大気×亜美 | ナノ




変わらない碧

何度やっても感じる緊張感と高揚感。
当然、同じであっても、まったく同じものなどあるはずもないので当たり前なのだが、それでも今日はより一層の決意を固める。
目を閉じて、ゆっくりと、深呼吸をひとつ。
思い描くのは、たったひとりの、大切な人の、笑顔。
「みなさん!開演まであと十分です!」
スタッフの声がかかり、大気はゆっくりと目を開く。
「はい。わかりました」
時計を確認するとちょうど17時51分になったところだった。
ポンと肩を叩かれて、そちらを見ると星野と夜天だった。
「準備は出来た?」
「えぇ、もちろんです」
「おだんごからちゃんと会場入りしたって連絡があったぜ」
「ありがとうございます」
大気が礼を言うと二人はニッと笑顔を見せる。

「開演五分前です!」
スリーライツや、スタッフ全員が円陣を組む。
「それでは!泣いても笑っても今日がファイナルです!怪我のないように!後悔のないように!最高のライブにしましょう!」
星野が声をかけて、全員で気合を入れる。
今日はスリーライツのアルバムタイトルツアーのファイナルだ。

会場の照明が消えた瞬間、歓声が一気に大きくなる。
「わぁ!はじまるよ!」
「やってんくーーーーーん!!」
「美奈子ちゃん…」「美奈子ちゃん…」
客席には当然彼女たちがいて、その中で亜美は黙ってステージを見つめている。
ステージはまだ幕で覆い隠されており、そこに映し出される今回のライブツアーの映像に会場のボルテージが上がっていく。
(はじまる…)
こんなにもドキドキするのは、スリーライツのライブだからということだけでは、ない。


『最終日のライブ、観に来てくれませんか?』
忙しくて、同じ家に住んでいるのに会えていなくて、ライブツアーの遠征先からの電話だった。
『誰よりも、亜美に観てほしいんです』
電話越しに、はっきりと言われて、その声音がとても真剣だったことに、驚いたのを覚えている。
チケットはファンクラブ先行で入手出来ていたので、もちろん言われなくてもそのつもりでいたが、大気の言葉に――電話越しで見えてはいないけれども――こくりと頷いた。
「はい。必ず、行きます」
そうこたえると、とても嬉しそうに『良かったです』と言ったのが、印象的だった。

亜美との電話を終えた大気はそのまま隣り合っている星野の部屋をノックした。
「はいはーい。っと、大気」
「すみません。起こしてしまいましたか?」
「いや、ちょうどおだんごと電話し終わったところだったよ。どうしたんだ?そんな深刻な顔して」
「ライブのセットリストについてなんですが」
ライブの曲順はいつもスリーライツの三人で話し合って決めてからスタッフに相談することがいつものやり方だった。
アルバムツアーだと、メインをアルバム収録曲にして、ライブに外せない楽曲を入れる。
あとはカップリングや過去の曲を何曲か変えつつ、ツアー中に発表されたドラマやCMのタイアップ曲が途中から追加されることもある。
「私のソロパートのところ、最終日だけ変えたいんですが構いませんか?」
「最終日?あぁ、そうか。なるほど。分かった。スタッフのみんなにも言ってみるけど、誰も反対しないと思うぜ?」
スリーライツとしてのパフォーマンスはもちろんだが、それぞれソロパートもしっかりと設けられていて、ひとりひとりの個性を引き出したステージを見事に作り上げることで有名だった。
大気が提案したのは、そのソロパートでの自分の楽曲を最終日だけまったく変えるというものだった。
「そうだといいんですが」
「で?何するんだ?」
「何、とは?」
「お前がわざわざそう言うってことは、ただのソロじゃねーんだろ?」
星野がニッと笑うと、大気はくすりと笑って頷いた。
「もちろんですよ」


