大気×亜美 | ナノ




Key

「はい、亜美ちゃんこれ巻いて」
スマートフォンをいじっていた美奈子が前触れ無く差し出してきたものを条件反射で受け取った亜美は怪訝な顔を見せた
「え?なに、これ?」
「い・い・か・ら!早くしないと帰ってきちゃう」
「え?でも、これ、って」
どう見ても人に巻くものではないと思うのだけれど、と言おうと顔を上げたらスルリとそれを奪われる
「仕方ないから手伝うわ。ヴィーナスラブミーチェーン!」
「えぇぇっ!」
突然必殺技名と共にシュルシュルとそれは亜美の身体に巻き付いた。
「はいできあがり、っと」
「ちょっと美奈子ちゃん!これ解いて…っ」
「だーめっ♪」
女神の笑顔でそう言った美奈子はポケットから何やら取り出すとじっと亜美を見つめる
「なに、それ?」
「見てわかるでしょう?」
「わかるけれど……どうするの?」
後ろに下がろうとしたものの、先ほど巻きつけられたものをくいと引っ張られてその場に縫いとめられたかと思うとそのまま背中に腕を回されてしまう
「こうするのよ?」

――カチャリ

「……嘘、でしょう…」
いつもの悪ふざけの冗談にしては、いくらなんでもタチが悪すぎる
「そんなに心配しなくてももうすぐあけてもらえるから、あと5分くらい我慢してね?ちなみにそれただの南京錠とリボンじゃないからちょっとやそっとじゃどうにもできないからっ☆それじゃあね♪」
「ちょっと…っ!美奈子ちゃんっ!!」

――その頃

「はい、これあげる」
マンションの駐車場についた夜天がポケットから取り出したものを大気に手渡す
「なんですか?」
「見てわかるでしょ?鍵」
「なんの、ですか?」
家の鍵なわけもなく、車の鍵でもない、小さなそれを大気は不思議そうに見つめる
「それは家に帰ってのお楽しみだよ。っと、来た」
「夜天くーん、お仕事お疲れ様ーっ!お待たせ〜っ」
「愛野さん?」
「あ、大気さんもお疲れ様、ほら早くしないと逃げられちゃうわよ?」
「は?」
突然の美奈子の登場には今さら驚きはしないが、言葉の意味がわからない
「いいから早く家に戻りなよ。僕も星野も今日は帰らないからさ」
「なにを?」
「『お誕生日おめでとう』ってことだよ」
夜天が言うと大気は目を丸くする
「あ…」
「呆れた…本気で忘れてたの?」
「忙しかったもので…」
「やれやれ……家に帰れば僕らからのプレゼントがあるはず」
「はず?」
「急がないと本気出すと速いわよ?」
美奈子の言葉に大気は眉をひそめる
「……亜美に何をしたんですか…」
「いいから早く行きなってば」
夜天が言うと大気は駆け出す
「夜天も愛野さんも今度のテストの時面倒見ませんからね!」
そんな捨て台詞を残すことを忘れない

一階に停まっているエレベーターに乗り込み停止階を押す
扉が開くと部屋に急いで鍵を開けて中に入った瞬間――部屋に満ちていた冷気にゾクリと震える
「っ!?亜美っ!」
靴を脱ぎ捨て揃えることもそこそこにリビングに続く扉を開けると、そこは真っ白だった
「亜美っ!どこですかっ!」
「え?大気さん?」
部屋の中から聞こえた声に安堵するが、一体この部屋で何があったというのだろう
美奈子は一体何をしたのだろうと、思っているとゆっくりと視界が開けてくる
大気の目に飛び込んできたのは――
「マーキュリー?」
「あーっ、ハイ…いえ…これにはわけがっ」
慌てたように言うのはなぜだかセーラー戦士に変身した恋人だった
一瞬は驚いた大気だったが彼女の状況と先ほどの夜天たちとの会話でなるほどと合点がいく
「そういうことですか……まったく…」
「ごめんなさい」
自分が叱られたと取ったのかシュンと項垂れるマーキュリーの髪をくしゃりとなで、変身を解くように促すと、素直に変身を解く
「あの…」
「愛野さんにやられたんでしょう?」
「はい…なんとか外せないかと頑張ってみたんですけど……」
大気はふむと頷くと、ポケットに手を入れさっきもらった鍵に少し触れ、そのまま手だけを出しそっと亜美を拘束するピンクのリボンを容易にほどけなくしている南京錠に触れる――キンと冷気が伝わる
「っ!?」
「限界まで冷やせば液体窒素でやるみたいにならないかな…って、思ったんですけど…」
ダメでしたと言った亜美をぎゅっと抱きしめるとポケットから取り出した鍵でそれを解錠する
「えっ」
「まったく、こんなものまで使うとは何を考えているんですかね…」
大気は呆れたように言うとそれらをポケットにしまう

「あのっ、大気さん」
「なんですか?」
「リボンも解いて欲しいんですけど……っ」
美奈子のヴィーナスラブミーチェーンでがんじがらめになったリボンは南京錠を外しただけでするりとほどけてはくれなかった
「そう、ですねぇ…」
大気はじっと亜美を見下ろす
「あ、あのっ」
困ったような瞳の、必死なその表情がたまらなく可愛いと思いながらフッと微笑む
「プレゼント、だそうですよ?」
そう言うとサファイアが揺れる
「そんっ…なの」
逃げようとする彼女のリボンにするりと指を絡ませると
「最高の誕生日プレゼントですよ?――亜美」
くいと引き寄せるとゆっくりとくちびるを重ねた




お読みいただきありがとうございます
大気さんお誕生日おめでとうございます
というわけで、定番ネタの「プレゼントはあ・た・し」ネタです
本当は違うお話を書こうと思っていたんですが、降ってきたんです!
この続きは――みなさんのご想像にお任せしたいと思います
では、また



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