捧げ物 | ナノ


Plastic
「はぁ?」

夜天は目の前で真剣な眼差しをしている自分の彼女に呆れ果てた声を出した。

「だーかーらー!」
「いや、待って。聞こえなかったわけじゃないよ。意味が分からないんだよ」
「なんで!?」
「…なんでって……そりゃあ」
「最近ぜんっぜんデート出来てないじゃない!」
夜天の言葉を遮って美奈子が言い切る。

「それは仕方ないでしょ?」
「なにが?」
「仕事だから」
「オトナの無難な言い訳っ!」
「いや、僕の方が誕生日遅いし」
夜天のつっこみをスルーした美奈子は続ける。
「うーっ…仕事だけどさぁ」
「まぁ、僕だけならまだしも」
言いながら夜天は、ため息をつきじっと美奈子を見る。

「うっ…」
その視線から逃れるために美奈子は視線を逸らせる。
「僕に黙って芸能界デビューしたのは美奈だよね?」
「だからそれは謝ったじゃない」
「違う。僕はその話をしたいんじゃない」
「じゃあ、なに?」
「僕はちゃんと言ったよね?“今までみたいに気軽にはデートできなくなるんだよ”ってさ。それに対して美奈はなんて答えた?」
「“わかってるわよ!”」
「はい、正解」
「……」
「……それにさ」
「もういいっ!夜天君のばかっ!」

───バンッ

「はぁっ?」
夜天が反応するより先に美奈子は部屋から飛び出して行ってしまった。
「……はぁっ」
さっきとはまったく同じ音なのに、意味合いの違う溜め息が夜天からもれる。
「だから言ったんだよ…」
美奈子が置いていった携帯をじっと見つめる。

電池パックの蓋をスライドさせて外して裏返す。
そこには少し赤い目をしているがとびきりの笑顔の美奈子と、呆れたように戸惑いつつもどこか嬉しそうな夜天のプリクラが貼られている。
『☆祝☆夜天と美奈子のラブラブ記念日!』と美奈子の手書き文字で書かれハートのスタンプが飛び交っている。
地球を離れる前に遊園地でデートした時に撮ったものだ。

電池パックの蓋の裏に貼っているのを見た時はなぜ表に貼らないのかを聞いた。
美奈子なら喜んで表に貼ると思っていたのだ。
すると美奈子は表に貼ると目立つし、それに…と言ったあとに口ごもった。
その先を促した夜天に美奈子は少し瞳を潤ませながら言ったのだ。

「表に貼ってたら色あせてきちゃうかもしれないから……それは、なんか嫌だから…」と。

あの時には夜天達が地球に戻って来られる確証なんてなかったのだ。
色あせるという事はそれだけ年月が経つことを自覚しなくてはいけなくて…。
それを怖がっている美奈子をどうしようもなく愛しいと想った。
電池パックの裏に貼られたプリクラはいまだに綺麗な状態で、夜天は小さく笑うとスライドさせて蓋を閉めるとそれと自分の携帯と財布をポケットにしまい、部屋を飛び出す。
「バカ美奈」



「おや?」
「ったく…」
大気と星野にすごく何かを言いたそうな目で見つめられた夜天は、テーブルに置かれた四つのマグカップを見てため息をつく。
おそらくは美奈子がリビングにいたうさぎと亜美を引き連れて部屋を飛び出して行ってしまったのだ。
「……ちょっと行ってくる」
「えぇ、そうしてください」「おぉ、そうしてくれ」
「その前に二人に頼みたい事があるんだけど、いい?」
「なんですか?」「なんだよ?」
「実は──────。ダメかな?」
「どうぞ」「ほら」
夜天の話を聞いた二人は夜天の手のひらに“あるもの”をのせる。
「ありがと───ごめん」
「……」「……」
「いってきます」
「いってらっしゃい」「おぉ」

パタンと玄関の扉が閉まる音を聞いた大気と星野は顔を見合わせる。

「ごめん───ですか」
「あの夜天がなぁ…ホントに変わったよな」
「まぁ、亜美達が戻ってくるのを待ちましょう」
「そうだな。あ、大気コーヒーおかわり」
「ご自分でどうぞ」
「ケチ」
「なんとでも」
「水野に言ってやろう。大気がコーヒーの一杯もいれてくれないケチだって」
「……っ」
ムッとしたように星野を睨むと大気は立ち上がりキッチンに入っていく。
「星野はコーヒーの一杯もまともにいれられませんよって月野さんに言っておきますよ」
「はぁ?そんなわけねーだろ!」
「はいはい」
「おっまえ…水野が絡むとホントにおっかねーよ!」
「あなたは相変わらず月野さんが絡むとめんどくさいですよ」
「なんだと!」
「ブラックでいいですか?」
「あ、あぁ。サンキュ」



