「今から行くから、ごめんね」
申し訳なさそうに電話口で謝る彼女を怒る気にもなれず、あぁと返して受話器を置いた。くだらねぇと思ってたクリスマスは今年は薔薇色に輝いて見えてワクワクしていたのは内緒だ。仕方ないっちゃ仕方ない。彼女……名前はケーキ屋で働いてパティシエ兼売り子をやっている。そりゃ休めねぇよな、と思いながらも一緒に居たかったってのが本音。
たかがクリスマス。されどクリスマス。こんな日に浮かされてたまるかよと思った昔の俺は馬鹿みてぇだ。周りの空気に圧されてか、余計に恋しくてしょうがねぇ。ま、会えるからいいんだよ結局は。
テレビから流れるクリスマスソングがいやに耳につく。神楽も居ねぇことだし、好きにできるな。だらり、と寝そべりながら考えているとチャイムが鳴った。名前なら鍵を持っているはずだから他の客か。生憎、出る気力はねぇ。名前じゃねぇし。だけどチャイムは鳴り続け、煩い。ああー!!面倒だなおい!
「ピンポンピンポン何度鳴らしたって聞こえてんだよ!!」
「わ、」
「え?」
ピシャン!大きく引き戸を開けて喚くと、小さく驚いた声。紛れもなく名前の声。だけど、違う。
「……なにその格好……」
「うん、だよね。あのね、時間がなくて早く銀ちゃんに会いたかったから、このまま来ちゃった」
ケーキの箱と鞄を持つ名前の姿は赤い帽子、赤い上着とミニスカートに赤いブーツ。……所謂サンタクロースの格好。いや早く会いたかったのは俺もだけど、それはないんじゃね?だって可愛すぎるし、その辺の男に襲われたらどーすんの?しかもそれで街中歩くとか好奇の眼差し浴びんのお前だぜ?とか色々言いたいけど、可愛すぎるんでもういいや。
「に、似合ってんじゃね、うん」
「それにね、驚くだろーなって思ってチャイム鳴らしたの。ドッキリ成功?」
「アホなこと言うなっつうの。ほら、さみーから入れよ」
サンタ姿の名前を部屋に引き入れ、外の姿が見えたとき、さっきまでネオンの光でいっぱいだったかぶき町に雪が降っていた。
でもそんなことより可愛いんだけど、お前
(ケーキより先にお前食べたい)
(……さて、ご飯ご飯!)
(うわ、つめてぇ)
101225