大気×亜美 | ナノ




告白
〜届く想い〜


まだまだ夏の暑さが続く八月半ば。

キンモク星に帰ったスリーライツの三人が地球に戻ってきた。



そして、すぐに彼らは行動を起こした。

星野はうさぎに、夜天は美奈子に。
大気は亜美に――それぞれの想い人へと――連絡を入れた。



From:■■■■@docono.ne.jp
Subject:大気です

こんばんは。亜美さん。
突然の事で驚かれるかもしれませんが、大気光です。
キンモク星から地球に戻ってきました。
夜遅くて申し訳ありませんが、今からお会いできませんか?
もちろん車で、マンションまで迎えに行きます。

TEL 080-XXXX-XXXX

-END-


「っ!」

そのメールを見た瞬間、亜美は携帯を握りしめたまま部屋から飛び出した。

そんなに慌てた娘を見たことがない母が少し驚いて亜美を見た。

「亜美?そんなに慌ててどうしたの?」
「ママ…あの…あたし……少し外出してくるわ」
母は娘の発言に、一瞬眉をひそめたが、彼女の慌てふためく姿――なによりここ最近の様子を知っている――を見て何かを悟ったのだろう。

「分かったわ。でもね亜美――さすがにそのままではダメよ。
クーラーの効いたところだと冷えるわ。
何か薄手のものでもいいから羽織って行きなさい」
母に言われた通り、一度部屋に戻り薄手のカーディガンを羽織る。

わざわざ玄関先まで見送りにきてくれた母から声がかけられた。
「もし、あまり遅くなるようなら迎えに行くから連絡なさいね。
もし帰らないのならそれはそれでちゃんと連絡してくるのよ?
連絡なしで帰ってこないと心配だもの」

さらりととんでもないことを言ってのける母に驚いたが、亜美はしっかり頷いた。

「うん。ありがとうママ。いってきます」
「えぇ。いってらっしゃい」

パタンと閉まったドアをみつめ
「亜美もいつの間にか大人になったのね…」
なんて言えるあたり母は強い。




家を出た亜美はエレベーターに乗り一階のボタンを押す。

毎日乗っているはずのエレベーターがいつもよりも長く感じる。

ポンと停止音がなり、エレベーターのドアが開くと同時にエントランスに駆け出しオートロックの自動ドアが開くさえももどかしく、
とりあえず彼らの住んでいたマンションの方向に走り出そうとした瞬間――「亜美さん」――声が聞こえた。

亜美は声のした方をゆっくりと振り返る。

そこに――“彼”はいた。

車を路肩に停めてこちらを見ているのは間違いなく“大気光”――その人だった。



「お久しぶりです」

大気はそう言って微笑んだ。

「大気……さん」

まさかここで会えるとは思っていなかったため、亜美は驚いて大気を見つめた。

そこにいるのが本当に大気なのかを確かめるように、たっぷりと三十秒は見つめ続けていた亜美の瞳から透明な雫がこぼれ落ちた。

そして彼女は笑った。
大気はしばらくその笑顔に見とれていたが、道の真ん中で女性――しかも好きな女の子――が悲しみからではないにせよ、涙を流しているのを放ってはおけないと思った。

ゆっくり彼女に近づくと、長い指で涙をぬぐった。
「ご、ごめんなさい。あたし…」

大気は亜美にそっとハンカチを差し出す。
「…ありがとうございます」
亜美は、それを受け取り涙を拭いた。
「いえ。かまいませんよ」
涙を拭く亜美の仕種が可愛らしく大気はそっと髪を撫でた。

しばらくすると落ち着いたのか、亜美は申し訳なさそうに大気を見つめた。

「…もう大丈夫です。ごめんなさい」
「いえ。気にしないでください」

大気は亜美の髪を撫でるのをやめ、真剣な表情で切り出した。

「亜美さん。まだお時間いけますか?」
「はい。大丈夫です」
「良かったです。では家に来ていただいて構いませんか?」
「はい。…でもお邪魔しちゃっていいんですか?
星野君と夜天君に迷惑じゃ…」
「いえ。それはご心配なく。星野も夜天も出かけて家にはいませんから。
さ、行きましょうか」

大気は亜美を車の助手席までエスコートし、ドアを閉める。
自身も運転席に乗り込みシートベルトをかけて、キーを回しエンジンをかけ、軽やかに車を発進させる。



その車中――二人は無言だった。

内心、二人はそれぞれ自分の気持ちを整理することでいっぱいだった。

そんな想いを抱えた二人を乗せたまま車はすぐに三人のマンションに着いた。





大気の部屋で二人は話をした。

亜美は学校や勉強や夏休みの話。
二年生になってから、みんな同じクラスになったこと。
一学期の中間と期末はうさぎや美奈子が勉強会でがんばって一つも赤点を取らずにすんだこと。
夏休みにみんなで海に行ったこと。


