Fruits Basket | ナノ

▼ただいま

 午前8時17分
 いつもより少しだけ遅く目が覚めた亜美が朝風呂から出てくると、リビングから電話のコール音が聞こえた。
「もしもし。水野です」
『朝早くにすみません』
 慌てて電話に出ると、誰よりも会いたかった人の声が亜美の鼓膜を震わせた。
「大気さん!?」
『おはようございます。亜美』
 驚いている亜美に大気はどこか楽しそうだ。
「おはようございま、す?」
『どうして疑問形なんですか?』
 大気は現在、仕事で日本にはいないため驚いてしまったのだ。
 時差を考えると大気のいるところは深夜のはずだ。
『亜美はもう朝食は食べましたか?』
「いえ、まだです。今日は少し寝坊してしまって」
『おや、珍しいですね』
「寝る前に少しだけと思って、本を読み始めたら途中で止められなくなってしまって」
 亜美の言葉に大気がそれは良かったですとこたえた。
『それだったら、亜美』
「はい」
『会えませんか?』
「えっ?」
 大気の帰国は確か明後日だと聞いていたのに。
「大気さん。あの……」
 ほんの少し期待してしまった気持ちを確かめたいと思う。
『はい。ついさっき帰国したところです』
「長時間の飛行機でお疲れじゃないですか?」
『大丈夫ですよ』
「おうちの方がゆっくりできるんじゃ」
『家に帰っても星野と夜天の世話でゆっくりできないんですよ』
 でも、と言う言葉に大気はくすりと笑って、亜美と名を呼んで、勝手知ったる水野家の部屋番号を入力してインターホンを押す。
『えっ?』
「私は、誰よりも貴女に会いたかったんですよ?」
『大気、さん?』
「はい。開けてくれますか?亜美」
 慌てている様子の亜美に大気はくすくすと笑う。
『部屋の鍵、持ってますよね?』
「えぇ」
『じゃあ、部屋にはそれで入ってきてください』
「わかりました」
『お願いします』
 そう言うと通話が切られオートロックが解除される音が聞こえた。
 亜美の母から渡された鍵で水野家に入った大気はリビングに亜美の姿がないことに首を傾げた。
「亜美?」
 どこにいるのだろう?と思っていると背中にトンと軽い衝撃があった。
「おかえりなさい。大気さん」
「ただいま。亜美」
「それから」
 亜美がするりと大気の腹部に腕を回して、ギュッと力をほんの少しこめた。
「お誕生日おめでとうございます」
「はい。ありがとうございます」
 背中越しに感じる亜美のぬくもりと、抱きしめてくれる細い腕。
「亜美」
「はい」
「この体勢もいいんですが」
 亜美の小さな手を包み込んで指を絡める。
「私にも、抱きしめさせてくれませんか?」
 少しだけ緩められた腕をほどいてくるりと振り向いた大気は、ギュッと亜美の身体を抱きしめる。
「これ以上ない、誕生日プレゼントですね」
 その言葉に顔を上げた亜美のくちびるをかすめるように塞いだ。


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Category:セーラームーン

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