「もーーーっ!!」
「お、落ち着いて…美奈子ちゃん」
「そうだよ。まずは落ち着こう、ね?」
うさぎと亜美を引き連れてライツマンションを飛び出した美奈子は公園にいた。
遊具がブランコと鉄棒くらいしかない小さな公園のためか、子どもの姿はおろか、犬の散歩をさせている人もいない。

「だって…だって…夜天君とデート出来てないのよ!もう!一ヶ月もっ!!」
「夜天君がスペシャルドラマ、美奈子ちゃんが写真集の撮影でお互いに忙しいんでしょう?」
「うん…」
「美奈子ちゃんも夜天君も学校で会うくらいなんだっけ?」
「うぅっ…そうなのよぉ…」
ブランコに座り、落ち込む美奈子にうさぎと亜美は顔を見合わせる。
「でも、美奈子ちゃん夜天君のところによく泊まってるんじゃないの?
星野が『愛野がうちにいてもなんの違和感も感じないようになってきた』って言ってたけど?」
「それはそうなんだけど…違うのっ!あたしは夜天君とお外でデートがしたいの!
ウィンドウショッピングしたり、遊園地行ったり、映画に行ったりしたいの!」
力説する美奈子に亜美が考えこむ。

「うーん…夜天君だけだったら“アレ”が使えるんだけどねぇ…」
「あぁ、“アレ”ね。亜美ちゃんよくあんなの作れたね」
「あたしはルナとアルテミスの指示通りにやっただけだもの……」
「うぅっ…」
亜美とうさぎの言う“アレ”とはスリーライツの三人が地球に帰って来て、彼女たちと付き合う事になった時に、ルナとアルテミスが考案し亜美が作り上げたイヤーカフ型の『認識誤認装置』の事である。
だが、それは“キンモク星人”である彼らが使ってこその効果を発揮できる代物であり、美奈子が使ってもただのイヤーカフでしかない。

美奈子が芸能界デビューする前まではそれを使って何食わぬ顔で外でデートしていたのだが……。
四ヶ月前に美奈子が芸能界デビューしてからというもの、それも出来なくなってしまった。

今や“愛野美奈子”は“美奈P”の愛称で親しまれ毎号必ずどこかのファッション雑誌に載っている人気者なのだ。

「うさぎちゃん」
「ん?」
「星野君がドラマ撮影で忙しくてデート出来ない時って、どうしてたの?」
「んーと…星野がドラマのない時間にうちに来てごはん食べたりしてたよ」
「デート出来なくて寂しくなかった?」
「寂しくなかったわけじゃないけど…」
「けど?」
「まぁ、ほら、ね?/// へへっ///」
うさぎは照れながら、誤魔化すように笑う。
「そうよねぇ…相手はあの星野君だもんねぇ、亜美ちゃんは?」
美奈子は質問の矛先を亜美に変える。
「え?あたし?」
「夏休み前からみちるさんのライブの練習で丸々二ヶ月くらい全然デート出来てなかったでしょ?」
「まぁ、そうね」
「寂しくなかったの?」
亜美が困ったように小さく微笑む。
「そう…ね。あれはあたしのわがままだったから、そんな風に思ってしまうのはダメだって思ったの」
「そう…なんだ」
「でも、寂しくなかったわけじゃないし、結局あたしは大気さんに『寂しかった』って言ってしまったし…」
「言ったの?」
「うん」
「亜美ちゃんが?」
「えぇ」
「大気さんに寂しいって?」
「そうよ」
「……」
美奈子が目を丸くして亜美を見つめる。
「な、なぁに?」
「ううん。いや、あたしちょっと感動した」
「え?」
「そう…あの亜美ちゃんが。うんうん。驚いたわ」
「あたしもちょっとびっくり、だけど美奈子ちゃん?なんで突然そんな事聞いたの?」
うさぎが首を傾げる。

