大気×亜美 | ナノ




女の子の秘密

「ふぅっ」
ぱしゃんと揺れる水面を見つめて小さくため息をつく。
ここはライツマンションの浴室。

(どうしよう…このあと…)

――コンコン

「っ!?」
「亜ー美ちゃん」
「美奈子ちゃん?」
「オジャマしてもいい?」
「う、うん」
亜美は浴室の鍵を開ける。

「ありがと」
ゴソゴソと衣擦れの音が聞こえ、少しして髪をアップにまとめた美奈子が入ってくる。
掛け湯を済ませた美奈子がちゃぷんと湯船に入る。
「夕方からお風呂ってちょっと贅沢な気分になれるわよね」
「えぇ、そうね」
「……ねぇ、亜美ちゃん」
「なぁに?」
「大気さんから逃げてきたんでしょ?」
「っ!…どうして…」
「大気さんがリビングでしょぼくれてたから、なんとなく」
「〜っ///」
「なんで逃げたの?」
「……」
「亜美ちゃん?なんで逃げたの?」
「だっ…て…」
「うん」
「…いきなり……」
「うん」
「…………〜っ///」
(大気さんどんな事したのかしら?)

大気と亜美が“そーゆー事”を済ませたのは雰囲気でみんな分かっていた。
だからこそ美奈子は不思議に思った。
どうしてお風呂にまで逃げてきたのかが。

「美奈子ちゃん…は」
「ん?」
「は、恥ずかしくない…の?」
「亜美ちゃんは恥ずかしいの?」
「え?」
「どうして?」
美奈子が不思議そうに聞いた。

「……っ」
「まぁねぇ、あたしも最初の頃はちょっと恥ずかしかったけど、でもね、愛されてるなぁって思わない?」
そう言って微笑んだ美奈子は綺麗で、亜美は彼女に言われた事を考え───ようとしてやめた。

いつもより甘い大気の声も、指も、瞳も――亜美にしか見せないものだ。
――それだけで。

「ねぇ、亜美ちゃん」
「えっ?」
大気の事を考えていた亜美は、いつの間にか至近距離にいた美奈子に少し驚く。
「大気さんに抱かれるのイヤ?」
「っ!?」
「イヤ?」
「ーっ…嫌、じゃない...けど…恥ずかしいの///」
「ふーん。なるほどねぇ。それで逃げてきたのね」
「っ///」
「あたし、大気さんが亜美ちゃんを欲しくなる気持ち分かるわよ?」
「え?」
「好きな女の子がそんなに赤くなって、潤んだ瞳で自分を見つめたら“欲情”するわよ?」
「そんな事…っ///」
「大アリよ?」
ゆっくりと美奈子の顔が亜美に近付く。

亜美は湯船の隅にいるため、身を引く事ができない。
「亜美ちゃん」
「美奈子ちゃ…っ」
「かわい♪」
「ちょっ///」
あと少しで二人の唇が触れ合う瞬間

「おっじゃましま――」
ドアが開き、うさぎがひょっこり顔を覗かせ、亜美と美奈子を見て
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
大絶叫を響かせた。

「おだんご!?」
悲鳴を聞いた星野が駆けつけ、脱衣所のドアを開けようとする。
「いやぁぁぁぁぁ!来ないでよ!ばかぁ!」
「いきなりそんな叫び声聞いたら飛んでくるだろ!?」
「なんでもないわよ!」
「なんでもなくて叫ばねえだろ!」
「美奈子ちゃんが亜美ちゃんにキスしようとしててちょっとビックリしただけだもん!」
「「「はぁ!?」」」
うさぎの発言にライツ三人が反応する。

「ちょっと美奈!何してんのさ!?」
「亜美!?大丈夫ですか?」
「お、おいお前ら落ち着けよ」
「無理!」「無理です!」
「馬鹿!!おだんごが裸なんだぞ!」
「美奈もだよ!」「亜美もです!」

外の空気が怖くなったうさぎはライツ三人のやりとりを無視して、浴室に入ると美奈子と同じように湯船に入る。
「もぉ、美奈子ちゃんてばダメだよ?」
「うさぎちゃんがおっきい声出すからよ!」
「二人が仲良くお風呂に入ったって聞いたから、あたしもおじゃましようと思って開けたらあんなシーンだったら、あたしじゃなくても叫んでるよ!」
「いやぁ、つい」
「もぉ〜っ」
亜美は唖然とうさぎと美奈子のやりとりを見ていた。

「にしても…」
「大気さんて意外と…」
突然大気の名前を出した二人の視線が亜美を見つめる。
「え?」
美奈子が亜美の顎をクイッと持ち上げ、うさぎが鎖骨をつぅっとなぞる。
「っ!?」
「「キスマーク」」
「っ///」
「制服で見えるか見えないか…すーっごくキワドイ場所」
「つけられてそんなに時間はたってないわね」
「あ、そっか。亜美ちゃん逃げてきたんだ?」
「っ///」

「星野君は見えるところにつけそうよね」
「夜天君もじゃないの?」
「夜天君は時と場合を考えてくれるわよ?撮影がある時は絶対につけないし」
「キワドイとこにつけたりしない?」
「へぇ。星野君はキワドイとこにつけるのね」
「えっ/// ちがっ///」
「赤くなって否定しても説得力ゼロよ?」
「うっ/// 亜美ちゃ〜ん!美奈子ちゃんがいじめるーっ!」
うさぎが亜美に抱きつく。
「きゃっ」
「おぉっ!これが百合ってやつね!」
立ち上がり美奈子が指で枠を作り、そこに亜美とうさぎをおさめ、写真を撮るふりをする。

「さっき亜美ちゃんにチューしようとしてた美奈子ちゃんに言われたくない!」
「おでこによ?お・で・こ☆」
「いーや、あれはくちびるにする気マンマンだった!」
うさぎも立ち上がり美奈子と向き合う。
「やーね。キスくらいで」
「うわっ!なにその外国な発言!」
「ふっふーん。キスなんて挨拶よ?」
「仮にそうだとしても、お風呂でチューはしないでしょ!」
「もぉーっ、うさぎちゃんもあの亜美ちゃんを見れば、チューのひとつやふたつしたくなるわよーっ♪」

「もーっ!二人ともいい加減に――っ!?」
立ち上がった瞬間、亜美は目の前がフッと暗くなり倒れそうになる。
「「亜美ちゃん!」」
うさぎと美奈子が亜美の体を抱き止めた瞬間

――バンッ!

「「「何してるの!あなた達!!」」」
「「へ?」」
「ーっ?」

「まったく…外で聞いてれば…」
「ファイター」
「イタズラが過ぎるんじゃない?」
「ヒーラー」
「…………」
何も言わずに自分たちを見つめるセーラースターメイカーの視線が痛い…。
「「…メイカー……」」
「こっちの姿の方が抵抗ないでしょう?」
「「は、はい」」
メイカーはどこからか取り出したバスローブを手に浴室に入ると、うさぎと美奈子に支えられた亜美をすっぽりくるむと抱き上げる。
「あとは任せたわ。ファイター、ヒーラー」
「「えぇ」」

脱衣所を後にして部屋に戻ったメイカーは、変身を解くか少し迷いそのままベッドに腰掛ける。
「亜美」
腕の中でぐったりする亜美を抱きしめる。

――あつい

「ーっ、ぁ」
「大丈夫?」
「メイ...カー?」
「待ってて?水持ってくるから」
「でも」
「イイコにしててね?」
ベッドに亜美を下ろすと部屋を出て行き、浴室に行き洗面器を拝借し、氷と水を入れタオルを浸し、グラスに氷水を入れミネラルウォーターのペットボトルを持って部屋に戻る。

「おまたせ」
「あ、いえ…」
亜美の額に冷たいタオルをのせる。
「ひゃぁっ…」
「水分も摂った方がいいわね。はい、飲める?」
「はい、ありがとうございます」
こくこくと氷水を一気に飲み干す。
「長く入っちゃってのぼせたのね」
空になったグラスに水を入れると、亜美は半分ほど飲みほぅと息をつく。

「うーっ…」
「お風呂になんか逃げこむから」
「だって…」
「仕事の電話かかってきた隙に逃げられるとは思わなかったわ?」
「……っ」
「それで?」
「?」
「愛野さんにキスされたの?」
「はい?」
「あの子達の会話、丸聞こえ」
「〜っ///」
「されたの?」

ベッドに腰掛け、自分の方を見つめて微笑むメイカーの笑顔が綺麗すぎて…こわい。
「されてません」
「されそうにはなったのよね?」
「いや…それは…」
「それは?」
「えっと…お、女の子同士...ですし…?」
亜美は言い訳にならない言い訳をしどろもどろでする。

「そう――そう...なるほど……ね」
メイカーは小さくポツリとつぶやくと、亜美の顎をくいと上げそのまま彼女のくちびるを奪う。
「っ!?」
突然の事に驚く亜美を難無くベッドに押し倒すと、そのままチロリと舌を差し入れる。
「んっ!」
逃げようとする亜美の舌を捕え口腔内を犯す。
「ふぁっ…はっ...ぁん…〜っ///」
のぼせたせいで朦朧とする意識が亜美の思考を鈍らせる。
(大気さんはメイカーで…、メイカーは大気さんで…、えっと...今、あたしにキスしてるのは...どっち?)

「はっ...ぁ」
「“女の子同士”よね?亜美」
「っ」
バスローブをぱさりとめくられる。
「やっ!」
「どうして?“女の子同士”ならいいんでしょ?」
くすりと妖艶な笑みを見せるメイカー。

「ちがっ...う」
「大丈夫よ?優しくしてあげるから...ね?」
「……っ///」
「可愛いわ、亜美」
より一層、笑みを深くしたメイカーは再び亜美のくちびるを塞ぐ。



その後、メイカーにめちゃくちゃにされたあげく、変身を解いた大気においしく戴かれたのは言うまでもない。
「も、もぉっ、無理です…。ホントに...っ///」
「まだまだですよ?」






お読みいただきありがとうございます。

突発的に浮かんできました。
思ってたより、メイカーさんがドSになりました。

亜美ちゃんは大気さんに押し倒されそうになったところで、彼の携帯が鳴ってそれを奪って、通話ボタンを押して大気さんに押し付けてお風呂に逃げ込んだんだと思います。



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