大家族のドキュメンタリー番組ってあるじゃん?あれ見てると腹立たしいんだよねって、今まさにテレビで放送されているそれを見る男に問いかけた。
「あー?大体そーゆーもんはなァ、家計がやばいからギャラ貰って良い家族ですよアピールしてるだけだろ。視聴率もいいし」
「今、すっごくイメージ壊れた」
「そりゃよかったな。まぁ俺も好きじゃねぇけどな」
とか言いながらもチャンネルを変えない銀時。長女が家出だとか次男の高校受験とか大家族のありとあらゆる日常を映し出す番組にこの人たちは窮屈さを感じないのかと思う。寝ても覚めてもカメラがあるとかそんなの耐えられない。
「神楽達帰ってくんのおせぇな」
「ほんとだね、おつかいに行ってくれたのはいいけど……」
「あいつらのことだから俺達に気ィ遣ってんのかもしれねぇな」
「えー?」
「こうやって、」
銀時がすぐ横に座り直して私の肩に頭を置いた。ふわふわな銀髪が目の端に写る。
「2人きりってのも久々だしよ」
「……そうだね」
今度は末っ子達の騒がしい声が聞こえてきて、銀時はテレビの電源を切った。そして徐に呟く。
「羨ましいんだろうな」
「……?」
「ああやって家族がたくさん居て毎日ぎゃあぎゃあ騒がしいのって、見てる俺達が腹立たしく感じんのも、それは羨ましいってことだろォが」
「……そうかもね」
私には親は居ない。攘夷戦争に巻き込まれ死んだ。銀時にも親は居ない。だから、きっと、銀時の言う通り羨ましいのかもしれない。
「なんなら子どもでも作るか」
「なに言ってんの」
ぺしっと銀時の頭を叩き、笑えば、銀時は「真面目に言ってんだけど」と拗ねた声。それと同時期に階段を駆け登ってくる音が近づいてきた。どうやら帰ってきたみたい。
「大体ね、家にはもう居るじゃない。子どもが」
おう、と頷いた銀時も外から聞こえてくる声に気付いたのか私から離れた。そして私の腹を撫でる。
「暫くはお預けってとこか。新たな家族の誕生には」
「うん」
――ガララッ
「ただいまアル!」
「キャンッ!」
「ああ、定春そのまま中に入っちゃ……!」
騒がしい我が家の子達の声を聞いて、おかえりと返す私と銀時。
坂田家は今日も平和です。
101224