幕が落ちアルバムの一曲目であるアップテンポな曲調のイントロが流れはじめ、赤、紫、緑の照明がステージ上を照らしスリーライツのシルエットが浮かび上がると、割れんばかりの歓声が響いた。
立て続けにアップテンポな曲が三曲続いてMCに突入した。
はじめのあいさつを兼ねた自己紹介以外での、MCではリーダーの星野がメインで話をするのがいつものパターンだ。
『そういや今回は持ち込んだサイリウム使ってる奴いないよな?ダメだぞ?』
星野が言うとみんなが手にしているサイリウムをかざす。
『今はいろんな色で光ってるけど俺の一声で一斉に色が変わるからな?』
星野はそういうと少し考える素振りをして見せた。
『やっぱここはコレしかないよな!“赤”!』
そう言うと会場内で色とりどりに光っていたペンライトが一気に赤色に変わった。
今回のライブツアーでは市販やこれまでのグッズにもなっていたサイリウムの持ち込みは禁止となっており、もちろんグッズの定番となっているサイリウム販売も今回はなし。
その代わり、各会場の座席に準備されていて、それは会場内のコンピューターで管理されている。
曲に合わせて色とりどりに光ったり、単色に光って会場内を染める。
ライブの演出効果を高めるための初の試みだった。
『おぉ、すっげ!めっちゃくちゃ綺麗じゃん!二人もやってみろよ!』
『いや、いい』『結構です』
『なんでだよ!?』
星野が言うと二人はまったく興味なさそうな素振りを見せ、会場から笑いが起こる。
『わかったよ。やればいいんでしょ?っていうか何色に光るの?三色とか少なすぎない?』
『十色って説明を受けたでしょう?』
『そうだったっけ?それじゃあ“赤”はさっき星野が言っちゃったからイメージカラー関係なくていいよね――“黄色”』
すると会場が一面黄色に染まる。
『んじゃ、次は大気だな』
『では“青”ですね』
そう言うと一気に青に染めあげられる。
『おぉ、すげーな。この三色見ると久々にあのスーツ着たくなっただろ?』
『別に』『いいえ』
『お前らな』
彼らがデビュー当時によく着ていたカラースーツは最近ではほとんど着ているところをみなくなったが、それでも赤、青、黄の三色イメージは強い。
とは言え、現在の彼らのイメージカラーは星野のみデビュー当時のままの赤で、大気が紫、夜天が緑となっている。


『それじゃあ、次の曲を聴いてください――“流れ星へ”』
こんなに早くにこの曲を披露すると思っていなかった観客席が一瞬ざわめくが、イントロが流れだすと一瞬で静かになり、三人のハーモニーが会場に響き渡る。
未だにファン投票が行われると『流れ星へ』は一位になるほどの人気曲だった。
ライブでやらない事が何度かあったが、そのたびにアンケートに「流れ星へが聴きたかったです」と書かれることが非常に多かったため今ではもはや定番曲となっている。

滞りなく、順調にライブは進行していく。
そして、スリーライツの全員が一度ステージからいなくなり、スクリーンに今朝の会場入りからの映像が流れだし会場が沸き立つ。
『おはよーございます』
『お早うございます』
『おふぁようございます…』
車から降りてきた三人に客席から黄色い声が上がる。
「きゃーーーっ!夜天くんかーわーいーいっ!」
美奈子がきゃっきゃとはしゃぐ中、亜美はスクリーンの大気を見つめて頬を染める。
(大気さん、素敵)
スクリーンには楽屋に入ってからの様子を映していた。
『大気、それ取って』
『それってどれですか』
『大気の前にあるお菓子』
『自分でも届くでしょう…まったく…』
そう言いながら夜天にお菓子を手渡す。
『ありがと、お礼にひとつあげるよ』
『結構です。別に夜天が買ってきたわけじゃないでしょう』
その時、楽屋の扉が空いて星野が戻ってくる。
『会場やっぱすげーな。ってオイ夜天!それ俺が買ってきたお菓子じゃねーか!勝手に食べるなよ!』
『大気が食べていいって』
『言ってませんよ』
『夜天、半分返せよ。そのお菓子、最近の俺のお気に入りなんだぞ』
星野のこの発言に寄って彼のファンからそのお菓子がたくさん送られてきて、さらにそのお菓子の宣伝効果に貢献したことによりCMが決まるのはまた別の話である。
『あなた達、ちゃんとお弁当も届くんですよ?』
『昨日と同じやつでしょ?』
『今日は最終日だから社長が奮発してくれるって言ってただろ?』
『そうだった?』
『そうですよ』
『そっか。楽しみ』
『だったら、そのお菓子返してくれよ』
『あ、うん。僕が買ってきたやつ食べていいよ』
『いいのか?サンキュ』
『ちゃんとお弁当食べられるんですか?』
『おう、食べる』『うん、食べる』
三人のやり取りに会場のあちこちから笑いが聞こえ、亜美たちもくすくすと笑う。
三人が一緒に暮らしていた頃にはよく見られた光景で、離れて暮らすようになっても彼らの関係が変わらないことがよく分かる。
映像は進み、登場時に着ていた衣装に身を包んだ三人が現れる。
スタッフと円陣を組んで『それでは!泣いても笑っても今日がファイナルです!怪我のないように!後悔のないように!最高のライブにしましょう!』という星野の掛け声が止むと、会場から割れんばかりの拍手が起こり、スクリーンの映像が消え、会場が暗闇に包まれる。

