませて、大気に家まで送ってもらうはずだった。
「……」
豪雨に見舞われていなければ、それで今日のデートは終わりだった…はずだ。
(大気さん、明日はお仕事…よね?)
大気のスケジュールを知っているわけではないので、首を傾げる。

一緒に泊まると朝から亜美を送り届けて一度、家に帰って仕事に行く事になるだろう。
それは逆に大気に迷惑をかけてしまうのだろうか、いや、しかしだからと言ってわざわざ星野か夜天に迎えに来てもらう手段は、彼らにとっても迷惑をかける事になる。
と、なれば───
(タクシー?でも、ここからタクシーで帰るほどのお金は持ってないし…)

「ん〜?」
何やら考え事をしているらしい亜美の声に大気はきっと『誰にも迷惑をかけないようにするにはどうしたらいいのか』と思考を巡らせているんだろうなと思う。
「亜美」
「え?」
「言うまでもないと思いますが、亜美が嫌じゃなければ一緒に泊まってもらえると私は嬉しいですよ?」
「え?でも…」
「でも?」
「……大気さん…明日ってお仕事です、よね?」
「14時からですが」
「……」
「亜美?」
「え?」
「どうしました?」
「いえ…」
亜美は身体を洗いながら思考を巡らせる。

(14時からお仕事って事は…一緒に泊まっても迷惑…じゃ、ない?)
亜美はそろりと大気の方を振り向くと、約束通り自分の方を見ないでくれていた事に安心した。

再び温泉につかった亜美はやはり恥ずかしいのか大気の方を見ようとはしなかった。

「あの…大気…さん」
しばらく無言だった亜美がおずおずと大気を呼んだ。
「ん?」
「あの/// さっきの話なんです、けど…」
「はい」
「えっと///」
「うん?」
「うぅっ///」
「ふっ」
何かを言いたそうに、でも言い出せない亜美に大気はくすりと笑う。
「どうしました?」
「あの///」
「はい」
「その///」
「はい」
大気の優しい声音に亜美は少しだけ勇気を出す。
「あ、あたしも泊まっても迷惑じゃないですか?///」
「っ///」
大気は亜美の言葉に思わず赤面しながらも「もちろんですよ」と返す。
(良かった)
亜美はホッと胸を撫で下ろす。

こんな予定ではなかったが海に行くとの事だったので、万が一濡れたりした時のために下着等の着替えを持ってきておいてよかったと思った。

大気は亜美に優しく微笑みかける。
その笑顔に亜美の鼓動が跳ねる。
(い、今さらだけど……大気さんと一緒にお風呂なんていう状況でもすでにどうしていいのか分からなくていっぱいいっぱいなのに無理!
これ以上は無理!もうホントに無理っ!あたしの身が持たないっ!って、言うか…)
「どうして…」
「はい?」
「大気さんはどうしてそんなに平然としてられるんですか?」
亜美の言葉に大気は一瞬固まってしまう。
「……平然としているように見えますか?」
亜美はこくりと頷く。
「本当にそう見えるんですか?」
亜美はもう一度頷く。
と、言うより亜美としては大気の余裕がないところなんて今のところ見たことがなかった。
(大気さんはいつでも余裕で、慌てるのはあたしばっかりで…)
亜美がきゅっ下唇を噛む。

「“平然”となんて、できるわけないでしょう?」
「っ///」
「私は今だってどうしていいのか分からないくらいに緊張してるんですよ?」
「うそ」
困ったように微笑む大気に亜美は反射的に小さな声でポツリとこぼす。
「本当ですよ」
「で、でも///」
「そんな風には見えませんか?」
「はい…まったく…すごく余裕に見えます」
「…………格好つけたいんですよ…」
大気の少し拗ねたような声に亜美は驚く。
「好きな女の子にはいい風に思われたいと思うのは当然でしょう?」
「……思うんですか?」
「思いますよ」
「大気さんが?」
「そうですよ」
自分の言葉に目を丸くする亜美に大気は苦笑する。

