▼クリスマスの夜に −星うさ− スリーライツと美奈子は四時間の生放送である音楽番組のスペシャルに出演した。 美奈子を含む他の出演者は日本最大を誇るスタジアムから、そしてスリーライツは海外からの生中継での出演だった。 旅番組の収録もありスリーライツの三人はイタリアにいるのだ。 『よ、どーだった?』 そろそろ寝ようかと思っていたうさぎのスマートフォンが鳴った。Skypeの相手は二時間ほど前にテレビに映っていた星野だった。 三日ぶりに連絡してきたと思っていたのに、開口一番にそんな事を言われたうさぎは少しムッとした。 (他に言う事ないわけ…っ) 「どーって、何がよ?」 少しキツイ言い方をしてしまう。 『なんだよ…拗ねるなよ…』 「拗ねてるの星野じゃない…」 『おだんごだろ?』 「違うわよ!失礼ね!」 『ぷっ、はははっ』 「な、なに笑ってんのよ」 『いや、いつものおだんごだなって思ってさ』 「…なによ…それ」 『イブ一緒に過ごせなくてごめんな』 「っ、そんなの星野が謝ることじゃないじゃない、スリーライツのみんなで仕事なんだから。あ、今日のやつも海外からの生中継とかすごかったじゃない!」 『おぅ、サンキュ』 「カッコ、良かったよ///」 『あぁ、ありがとな、おだんご』 嬉しそうな星野の声にうさぎはなんだか恥ずかしくなり言葉に詰まる。 『おだんご?』 「な、なに?」 『いや、どうした?眠いか?そっちはもうすぐ日付け変わるもんな。そろそろ寝た方がいいな』 「少しくらいなら平気だもん。もう冬休みだしっ」 『だからって夜更かしすんなよ』 「眠くなったらちゃんと寝るわよ」 『明日の昼からみんなで集まって出かけて夜からクリスマスパーティーするんだろ?遅刻して火野に怒られてもしらねーぞ?』 楽しげに笑う星野の声にうさぎはむぅっと頬を膨らませる。 「いくらあたしでもお昼まで寝ないわよ!」 『どーだか』 いつものたわいないやりとり。遠く離れていてもそんな風に振る舞える事が嬉しい。 『あ、そうだ』 「なに?」 『25日の夕方に日本に帰るからさ、土産持っておだんごのとこ行くよ』 「楽しみに待ってるね、お土産♪」 『お前なぁ…ったくしょーがねーな』 呆れながらも優しい声。 「うそ…星野に会えるの楽しみに待ってるよ」 『あぁ、ありがとな』 「お土産も楽しみにしてるからね?」 『ははっ、分かってるよ』 「うん」 『それじゃあおだんご』 「うん」 『ちゃんとハミガキして寝ろよ?』 「うん。星野はまだ仕事?」 『あぁ』 「無理、しないでね?」 『サンキュー。じゃあな、風邪引くなよ?おやすみ』 「あ、うん!お仕事、頑張ってね」 『あぁ、メリークリスマス──“うさぎ”』 その言葉を最後に通話が終わる。 「ーッ///もうっ…ばかっ///」 そう言いながらもうさぎが嬉しそうに微笑んでいたのをルナは見逃さなかった。 |