そして、ファッションショーのような出で立ちの夜天が登場し、ソロパートが始まった。
『これいいでしょ?最終日のためだけにわざわざ作ってくれたんだ』
そう言って衣装を見せびらかすようにくるりと回った夜天に「かわいい!」「かっこいい!」の両方の歓声が投げかけられた。
美奈子は終始はしゃいでいて、楽しそうだった。
『まだまだライブは続くから楽しんで行ってよね』
そう言ってウインクを残して夜天ははけていった。
『俺も夜天に負けてなれねーなっ!』
そう言って現れた星野に会場が一瞬静まり返った。
今回のツアーでのソロパートはトリを星野が飾るのが暗黙のルールとなっていたため、会場にいた全員が次は大気の番だと思っていたのだ。
『てっきり大気だと思ってただろ?はっずれ〜』
星野がニッと笑う。
『みんな!しっかり俺についてこいよな!』
その掛け声で一気に会場が盛り上がった。
星野のライブパフォーマンスはこれまではギターテクニックを披露するものだったが、今回はベーステクニックを披露した。
『ギターとドラム以外も出来るんだぜ?』
そう言うと客席から「かっこいいっ!」の声が上がる。
そして星野はソロ曲を歌いあげると『んじゃ、最後は大気、頼んだぜ!』と言って夜天の方にはけていった。
「ったく、カッコつけちゃって」
「とか言いながら嬉しそうじゃない?うさぎったら」
「なっ!ライブが楽しいからだもんっ!星野がかっこいいからとかじゃないもんっ!」
「うさぎったら素直じゃないわねぇ」
「星野くんかっこいいわねぇ。でもあたしの夜天くんの方がかっこいいけどね」
亜美は小声で話す三人の会話を聞きながらも、大気のソロパートへの緊張で会話に入っていくことはできなかった。
「亜美ちゃん」
そんな亜美にまことが小さく名を呼ぶ。
「ひゃっ」
「いよいよだね」
「っ、うん」


『今日のソロパートは亜美のためだけに歌います』
そんな一文が書かれたメールが届いたのは、今朝だった。
「え?」
突然のことに驚いてメールを三度読みなおした。
思わず電話しそうになったが、ライブ当日で忙しいのにそんな迷惑をかけるわけにはいかないので、思いとどまった。
どういう意味なのか、わからなかった。
ライブは会場に来ているファン全員のためにあるものなのに、と思った。
そしてふと、着信と他にも何通かメールがきていることに気づいた。
「あ…!」
それを読んでから気付いた。
今日が自分の誕生日だったことを。
昨夜は疲れていたからか珍しく早くに就寝したため気付けなかったようだ。
着信相手は大気で入っていた留守録を聞くと『お誕生日おめでとうございます』と言ってくれていた。


