大気×亜美 | ナノ




ひととき

二学期に入り、スリーライツが転入してきてから約一ヶ月。

偶然か、はたまた必然か――うさぎ達四人と同じクラスになった彼ら。

“スリーライツ電撃復活”の話題もあったため、しばらく彼らの周囲は騒がしかった。

それも落ちつきを取り戻し始め、九月も終わりに近づいたある日。

6時前に起床した大気は、軽く伸びをして体をほぐす。
昨日は一日中の仕事だったが、予定より早めに終わった。
睡眠時間もしっかりとれた。
昨夜、亜美と話をした時に今日が一日オフであることは告げておいた。
メール画面を開く。



To:亜美さん
Subject:おはよう

起きてますか?
今日は私が教室の鍵を開けておきますね。

-END-




送信ボタンを押し、目を覚ますためにシャワーを浴びる。

まだ7時前だ。
星野も夜天もまだ起きてこないだろうが、とりあえず人数分の朝食を作り、自分の分以外はラップをかける。
朝食をすませ洗い物をする。
ふと携帯を見ると、メール受信を知らせるランプが点滅している。
携帯をひらくと亜美からの返事だった。



From:亜美さん
Subject:おはようございます

はい。わかりました。
では、教室で(^^)

-END-




それを読んだ大気は携帯を閉じ、静かに家を出る。



7時40分過ぎに学校につき、職員室にクラスの鍵を取りに行く。
校内に人の気配はないに等しい。

教室の鍵を開け中に入り、後ろの扉の鍵も開ける。
自分の席は廊下側の一番後ろだ。
荷物を置き、教室の窓を開けているとガラリと扉を開ける音が聞こえた。
見なくても誰が来たのかわかる。

「おはようございます。亜美さん」
そう声をかけると「おはようございます」と愛しい彼女の声が挨拶を返してくれた。

亜美は窓側の自分の席に荷物を置き、窓を開けるのを手伝う。

先に窓を開けきった大気は、亜美の様子を見つめる。
その視線に気付いた亜美が、窓を開けながら大気を見つめ返し、少し照れながらもニコリと微笑む。

彼女の碧い髪が、窓から入り込んだ風で、ふわりと揺れた。
その姿に大気は見とれる。

そっと亜美に近づき、自分よりずっと小さく華奢な体をぎゅっと抱きしめる。

「た、大気さん」

亜美は突然のことに驚く。
二人きりとは言え、場所は教室だ。

まだ8時にもなっていないが、いつ誰が入ってくるかわからない。
自分達の関係を学校中が知っている。

しかし、だからと言ってこんなところを誰かに見られたら――亜美は大気の腕の中から抜けようと、小さくもがく
――そんな仕種も可愛くて、愛しくてたまらない。

大気はさらに強く抱きしめ、亜美の耳元でささやく。
「大丈夫……まだ誰も来ませんよ」
「っ!」
ピクリと反応を示す亜美に、大気はさらに耳元へと唇を近付け
「だから……ね?亜美さん…」
と、低く囁く。
耳まで真っ赤にした亜美が、自分の胸元に顔をうずめるのを見た大気は、どうしようもなく愛しさがこみあげるのを感じる。

クスリと微笑み、少し腕の力を緩め、彼女にそっと手を伸ばし、顎に手を添えクイと顔を上げる。

「〜っ///」
亜美の頬は淡くピンクに染まり、瞳は潤んでいる。

(そんな可愛いカオをされたら……)
大気は、亜美の唇に自分のそれをゆっくりと重ねる。
(キス――したくなるじゃないですか)

「んっ」
はじめは驚きながらも亜美はそっと瞳を閉じ大気からのキスに答える。

亜美は大気の制服の胸元をキュッとにぎる。
その無意識の仕種が、立ってキスをする時の亜美の癖だと知っている。
大気は、亜美を逃がさないようにしっかりと――しかし、彼女を壊さないよう優しく抱きしめる。

息が苦しくなってきたのか、亜美が大気の制服をクイと小さく引っ張る。
大気は、名残惜しく思いながらも亜美を解放する。

「っ…はぁっ…」
「ごちそうさま」
大気は亜美にしか見せないイタズラっ子のような笑顔を見せ、彼女の唇を指でなぞる。
「…もぉっ///」
少し拗ねた素振りをみせる亜美さえも、愛しく思いながら大気は笑みを深くする。

「今日の放課後は勉強会ですか?」
「いえ、今日はありません。
まこちゃんはクラブで、うさぎちゃんと美奈子ちゃんはそれぞれデートで、レイちゃんは学校の用事があるとかで…」
「では、亜美さんもデートしませんか?
私の部屋で過ごしましょう?」

亜美は嬉しそうにするが、すぐに考え込む。
「嫌ですか?」
「違います!…ただ大気さんお疲れなんじゃ…」
昨日も一日中仕事だったのだから、放課後くらいはゆっくり過ごしたいのではないだろうかと思う。

「そんなの亜美さんが傍にいてくれればふっ飛びますよ」
そう言って、亜美の柔らかな髪を撫でる。
くすぐったそうに肩をすくめた亜美は
「じゃあ、放課後お邪魔します」
と言ってとびきり可愛らしく微笑んだ。

大気はコツンと亜美の額に自分の額を当て、まっすぐに亜美の瞳を見つめる。
そしてもう一度、触れるだけのキスを亜美の唇におとした。

「っ!もうっ/// 大気さんっ///」

「ふふっ、さて…読書しましょうか?」

「はいっ」

朝から大気が登校できる時は、早めに来て二人で読書をする。
向かい合って座って、お互いが持ってきた本を読むだけなのだが、二人で過ごせるだけで幸せだと亜美は言う。

大気としては、もう少し欲を出してくれてもいいのにとも思うが、焦るつもりもない。

これから、二人の時間はいくらでもある。
二人の腕にあるお揃いのペアウォッチが刻むように。

同じ時間で
同じ星で
――生きていけるのだ。

ひとまず
今日の放課後は、自分の部屋で二人で過ごそう。
そして真っ赤になって、恥ずかしがる彼女に少しのイジワルと

とびきりの――甘いキスを






ここまで読んでくださってありがとうございました。
今回はとびきり甘いのを目指しました。
二人を教室でイチャイチャさせたかったんです。
ても、きっと人前じゃ亜美ちゃんは恥ずかしがってイチャついてくれないと思って…

朝か放課後か迷いましたが…
大気さんが朝からお仕事のない日は教室で二人で読書タイムしてればいいという結論に達しました!

ホントは、カーテンの裏で隠れてチューさせたかったんだ…
でも、私の力不足で挫折しました。




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