Fruits Basket | ナノ

▼いい風呂 −大亜美−

スリーライツとしてのヨーロッパでのライブとモデルとしての仕事で約一ヶ月の間、海外遠征に行っていた大気は久しぶりの自宅に戻った。

「ただいま、亜美」
「お帰りなさい大気さん」

パソコンの画面越しではなく直接顔を合わせる亜美は、変わらない優しい笑顔でふわりと微笑んで大気を出迎えてくれた。
華奢な亜美の体をしっかりと抱きしめる。

「一ヶ月間お疲れ様でした」
「ありがとうございます」
亜美の優しい声と言葉に心が安らぐ。

「お夕飯もできてるんですけどまだ少し早いですし…」
亜美の言うとおり時間は午後五時になろうかというところで、まだ少し早いように感じられた。
「お風呂も湧いてるので、ゆっくり入ってきてください」
「亜美」
「はい?」
「一緒に入りませんか?」
「……え?」
驚いたように目を丸くしている亜美のくちびるをそっと塞ぐ。

「一ヶ月、亜美に触れられなかったんですから、いいでしょう?」
「で、でもっ///」
「キス以上の事は絶対にしませんからダメですか?」
「っ///でもっ///」
「亜美は私に会えない間寂しくなかったんですか?」
「っ!?大気さん──ズルい」
「すみません」
大気は小さく謝ってから、亜美を軽々と抱き上げ浴室へと向かった。


「た、大気さん///」
「どうしました?」
「恥ずかしいです///」
「そうですか?」
「う、うん///」
大気は自分の上に亜美をのせて後ろからギュッと抱きしめていた。
「でも、私の亜美不足は少しは解消されてきましたよ?」
耳元で聞こえる大気の嬉しそうな声に亜美がますます赤くなる。

大気が亜美の髪を洗いたいと言ったため、亜美は素直に頷いた。
わしゃわしゃとリズミカルな音と、頭皮への心地よい刺激に亜美がウトウトとし始める。

「亜美?」
「んー?」
「眠いですか?」
「ごめんなさい、気持ち良くて」
亜美の言葉に大気の動きが一瞬止まる。
「大気さん?」
「あ、すみません」
大気がシャンプーを流し、コンディショナーをすませる。
「トリートメントは良かったんですか?」
「昨日したので」
「そうですか」
大気は少し残念そうに言うと、自分の髪を洗おうとしたところで亜美が
「あたしが洗ってもいいですか?」
と、言ってくれたので、大気は二つ返事で了解した。

「いいなぁ…」
大気のコンディショナーを流しながら亜美が呟いた言葉はシャワーの音にかき消されそうなほとに小さかったが、大気が聞き逃すはずがなかった。
「何が、いいんですか?」
「あ、いえ、なんでもないです///」
「そうですか?」
「うん///」

その後、ちゃぷんと再び浴槽に浸かりながら大気がふと口を開く。
「そう言えば亜美、帰ってきた時からずっと思っていたんですが」
「はい?」
「髪、伸びましたね?」
海外遠征に行く前に見えていた耳が隠れて見えなくなるくらいに、亜美の髪は全体的に伸びていた。
「あ、ちょっと色々と忙しくて切りに行く時間がなくて、ごめんなさい」
「どうして謝るんですか?可愛いですよ」
「そ、そんな事ないですっ///」
「そんな事ありますよ」
大気がクスクスと笑いながら、伸びた後ろ髪をくるくるともてあそぶ。
少しクセのある亜美の髪はじゃれつくように大気の長い指に絡まる。
「せっかくですから伸ばしてみるのも悪くないんじゃないですか?」
「えぇっ……」
不満そうな亜美の声に大気が不思議そうな反応をみせる。

「嫌なんですか?」
「だって…似合わないし」
「どうしてそう思うんですか?」
「……伸ばした事ないんです」
「だったら似合わないかどうかはわからないでしょう?」
大気が優しく言うと亜美が困ったような顔で振り向いた。
「大気さんみたいに綺麗にまっすぐだったら良かったのにって」
「さっき“いいなぁ”って言っていたのはそのことですか?」
亜美がこくりと頷くと大気がふっと笑って
「私は少しくせっ毛な亜美の髪が好きですよ?」
低く耳元で囁く。
「ありがとうございます///」
消え入りそうな亜美の声に大気は優しく微笑む。

「あぁ、そうだ。亜美、もうひとつ」
「はい?」
「さっき髪を洗っていた時なんですが」
「はい」
「“眠いですか?”って聞いた時に私になんて答えたか覚えてますか?」
「え?えっと……“ごめんなさい、気持ち良くて”?」
「さすがですね」
「えーっと?」
「その言葉はぜひベッドの中で聞かせてもらいましょうか?」
亜美がそろりと大気を振り向くと“にっこり”と、それはそれはとても綺麗に微笑んでいた。

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Category:セーラームーン

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