照明がステージではなく、そこから伸びた花道の先にある円形になっているステージを照らす。
そこに大気のシルエットが浮かび上がる。
『自分から言い出したとは言え、やはりソロパートの最後というのは、緊張しますね』
そう言ってふっと微笑む大気に亜美はドキリとする。
『夜天や星野のように派手なパフォーマンスは期待しないでくださいね?』
冗談めかしてそう言うと、スッとスタンドに立ててあったエレアコギターを手にした。
それを見た会場がざわめいた。
スリーライツのこれまでのライブのソロパートで弾き語りをしたことがあったのは星野だけだ。
大気の弾き語りはライブ初である。
『それでは、聴いてください――“変わらない碧”』
大気の言葉で会場内のサイリウムがすべて青に染まる。
この曲は新しいアルバム曲ではなく、スリーライツがキンモク星から戻って再び芸能活動を再開した際に、発売された復活記念アルバムに収録された大気のソロ曲だった。
これまでもちろんライブなどで披露されたことはあったが、大気が弾き語りをするのは楽曲制作以来はじめてのことだった。

大気がギターを爪弾き、しっとりと歌い上げていく。
会場がその歌声に引きこまれていく。

「会場すっごい静かだね」
「大気がエレアコ弾いてるのも初出しだもんな」
「星野はボケーっと見てないでさっさと着替えなよ」
「わかってるよ」
次の衣装に着替えた夜天と、着替え途中の星野は会場を映し出しているモニターを見ていた。
今回、最終日が亜美の誕生日だということで、大気が弾き語りをしたいと言い出し、事情を知っている星野や夜天、事務所の社長はもちろん、事情を知らないスタッフの誰も反対しなかった。
ただ、大気だけの演出を変えてしまうと変に勘ぐるファンがいては厄介だからと、星野と夜天の演出も変更した。
こうすればライブツアー最終日だけの特別な演出だととってもらえるだろうという提案を星野がして、夜天も大気も賛同した。

ギターにのせて、大気の柔らかな声が会場にしっとりと響き渡る。
間奏に入り、ふと大気が閉じていた瞼をあけて、一瞬、とある一点を見つめ、ふっと微笑んだ。
「っ!」
目が合ったと感じたのはきっと気のせいではないだろう。
『今日のソロパートは亜美のためだけに歌います』
彼がたった一人の最愛の人に向けて歌っていることを客席内で知っているのは、本人である亜美と、四人の友人だけだ。
こんなに大きな会場で、たくさんの人の前で、こんなに素敵なプレゼントをもらえるなんて、とても贅沢な誕生日だと思う。
「ーっ」
気がつけば視界が滲んでいて亜美は驚いて目元を拭う。
ふと背中と頭にぬくもりを感じると、レイとまことが寄り添ってくれていた。
「良かったわね。亜美ちゃん」「良かったね。亜美ちゃん」
ふたりの言葉に小さくこくりと頷いた。
うさぎと美奈子も優しく亜美を見つめていた。
『ありがとうございました。ではまた後ほどお会いしましょう』
大気がにこりと笑顔を見せて暗転する。

「大気。まだ終わりじゃねーぞ」
急いで次の衣装に着替えようとしている大気に星野が声をかける。
「言われなくても分かってますよ。すぐに着替えます」
「手応えは?」
「そうですね。ありましたが、泣かせてしまいましたね」
悲しみからの涙でないとは言え、すぐに抱きしめることが出来ないところで彼女の涙を見るのは、少しばかり切ない。
「良かったじゃん」
「泣くほど感動してくれたってことでしょ?」
「そうだといいんですがね」
「大丈夫だよ。んじゃ、残りも頑張ろうぜ?」
「うん」「はい」
星野の声で気を引き締める。