「亜美は私を買い被りすぎです」
「え?」
「大人っぽいとか、落ち着いてるとか、私の外見からくるイメージを当てはめただけにしか過ぎません」
亜美はこくんと頷く。
「確かにそういう部分も持ち合わせていますし、自分でもそう思っていましたし、だから都合も良かったですし、わざわざ否定する必要もなかったんです」
亜美はこくんと頷く。

「───ですが」
大気がまっすぐに亜美を見つめる。
「っ///」
それだけで真っ赤になってしまう亜美の頬にそっと触れる。
「私はこれまで知らなかった自分がいた事を知りました」
大気はくすりと笑う。
「亜美のせいです」
「っ…」
大気の言葉に亜美がひくりと息を飲む。
「私がどれだけ亜美の事を好きか…知っていますか?」
「っ!?」
「私は亜美を好きになってから、自分でも知らなかった子どもっぽい一面がある事を知ったんです」
「え?」
「嫉妬なんて今まで経験ありませんでした」
「っ」
「意地悪したくなるのも、優しくしたくなるのも───亜美にだけです」
「ーっ///」
「亜美が───亜美だけが私の心をかき乱すんです」
「っ//////」
亜美が真っ赤になってふいと視線を逸らせる。

二人の間に甘い沈黙が訪れた───その時
浴室にある曇り窓に光が瞬いた。
「っ!?」
少しして、低い雷鳴が聞こえる。
「ぅ…」
亜美が小さく声をもらした。

大気はふと思い出す。
(そう言えばさっき…)
「亜美?」
「っ…」
「雷、怖いんですか?」
「ぅ…っ…」
亜美が小さく頷く。
これには大気はかなり意外に思った。
亜美の近くには“雷”の技を得意とする木星を守護星に持つセーラージュピターがいて、戦闘の時など彼女から繰り出される技は雷鳴と稲光が凄かったように思えたのだが…
恐らく、技として繰り出されるものと、自然発生したものとの感覚は違うのだろうと勝手に結論付けた。

とにもかくにも、どうせなら浴槽の淵にすがるよりも自分にすがってくれないだろうかと思いながら大気は口を開く。
「亜美、おいで」
「ーっ」
涙目で振り向かれた大気はどきりとするが、亜美の瞳に不安の色が見えたため優しい笑顔を見せる。
「おいで」
「うん///」
いつもより素直に来るところをみると、本当に苦手なのだろう。
大気は亜美を安心させるように優しく微笑むと、そっと彼女を抱きしめる。
「っ///」
「こうしていれば、怖くないでしょう?」
「っ/// 大気さん///」
大気と一緒にお風呂に入っている緊張と、彼に抱きしめられているドキドキと、雷への恐怖が亜美の中でグルグル巡る。

「亜美───私の事だけ考えてください」
「っ///」
驚いて顔を上げた亜美のくちびるにちゅっとキスをひとつおとす。
「んっ///」
「可愛い」
「な…っ/// 変な事しないって、言ったじゃないですか///」
そう言って瞳を潤ませる亜美に大気はくすりと笑う。

「恋人同士の私達がキスをすることは別に“変な事”じゃないでしょう?」

「……え…っ/// なっ!その理屈は…ズルい…んっ///」
大気は妖しく笑うと再び亜美のくちびるを塞いだ。






あとがき

ゆう吉様

24000のキリ番ゲットおめでとうございます。
リクエスト戴いた「大亜美でお風呂」を書かせていただきました。

……あとは、ご想像にお任せします(爆)

嘘です。大丈夫ですよ。大気さんはチューまででやめますので(・∀・)

途中ちょいちょい大気さんが…ね、こう……ね。うん。
暴走しそうになるのを止めるのが大変でした(〃∇〃)

少しでも気に入って戴けると嬉しいです。



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