「星野君なんかいつでもうさぎちゃんの事を想ってくれてるじゃない?」
「そっかな///」「そうね」
「大気さんは大人びててすごく亜美ちゃんの事を大事にしてるでしょ?」
「そだね」「っ///」
「夜天君は───ね」
「「うん」」
「あんまりそういう事、言ってくれないのよ。『寂しい』も『会いたい』も『大好き』も、いっつもあたしからなの」
(そうかな?)(そうかしら?)
うさぎと亜美はいつもの夜天と美奈子を思い浮かべる。

確かに美奈子の方が口には出しているような気もするが、夜天は明らかに態度で表している。
学校で美奈子が他の男子生徒と話している時なども、気にしていない風を装いながらも意識は美奈子に向いているのが分かる。
仕事場での様子は分からないが、美奈子が不安に思っているのと同じように夜天も不安に思っているのだろう。
だからこそ美奈子が芸能界デビューを決めた時、夜天が猛反対したのだ。

「そりゃ、冷たいとかじゃないんだけど…あたしの前ではすっごく優しく笑ってくれるし、“美奈”って呼んでいい男の人は夜天君だけだし」
((あれ?ノロケ話に変わってる?))
そう思いながらもうさぎと亜美が、少し頬を染めながら話す美奈子の言葉を聞いていると、突然パッと顔を二人に向ける。
「でもねっ!心が満たされないと切なくない!?」
「「はい?」」
「あたしが夜天君のところにお泊りが多いと言うことはっ!」
「あ、ストップ美奈子ちゃん」
美奈子の言いたい事を察したうさぎが止めるが…。
「身体は満たされてるのよ!」
「……聞いてないし」
「もうっ…美奈子ちゃんたら…」
うさぎと亜美が苦笑する。
「でも、それだけじゃ寂しいの!おうちだけじゃなくってお外でデートしたーーーいっ!!」
どうやら、美の女神は相当にご不満のようだ。

「困ったねぇ…亜美ちゃん」
「そうね…あたし達じゃ話を、ん?」
「およ?」
亜美とうさぎが聞こえた足音に振り向くとそこには───。
「そんなでかい声出したら近所迷惑だよ」
「夜天君!っ…何しに来たの?」
聞こえてきた声に美奈子が嬉しそうにするが、すぐにムッと怒ったような表情を見せる。
「探しに来たに決まってるでしょ?」
「頼んでないわ!」
「美奈にはね。でも───」
夜天の視線がうさぎと亜美を見つめる。
「星野と大気には頼まれたんだ」
「はぁっ!?ダメよ!あたしはうさぎちゃんと亜美ちゃんと話してるんだから」
「美奈が話をするのは僕」
「いやっ!話すことなんかないもん!夜天君はあたしとデートなんてしたくないんでしょ!」
「ったく…しょーがないなぁ…」
夜天はやれやれと言いたげにため息をつくと美奈子との距離を縮める。
「なっ、なによ!」
威嚇する美奈子を夜天は抱きしめると、そのままくちびるをふさぐ。
「なっ…んっ///」
「「っ!?」」
キスされた美奈子本人はもちろんだが、突然の目の前の光景にうさぎと亜美が驚く。

夜天はくちびるを離すと真っ赤になっている美奈子に少し怒ったような表情を見せる。
「僕、そんな事ひとことも言ってないよね?」
「でもっ」
「巻き込んで悪かったね二人とも。もう戻ってくれていいよ」
「「え?」」
「後は僕の役目だからさ」
そう言う夜天にうさぎと亜美はうなずく。

「それじゃ、あたし達はお邪魔みたいだし戻ろ?」
「えぇ、そうね」
「あ、僕らの分の夕飯はいらないって大気に伝えておいてもらえる?」
「分かったわ」
「そんじゃね〜♪」
「あ、うさぎちゃん!亜美ちゃん!」
「「ん?」」
「は、話聞いてくれて、ありがとね///」
そう言って少し恥ずかしそうに笑顔を見せる美奈子は同性のうさぎ達から見ても綺麗だった。
二人は美奈子に笑顔を見せると、手を振って公園をあとにした。