「かっこ良かったわねぇっ!!」
「うんうん!すごかったねぇ!!」
ライブが終わって火川神社に戻ってきた五人はレイの部屋にいた。
美奈子とうさぎが興奮した様子ではしゃいでいる。
「ふたりともさっきから興奮しすぎよ。少し落ち着きなさいよ」
「そうだよ。気持ちも分かるけどさ。ね?亜美ちゃん」
「え?えぇ、そうね」
亜美がそうこたえると美奈子がニヤリと笑う。
「ふっふっふっ…亜美ちゃんは、この後大気さんとあっまーい夜を過ごすんだもんね?」
「美奈子ちゃんは年々発言がただの危ない人になってきてるけど、なに?夜天くんとケンカでもしてるの?」
「ちょっとまこちゃん!どういう意味よ!ケンカなんかしてないわよ!毎日ちょーラブラブよっ!愛の女神を何だと思ってるの!」
「ごめんごめん。つい」
あははと笑って、雄一郎がいれてくれたほうじ茶をすすって、自分が作ってきた栗まんじゅうをひとつ食べる。
「にしても、大気さんの弾き語りすごかったね」
「ホントよね。あんなにしっかり聴かせるパフォーマンスはじめてよね」
うさぎとレイが言うと、亜美の頬が淡く染まる。
「あの曲って亜美ちゃんをイメージした曲なんだよね?」
「え、あ、うん」
恥ずかしさからみんなの方を見られずに、ぽそりともらすと四人は優しく微笑む。
「ライブでひとりのために歌うとかっ!あたしも夜天くんにやってほしいっ!」
「あ、あたしは別にいいけどっ!」
「星野くんはそもそもソロ曲がうさぎのための曲でしょ…」
「愛だよなぁ」
そんな話で盛り上がっていると、部屋の外から雄一郎が亜美に声をかけた。
「大気くんが来ましたよ」と。

「それじゃあね、亜美ちゃん」
「大気さんとのラブラブナイ「美奈子ちゃんうるさい。これ栗まんじゅう良かったら二人で食べて」
「ありがとうまこちゃん」
「このほうじ茶と合うと思うから、良かったら」
「ありがとうレイちゃん」
「亜美ちゃん」
「なぁに?うさぎちゃん」
「今日は大気さんにたくさん甘えなきゃダメだよ?」
「え?」
「だって亜美ちゃん、ワガママ言って大気さんを困らせたくないからって平気なフリしてるでしょ?」
「そんな、こと…」
「ない?ホントに?」
「……ある、けど」
うさぎのまっすぐな瞳に嘘をつくのはどうしたって苦手で、亜美は小さく肯定する。
「だったら、お誕生日の今日くらいは、ワガママ言ったっていいんだよ?大気さんは絶対に迷惑だなんて思ったするような人じゃないでしょ?」
「うん」
「頑張ってね。亜美ちゃん」
「えぇ、ありがとう」
そう言ってふわりと微笑む亜美にうさぎ達も笑顔を見せる。

「「「「お誕生日おめでとう、亜美ちゃん」」」」
「みんな、ありがとう」
亜美はみんなに見送られて火川神社の階段をトントンと降りていくと、長身の人影が見えた。

「大気さん」
先ほどのうさぎの言葉を思い出して、そのまま大気に抱きついた。
「っ!?」
亜美の行動に驚きながらもしっかりと彼女を抱きとめる。
「ライブ、素敵でした」
「ありがとうございます」
「お礼を言うのはあたしの方です。あんなにたくさんの人の前で…っ」
なんと言えばいいのかわからず言葉に詰まる亜美の髪を優しく撫でて、大気はくすりと微笑む。
「どうしても、私の気持ちをあの場で亜美に伝えたくて我侭を言ったんです」
「え?」
「たくさんの人の前で、たったひとりのために歌うなんて、そうそう出来ることじゃないでしょう?」
「はい」
亜美はこくんと頷く。

「私の想いが亜美に伝わってくれていたら、それだけで今日のライブは大成功です」
亜美にしか見せない笑顔で言って、ギュッと亜美を抱きしめる。
「お誕生日おめでとうございます。亜美」
「ありがとうございます。大気さん」



いつか感情が先走った
くだらないボクの声が
大事な想いまで涙で濡らしても
空に飛んでった意地っ張りが
一瞬で溶け出したら
あっけなく青い空が今日も広がる
ここがハジマリ










亜美ちゃんお誕生日おめでとうっ!
と、いうわけでいつか書きたいと思っていたライブで亜美ちゃんのためだけに歌う大気さんを書けました。
最後に抜粋した歌詞がとても大亜美のイメージなので、私の中でLiSAちゃんの「変わらない青」という曲は大亜美ソングなんです。
私の亜美ちゃんの髪色などに使う漢字が“青”ではなく“碧”なので、作品タイトルもこうなりました。
少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。



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