▼クリスマスの夜に −夜美奈− スリーライツと美奈子は四時間の生放送である音楽番組のスペシャルに出演した。 美奈子を含む他の出演者は日本最大を誇るスタジアムから、そしてスリーライツは海外からの生中継での出演だった。 旅番組の収録もありスリーライツの三人はイタリアにいるのだ。 一方の美奈子はスリーライツの次の出演だったため、スタンバイしなくてはならず、さらにはじめてのスタジアムでのライブで緊張していた事もあいまってその場で彼らの姿を見ることができなかった。 『お疲れ、美奈』 「夜天くんもお疲れさま」 『緊張して歌詞間違えなかった?』 「大丈夫♪」 『そっか』 「夜天くん衣装もダンスも歌もカッコ良かった」 『ありがと。見られたの?』 「さっき録画してたの見た。海外からの生中継ってやっぱりスリーライツはすごいわねぇ」 『わざわざ海外からの生中継なんてしなくていいけど…』 「もーっ!すっごい事なのにゼータクなワガママよ?」 『わかってるよ』 夜天から苦笑気味の声が聞こえて美奈子はふぅと息をはく。 『あ…』 「どうしたの?」 『そっち日付け変わったんじゃない?』 「え?あ、ホントね」 時計を見ると、確かに日付けが変わっている。 『そっか。じゃあ』 “遅いしそろそろ切るよ”と言われるんだろうなと思うとスマートフォンを持つ手に力が入る。 『メリークリスマス、美奈』 「――えっ?」 『何その反応は?もうイブになったでしょ?』 「うん、そう、だけど」 いつもの夜天らしくなくて、美奈子は少し戸惑う。 『ゴメン…一緒に過ごせなくて…』 「…いいの、ちゃんと、わかってるもん」 『…聞き分け良すぎてなんか不気味なんだけど?』 「夜天くんひどいっ!」 『ハハッ、ごめんごめん』 「もうっ!」 『ごめんってば』 くすくすと笑う夜天の声に美奈子は少し寂しさが紛れるのを感じる。 『明日、じゃないや。もう今日か。みんなでクリスマスパーティーするんでしょ?』 「そーよ♪」 『水野たちに迷惑かけないようにね』 「かけないもん」 『……』 「ちょっと夜天くん?なんでそこで黙るの?」 『いや、別に?』 「むぅ…ホントにかけないからね?」 『ハイハイ』 「夜天くん信じてなーい!」 夜天の適当な相槌に美奈子が頬を膨らませる。 『まぁ、美奈だからね』 「どーゆー意味?」 『そんなところも可愛い』 「ーッ///」 突然の言葉に美奈子が真っ赤になる。 『急に黙ってどうしたの?美奈?』 楽しそうな声に美奈子は熱くなった頬に触れる。 普段はそんな言葉なかなかくれないくせに、こんな時に――近くにいない時に言うなんて…せめて隣にいてくれれば抱きつけるのにズルいと、美奈子は思う。 『美奈』 「ん?」 『予定通りにいけば、25日の夕方には日本に帰れるから』 「じゃあ――マンションで待ってる」 『うん』 『星野は月野のとこに行くつもりみたいで、大気はなんか企んでるみたいだからまっすぐにマンションに戻るの僕だけだから』 「分かったわ♪」 『別に余計なサプライズとかいらないからね』 「えーっ」 『僕は美奈が待っててくれるだけでいいよ』 「っ///うん。わかった///」 |