二人きりになった公園で美奈子は夜天から視線を逸らせている。
「美奈」
「っ」
「美奈」
「ーっ」
「美奈、僕を見て」
切なげな夜天の声に美奈子が顔を上げると───
「やっとこっち見てくれた」
子どものような笑顔を見せる夜天がいて、美奈子は胸がキュンとなった。
「ーっ、夜天君っ」
ぎゅっと夜天に抱きつく。
「人の話は最後まで聞きなよ。僕まだ話してる途中だったのに出て行くんだから…」
「だってぇ…」
「まったく……」
夜天はしっかりと美奈子を抱きしめると、そっと身体を離す。
「じゃあ、行くよ」
「え?」
「デート…したいんでしょ?」
「…………」
「……あのさぁ、そこで黙らないでくれる?僕がバカみたいでしょ?」
「ちがっ…だって…いいの?」
「───いいよ」
言葉はぶっきらぼうだけど優しい声色と、少し恥ずかしそうに逸らされた視線。
そして、少し困ったような呆れたような夜天の笑顔。
「っ…」
「ちょっ…なんで泣いてるのさ」
「だってぇ…」
堰を切ったようにポロポロと泣き出した美奈子にさすがの夜天も慌てる。

「あ〜、もう…ホントにしょーがないなぁ」
言いながら夜天は美奈子を抱きしめる。
「泣かないでよ美奈」
本当に困ったような夜天の声に美奈子は彼の胸に顔をうずめて「うんっ」と答える。

夜天は美奈子の金の髪をさらさらと指で梳きながら内心でひとりごちる。
(美奈が久しぶりの半日オフだからゆっくり休みたいかと思って遠慮した僕の立場がないよ…)
夜天はポケットからあるものを取り出すと、美奈子の両方の耳につける。
「っ!?」
「それ、つけとくといいってアルが教えてくれた」
美奈子が自分の耳にそっと触れる。
「これ…」
「星野と大気のイヤーカフだよ。借りてきた」
「でも、これって夜天君たちにしか効果ないんでしょ?」
「片方だけならね」
「え?」
「両方つければ、美奈達でも使えるんだってさ。後で少し疲れるかもしれないけどね」
「そう、だったの?」
「うん。作った本人の水野は一応知ってるはずだけど…言えなかったんだと思う」
「どうして?」
「美奈が芸能界デビューした後で、水野がアルに相談したんだってさ」
「え?」
「同じようなやつを美奈の分も作ってあげられないかってさ」
「そうだったの…」
「うん。でもこの三つだけしか作れなかったんだって」
「そっかぁ」
感動している美奈子の瞳を覗き込み、小さい子どもに言い聞かせるように話す。
「いい?美奈?今回だけだよ」
「いいの?」
「だから今回だけ“特別”だよ。“それ”が星野と大気にとっても大切な物だって事くらい美奈だって分かってるよね?」
「うん。もちろんよ。あとで星野君と大気さんと、それからうさぎちゃんと亜美ちゃん。それから───アルとルナにもちゃんとお礼を言わなくちゃ」
そう言ってしっかり頷いた美奈子に夜天は微笑む。
「じゃあ───まずはどこ行きたい?って言ってももうすぐ四時だからあんまり遠出は出来ないけど?」
優しく微笑んで聞く夜天に美奈子はとびきり輝く笑顔で答える。

「えっとねぇ…あ、カフェデートしたい♪」
「そんなのでいいの?」
美奈子の事だから少々の無茶を言うんじゃないだろうかと思っていた夜天は呆気にとられる。
「うんっ、いいの♪夜天君と出かけられるんなら特別なところじゃなくていいの。普通の子がしてるみたいにカフェでデートしたりしたいだけだったの…」
「……」
「自分から芸能界に入るって決めて、そうなると今までみたいに気軽に外を出歩いたり出来なくなるってちゃぁーんと分かってたのに……その覚悟もちゃんとあったのに、いざそうなって、毎日がそうなってしまうと、それまで当たり前だった生活がすごく大切で尊いものだったんだなぁって…」
「美奈」
「だから、かな…。久しぶりに夜天君とのお外デートがしたくなっちゃったのも」
そう言って泣きそうな笑顔を見せる。

