▼いい風呂 −夜美奈− 「ねぇ、夜天君?」 「なに?」 美奈子の声と、それに応える夜天の声が反響して響く。 「今日はどうして一緒にお風呂に入ってくれたの?」 「…美奈から一緒に入りたいって言ったのに不満なわけ?」 夜天が少しふてくされたように言うと美奈子がぶんぶんと大きく頭を振って否定する。 「そうじゃなくて…そうじゃ、なくて…いつもやだって言って一緒に入ってくれないから…」 てっきり今日も断られるだろうと思って 「一緒に入ろ?」 と声をかけると 「いいよ」 とあっさり応えがあって美奈子は目を丸くした。 そんな美奈子にニヤリと意地悪く笑った夜天は 「早く入るよ?」 と言ってさっさと浴室へと行ってしまった。 「美奈から誘ったのに実は一緒に入りたくなかったとか言わないよね?」 「言わないっ!」 少し赤くなりながら即答する美奈子。 「ふーん…じゃあ──」 夜天は美奈子に詰め寄りくすりと微笑むと彼女のくちびるを塞ぐ。 「もちろん僕に食べられる覚悟はできてるんだよね?」 「ーっ///夜天君のえっち///」 「誘ったのは美奈だよ?」 「そ、そんな意味で言ったわけじゃないわっ」 「え?二人きりの時に一緒にお風呂って誘ってるんでしょ?」 「ちっがぁぁぁぁぁうっ!」 浴室内に美奈子の声が響き渡る。 「美奈、声デカイよ…」 「夜天君のせいでしょ///」 「人聞き悪いなぁ。僕は美奈の誘いに乗っただけだよ?」 「それは、そうだけど…」 「だけど?」 「と、とにかくあたしはそんなつもりじゃなくて夜天君と洗いっことかしたかっただけなのっ!」 「ふーん」 つまらなさそうに夜天は答えると、サバリと浴槽から出ると洗い場の椅子に座ると、体を洗うスポンジを濡らしボディソープをつけて泡立て始める。 「美奈?」 「え?」 「なにボォーッとしてんの?洗って欲しいんでしょ?」 「いいの!?」 「嫌なら別にいいけど?」 「あ、洗って欲しいっ!でも…」 「でも?」 「へ、変なコト、しない?」 美奈子の言葉に夜天は少し目を丸くするとくすっと笑う。 「ヘンなコトってどんなコト?」 「や、夜天君わかってるでしょっ///」 「えー?なんのコトかなぁ?ちゃんと言ってくれないと僕わかんないんだけどなぁ?」 くすくすとどこか楽しそうに笑う夜天を美奈子は睨む。 「夜天君っ!」 「アハハ、ごめんごめん。大丈夫だよ。ちゃんとわかってるってば。ここでは何もしないつもりだから出といで?洗いっこしたいんでしょ?」 「う、うん///」 それから夜天は美奈子の体を洗い始めたのだが── 「ちょっと夜天君///」 「なに?」 「左手っ///」 「洗ってるだけだよ?」 「きゃあっ///」 「美奈ってばどうしたの?」 「っ///ばかぁっ///」 「うっわ!?っ!美奈こそどこ触ってるのさっ!やめてよ!」 「やだっ!仕返しっ!」 「っ、ちょっとホントにやめっ!アハハハハハハ!ごめん!もうしないからっ!くすぐったいっ!ごめんってばっ!」 浴室内に夜天の笑い声が響く。 「まいったかぁっ!」 「まいった!まいったよ!」 「じゃあ、あとでアイス買いに行こ?」 「意味分かんないしやだよ!せっかくお風呂であったまったのになんでわざわざ寒い外に行かなきゃいけないわけ?冷凍庫に入ってるよ?」 なんだかんだしている間に洗い終わったので浴槽に入りお風呂に浸かる。 「えー?新商品で食べたいのがあったのに…」 「明日でいいでしょ?」 「……でもぉ」 「せめてお風呂に入る前に言ってよ…」 「今思い出したの」 「じゃあ別に明日でいいよね?」 「うぅっ」 「……じゃあさ──」 夜天が美奈子の耳元でぼそりと囁く。 「だめーーーーーっ!」 「じゃあアイスは明日ね」 「夜天君のえっちっ!」 「ハイハイ、アリガト」 「なんでお礼!?」 「さぁ?」 行ってもいいよ? |