▼診断メーカーのお題 1 あたしはうさぎちゃんや美奈子ちゃんみたいに、人とコミュニケーションを取るのが得意な方ではなくて… 自分の気持ちを言葉にする事が本当に苦手で… うさぎちゃん達と仲良くなってからは少しはマシになったつもりでいたけれど、それは彼女達に対してだけだって、大気さんとお付き合いが始まってから気付いた。 あたしは大気さん達のマンションに遊びに行く時に、いつも大気さんに誘ってもらってて… 今日だってそうだった。 大気さんのお仕事がない事は分かっていたのに……。 「今日、お部屋にお邪魔してもいいですか?」 そんな事を言ったら迷惑になるんじゃないか、とか考えてしまって。 そうしたら大気さんが「亜美、良かったら放課後遊びに来ませんか?」って声をかけてくれた。 あたしは、そんな簡単な言葉ひとつ、まだ上手に言えない… 「亜美?」 「えっ?」 大気さんの声にハッとする。 「どうしました?」 「いえ、別に…」 「何か考え事ですか?」 「いえっ、そういうわけじゃ」 「そうですか?そのわりに本のページがまったく進んでいませんが?」 大気さんに言われて、それ以上の言い訳が出来なくてあたしはうつむく。 「亜美?」 「なんでも、ないんです。少しぼんやりしていただけです。あたしの事は気にしないでお仕事に戻ってください」 違う。こんな事が言いたいわけじゃないのに…。 大気さんはお仕事で忙しいのに、作業の合間にあたしの事を気にかけてくれているのに…。 こんな時なんて言えばいいの? きっとうさぎちゃんや美奈子ちゃんならもっと上手な言葉を返せるのに。 大気さんの顔を見られなくて俯いていると、頭に暖かいぬくもりを感じた。 そして優しく髪を撫でられる。 貴方のその優しい手が好き。 「亜美」 その声が好き。 貴方に名前を呼ばれるのが、好き。 「どうしたんですか?」 そっと抱きしめられてあやすみたいに背中を撫でられる。 貴方のぬくもりが好き。 全部、全部、すき もっとあたしを見て? もっと名前を呼んで? もっと、触れて─── 貴方だけに束縛されたい。 こんな事、絶対に大気さんに言えない。 好きだから、嫌われるのが怖いから。 好きなのに、言えない。 あたしだけの秘密。 |