「はぁっ…まったく…美奈は本当にバカなんだから」
「ひどっ!人が真剣にっ!」
「だからバカだなって言ってるんだよ」
「なんっ」
「今だけだよ、美奈」
「え?」
「いずれ、世間に僕らの事をきちんと認めてもらえれば、今つけてる“これ”も必要なくなって、みんなの認識を誤魔化さずに堂々とデートできるよ」
夜天はそう言ってイヤーカフに触れる。
「それ…は、そうだけど…」
「もちろん、僕らだけじゃなくて星野や大気もそうだと思う。だけど僕らはまだ高校生で、まだまだ子どもで、だからこそ今はみんな頑張ってるんだよ。
少しでも認めてもらいたくて、自分達に何が出来るのかを必死に手探りで探してる」
「夜天君」
「美奈は、頑張らないの?」
「え?」
「僕は、美奈との将来のために頑張るよ。美奈は僕と一緒に頑張ってくれないの?」
「っ//////」
「真っ赤」
「っ、なっ/// だって夜天君が///」
赤くなる美奈子に夜天が楽しそうにくすくすと笑う。

なんと言うパンチ力のある口説き文句を言ってくれるのよと美奈子は思う。
夜天はいつもこうなのだ。
普段はそんなことを言わないのに、彼女の不安や渇望を見抜き、さりげなく優しく、時に強烈なまでに“愛野美奈子”を迷いから解き放つのだ。

「僕が、何?」
「カッコイイこと言うからっ///」
「天下のトップアイドルスリーライツの夜天光なんだから当然でしょ?」
そう言ってニッと笑う夜天に美奈子がくすくすと笑い出す。
「もうっ、夜天君たら」
普段はそんな事を言わないのにと、美奈子は楽しそうに笑う。
「うん、やっと笑った。美奈は笑顔でいてよ」
「え?」
「僕は、美奈の笑顔が好きなんだから」
そう言って微笑む夜天はさっきまでと違い、自分にしか見せない男としての表情をしていて美奈子はドキリとする。
「っ///」
夜天はしてやったりと笑顔を見せると、美奈子の手をそっと握り締める。

「それじゃあ行こうか?駅前のカフェでいい?それとも行きたいカフェある?」
「ううん!駅前でいい!」
「了解。夕飯いらないって言ったから夕飯も考えなきゃね」
「ファミレスは?」
「えぇ?さすがにそれはヤだ。うるさいし…」
「え〜、それじゃあ…」
「そうだ!美奈の家に行こう!」
「えっ!?」
「僕、美奈のお母さんが作ってくれたごはん食べたい」
「いいけど、それでいいの?」
「いいよ。普通のデート…だよね?あれ?違う?」
「ううん。行こう。ママに連絡って……あぁっ!携帯!」
「あ、そうだった。はい」
夜天はポケットに入れていた美奈子の携帯を手渡す。

「持ってきてくれたの?」
「うん」
「ありがと」
美奈子は携帯を受け取り素早くメールを打つとすぐに返事があった。
「いいって」
「良かった。あ、そうだ美奈」
「ん?」
「プリクラ撮ろうか?」
「え?」
「実は僕そろそろ携帯をスマートフォンにしようと思ってるんだ」
「そうなの?」
「うん。だから、新しいプリクラ貼っとかなきゃでしょ?」
そう言って夜天は自分の携帯の電池パックの蓋をスライドさせて外すと美奈子に見せる。

「っ、貼っててくれたの?」
「貼っててって言ったの美奈でしょ?」
「そうだけど、だって、撮ったあとに貼るのやだって言ったじゃない」
「っ…彼女と撮った初めてのプリクラを目の前で喜んで貼るなんて恥ずかしくて出来るわけないでしょ…星野じゃあるまいしっ!それくらい察してよ」
「ぷっ…夜天君てば可愛い」
「嬉しくない!」
拗ねる夜天に美奈子は声を上げて笑う。
「笑いすぎだよ!」
「だって…きゃははっ」
「ったく、とにかくプリクラ撮るよ?」
「うんっ!撮る!チュープリ撮る」
「それはやめて」
「えーっ」
「デコレーションでハートは乱舞させていいから」
「ホント!?」
「うん」
「やったぁ♪」

嬉しそうにはしゃぐ美奈子に夜天は優しい瞳を向けた。






あとがき

綾瀬様

25000のキリ番ゲットおめでとうございます♪
リクエストありがとうございます。

夜美奈が好きとの事だったので、勝手にリクエストとして書いてみました。
作中に登場した『認識誤認装置』はオリジナル設定です。

少しでも気に入って戴けると嬉しいです。



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