大気はキンモク星に帰ってからの話をした。
以前の通りに金木犀が咲き誇る綺麗な星になったこと。
自分達と同等の強い戦士を育てるための訓練に励んだことなど。



会えなかった空白の時間を埋めるように、たくさん話をした。

けれどお互い核心には触れずに――ひとしきり話をすると沈黙がおとずれた。

「……」
「……」

その沈黙を破ったのは
「亜美さん」
――大気だった。

さっきまでのおしゃべりの時とは違う、緊張を含んだような声で亜美の名を口にする。

「はい」
亜美は大気の雰囲気から彼が何か重要なことを言おうとしているのだろうと感じ、彼を見つめる。

「聞いていただきたいお話があります」
亜美はコクリと頷く。



大気は口を開く。
自分の想いを目の前にいる愛しい人へと届けるために――



「私はキンモク星に帰る前にあなたに伝えたかったことがありました。
でも伝えてはいけないと思ったんです」

「どうして…ですか?」

「私がキンモク星に帰ることが決まっていたからです。
だから伝えてしまったらあなたを困らせてしまう。
もしかすると悲しませてしまうかもしれないと思ったからです」

「……」

「いや……違う…そんなのはただの言い訳だったんです。
私は逃げたんです。自分の気持ちから。あなたへの想いから…」

「大気さん?」

「あなたを――亜美さんを好きだという気持ちから」

「っ!」

「星に帰ってから、私はその気持ちを一度は忘れようとしました。
“大気光”である自分は偽りだと思い込ませ、あなたへの気持ちも偽りだと思い込もうとした」

「……」

「でも、できませんでした。できるはずありませんでした。
“大気光”としての私は、どうしようもなくあなたの事を愛しく想っているんです」

「大気…さん」

「私はあなたの事が好きです亜美さん」

まっすぐに亜美の瞳を見つめ大気は告げた。

――“好き”だと



「っ……あたし」

亜美はその言葉を受け止め、今度は自分の想い――やっと気付いた自分の気持ち――を言葉にして紡ぐ。

「あたしも大気さんのことが好きです。大好きですっ」

「亜美さん」

「キンモク星に帰るって聞いた時、ホントは『いかないで』って言いたかったんです。
離れたくない。大気さんの傍にいたいって思いました。
でもそんなの言えなくて……」

「…はい」

「大気さんが帰ってから、寂しくて…会いたくて……
でもそれがどうしてなのかわからなくって…」

「え?」

「みんなに言われました。『自分の気持ちに気付いてないの?』って……
考えたけどやっぱりわからなくて…
でも今日、大気さんに会ってやっとわかったんです」

「はい」

「あたし――大気さんのことが好きだったんです。
キンモク星に帰る前から好きになってたって…やっと気付けたんです」

そこまで言ってから、亜美は恥ずかしくなったのか顔を真っ赤に染めてうつむく。

そんな亜美に愛しさがこみあげ、大気は優しく彼女を抱きしめ、耳元でささやく。

「愛しています――亜美さん。
 ずっとあなたを抱きしめたかった」

亜美も大気の背中にそっと腕をまわしキュッと抱きしめる。

「大気さん――大好きです。あたし今すごく幸せです」

「私もです」

体を少し離し、見つめ合い――微笑む。

大気は亜美の瞳を優しく見つめながらそっと問いかける。

「亜美さん――私と付き合ってください」

「はいっ!よろしくおねがいします」

亜美はとびきりの笑顔で答える。

大気は壊れ物に触れるように亜美の頬に手を添え、指先でくちびるをなぞり、ゆっくりと顔を近づける。

そっと亜美は目を閉じた。

大気は亜美の唇にそっと自分のそれを――重ね合わせた






まずは、ここまで読んでくださってありがとうございます。
グダクダでごめんなさい。

うちの大気さんと亜美ちゃんやっとくっついてくれました。
なんかベタな感じになりましたが…

書いてるときに大気さんが暴走してなかなか大変でした(笑)
亜美ちゃんに告白するタイミングが道ばたになりかけて焦りました。

大気さんは紳士なのでムードを考えるだろうと思っておうちまでガマンしてもらいました。
これからラブラブになっていく予定です。



目次
Top
[*prev] [next#]






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -