大気×亜美 | ナノ




ランチタイム

十番高校
昼休みの屋上で輪になった四人の少女と三人の少年。
彼らは「いただきます」の掛け声と共にお昼を食べ始める。

うさぎと美奈子は母親お手製のお弁当。
まことは自分で作ったお弁当。
スリーライツのメンバーは大気お手製のお弁当。
そして、亜美はいつものようにサンドイッチ。



「わぁ。まこちゃんの玉子焼きおいしそーっ!」
「ん?食べるかい?」
「いいのー?わーい!いっただきまぁーす」
そう言うと同時に、うさぎはまことのお弁当箱から玉子焼きを一つ取る。

「あーっ!うさぎちゃんずっるーい!あたしもまこちゃんの玉子焼き欲しい!ね、まこちゃん!あたしの玉子焼きと変えっこしよ?」
「うん。いいよ」
美奈子とまことは玉子焼きを一つずつ交換する。

「星野の唐揚げ一番おっきいやつもーらい!」
「あ?ちょっ!」
星野が反応するより早く、うさぎは彼の唐揚げを奪う。
「ふふーん。んむ。おいひーっ」
「おだんご!こーゆー時だけはやたらとはえーよなっ!そのミートボールを寄越せ!」
「やーだ!あーん。もぐもぐ」
「お前なぁ…」
うさぎはミートボールを口に入れ、もぐもぐと食べる。
一方、楽しみにしていた大きな唐揚げを奪われた星野は、これ以上うさぎに弁当のおかずを奪われまいと、彼女に少し背を向けて食べ進める。



「いつも思うんだけど、月野って絶対に自分が持ってきたお弁当の軽く二倍は食べてるよね?」
「そりゃあうさぎちゃんだもの。夜天君そのアスパラベーコンひとつちょーだい」
「美奈のたこさんウインナーと交換ね。しかも木野なんてあらかじめ大きめの弁当箱だしさ」
「普通のサイズにするとほとんどうさぎちゃんに食べられて、自分の分がなくなっちゃうし、高校に入ってからは美奈子ちゃんもいるからなおさらね」
「だってまこちゃんのお弁当おいしいんだもん!」
「それにしてもよく食べるよね…ってちょっと唐揚げまで取らないでくれる?」
「だっておいしそうなんだもん」
「……しょうがないなぁ…クリームコロッケと交換だよ」
「んっ。もぐっ」
「それと、もうひとつ」
「えっ?クリームコロッケもうひとつ!?」
「違うよ、そっちじゃなくてさ――ねぇ、水野」
夜天は亜美に声をかける。

「?」
突然、話を振られるとは思っていなかった亜美はきょとんと視線を夜天の方に向ける。

「水野っていつもサンドイッチだよね?」
「ん」
亜美はもぐもぐとサンドイッチを頬張ったままこくんと頷く。

「飽きないの?」

(あたしもちょっと気にはなってたけど…夜天君みたいに口に出して言った事なかったわねぇ。あぁ、唐揚げおいしい!)
(そーいや亜美ちゃんて中学の時からサンドイッチなんだよね。わぁ、すごくおいしそう)
(亜美ちゃんはみんなで一緒に食べるようになってからも変わらずにサンドイッチだもんなぁ)
(夜天、お前チャレンジャーだな)
(夜天…なんて事を)

夜天の一言に空気が固まる。

一方、聞かれた亜美は少し考える素振りを見せると
「んー?」
悩み始めた。


(今までサンドイッチに飽きるとか考えた事なかったわ。
 単語帳とか本を読みながらでも食べられるし…
 あたしでもわりと簡単に作れるし…
 具材を変えれば効率良く色々と摂取できるし…
 ……なんて答えればいいのかしら?)



「……夜天」
大気は自分の隣で何やら考え始めた亜美をそっと見つめ、元凶である夜天に静かに声をかける。

「なに?僕なんか変な事言った?」
この言葉に大気は少し考える。
「いえ、そう言うわけでもありませんが…亜美さんを困らせるのはいただけません」
「「そっち!?」」
思わず声を揃えて星野とうさぎがつっこむ。

「おーい?亜美ちゃーん?だいじょぶかい?」
一方のまことは亜美に声をかける。
「えっ?」
亜美ははっとして周りを見つめる。


「あ、えっと……ごめんなさい。飽きるとか考えた事なくて…」
亜美が申し訳なさそうに謝ると夜天が少し慌てる。

「いや、僕の方こそごめん。そんな悩ませるつもりじゃなかったんだ。
ただせっかくだから水野もお弁当にしてみんなとおかず交換すればいいのにって思ったんだよ」
「え?」
この言葉に亜美はきょとんとする。

「いや、おだんごの場合は交換つーか強奪だけどな」
「せーいーやー!」
「なんだよ?ホントの事だろ!」
それをきっかけにうさぎと星野は口喧嘩を始めるが、いつもの事なので他のメンバーは気にせず話を続ける。

「そうよ〜。あたしも亜美ちゃんとおかず交換したい!」
美奈子がそう言うと、まことも頷きながら言う。
「うん、そうだよね。確かにサンドイッチって食べやすいし、パンの種類とか具材を変えればいくらでもバリエーションは広がるけどさ、たまにはお弁当もいいもんだよ?」
「ん…」
そう言われた亜美は考え込む。

サンドイッチなら手間もそんなにかからないし、多少失敗しても挟んで誤魔化せるので朝から自分で作ったり、母が作ってくれたりするが、お弁当となると話は違ってくる。

母は仕事が忙しくて頼めない。
だからと言って自分で作るなんて事は到底無理だ。

「……」
「亜美さん」
大気は困ったオーラを発している彼女に優しく声をかける。
「大気さん?」
亜美はすがるような眼差しで大気を見つめる。

「何もそんなに難しく考えなくていいんですよ?
別に毎日お弁当にしなくても週に一、二回とかでいいと思います。
それくらいならお母様にも頼みやすいでしょう?」
「あ、はい」
亜美は恥ずかしそうに頷く。

「ねぇ、亜美ちゃん?」
まことが二人の“いい雰囲気”を邪魔するのを申し訳なさそうにしながらも声をかける。
「なぁに?」
「せっかくだし週に二回にして、そのうちの一回は自分で作ってみれば?」
「えぇっ!?そ、そんなの無理よ」
亜美は驚きつつも、手をぶんぶん振って否定する。

「え?そう?亜美ちゃんて結構できそうよ?」
なぜかまことではなく、美奈子がそう言う。

「えっ?なんで?」
「みんなでお菓子作った時とかに、亜美ちゃんてさりげない工夫するでしょ?」
「あぁ、そうだよね」
「へっ?」
納得したまことに反して亜美本人はなんの事かわかっていない。

「ほら!前にクッキー作ったときも、グラスの底の模様を使ってたじゃない?
あーゆーのあたしには無理よ!」
美奈子が自信満々に言うと、亜美が慌てる。
「あれはっ、昔ママに教えてもらったからで///」

「ねぇ、亜美ちゃんさえ良かったら、あたしが教えるからさ。やってみない?」
まことが楽しそうに笑いながら言う。
「ん…と」
亜美があわあわと戸惑うと、美奈子がいたずらっ子のように笑うと
「大気さんは、愛する亜美ちゃんのお弁当食べたいわよね?」
亜美を優しく見つめていた大気に話を振る。

「っ///」
真っ赤になる亜美を見つめ、大気はくすりと笑う。
「そうですね。自分で作ったお弁当よりも、愛する亜美さんの作ってくれたお弁当がいいですね」
「〜っ//////」

「ほーら、亜美ちゃん!大気さんもこう言ってるんだからさぁ」
「ねぇ?僕も美奈が作ったお弁当が食べたいんだけど?」
「夜天君っ///(きゅん)」

「ははっ。こうなったら徹底的にお料理修行しちゃおうよ?」

「う、うん/// よろしくねまこちゃん///」
「待っててね!夜天君!美奈子がんばる!」

「はいはい。期待してる。頼んだよ。木野」
「よろしくお願いします。木野さん」
「はい!任せてください!」



こうして亜美と美奈子の料理修行が始まるのでした。





「じゃあ早速今日の放課後にうちに来てよ」
「りょーかいよ!」
「えぇ。分かったわ」
「張りきってるね。ところで、そこのケンカップル早く食べないとあと十分もしないうちにチャイム鳴るよ?」
「放っておきましょう。そのうち終わりますよ。亜美さん良かったらひとつ食べませんか?」
「えっ?でもあたし何もあげられませんよ?」
亜美がそう言うと大気はくすりと笑い、彼女が手に持っていたサンドイッチにかぶりつく。
「うん。美味しいです」
「っ///」
「これで交換成立ですね」
大気は真っ赤になった亜美を見つめくすくす笑うと、箸でつまんだアスパラベーコンを差し出す。

「“あーん”してください?」
「う〜っ///」
「ほら?」
「あ、あーん/// むぐっ」
「どうですか?」
「〜っ/// おいしい、です///」



「夜天君!あたしもやって!」
「やだ」
「じゃあ、あたしがやる!はい“あーん”して?」
「……あーん。もぐっ」
「おいしい?」
「うん。おいしいよ」

この2カップルのラブラブっぷりを見ながらまことはぼんやりと浅沼の事を考えていた。
(今頃、お弁当食べてくれてるかなぁ?)



「ごちそうさまでした」





――キーンコーン…

「「あ゛ーっ!予鈴ーっ!」」
星野とうさぎの二人は目にも止まらぬ早さでお弁当を平らげてみんなの後を追って急いで教室に戻ったものの、少し遅れて先生に怒られたのは、また別のお話。






お読みくださりどうもありがとうございます。
大亜美多めの、夜美奈&星うさでした。
ほんのちょっぴり浅まこも入れました。
レイちゃんは学校違うから絡ませられないし、浅沼ちゃんも同じ理由で絡ませられない。
そういう意味では学校の話は難しいですね。

さて大気さんが「亜美さん」呼びだったのにお気付きでしょうか?
時系列でいくと『君の名を呼ぶのは』よりも前のお話だからです。

あっちで亜美ちゃんはお弁当を持ってるんですよね。
元々、サンドイッチからお弁当にする話は書きたかったので書いちゃいました☆

クッキー作りの話はSSの劇場版のお話です。

亜美ちゃんはやればできる子なので、いつか手作りのお弁当を大気さんにあげる日がきます!

次は……書きかけの雄レイを仕上げるつもりですのでしばらくお待ちください。



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