▼ぬくもり 〈Side ARIMI〉 今日は銀太とデート。 いつもの待ち合わせ場所。 あたしはいつも10分前に着くようにしてる。 柱にもたれて、銀太が来るのを待ってるあたしに声をかけてくる男の子。 あしらうのは面倒だけど… でも、あたしは10分前には来ていたいの。 男の子達に声をかけてほしいからじゃない。 そんなの迷惑なだけ。 違うの。 ただ── 5分前に待ち合わせ場所について、待ってるあたしを見つけて、慌てて走ってきてくれる銀太を見るのがたまらなく好きなの。 「ごめん!待ったよな!」 銀太があたしの目の前につくなり、手を合わせて『ごめんなさい』をする。 「もぉーっ、待ったんだから」 わざと拗ねるように言うと、銀太はちょっと困ったようにあたしを見つめる。 ごめんなさい。 嘘。 待ちたかったの。 「ホントにごめん。寒かったよな」 そう言って、大きくてあたたかい手であたしのほっぺを優しく包んでくれる。 「銀太の手、あったかい」 外の気温は寒いけど、銀太の優しさはいつもあったかい。 あたしは、銀太の優しさに甘えてるの。 「映画まで時間あるからどっか入ってあったかいものでも飲もう」 そう言って優しく笑ってくれる銀太。 「行こう。亜梨実」 そのままあたしの手を握って歩き始める。 「うん」 銀太の優しさと手のぬくもりに心も体もあったかくなる。 |