2010 | ナノ








束縛だって激しいし、過保護にもなってしまうし、それでもアイツは好きだと言ってくれた。この平穏な時間は何時までも過ごすと信じていた。空っぽだった俺の心を満たしてくれた彼女はもう居ない。好きだった。今もすげぇ好きだ。だけど彼女は戻ってこない。彼女に頼りすぎた毎日。んなもん、俺は彼女が居なくともなんだって出来る。着流しのストックの場所も知ってるだろ、調味料だって、シャンプーの詰め替えだって、独りで寝ることだってできる。



「……足りねぇよ」



どれだけ頑張っても、どれだけ忘れようとも、脳内から消え去ってくれない君が居る。情けねぇよなぁ。女にフラれたくらいでこんなに腑抜けになっちまうってよォ。こんな甲斐性無しと一緒に居てくれて感謝はしている、ありがてぇと思ってる。アイツを幸せにしてやるのはこの俺だと勘違いしてた。失ってから気付く大切なものって過去に経験したからわかってんだよ、だけどなぁ……やっぱり何度経験したって慣れるもんじゃねぇし、俺は彼女を欲している。



「負け犬の遠吠えってやつ?滑稽だこと」



ああ、滑稽過ぎてやる気出ねぇ。あ、元からとか言うのは無し無し。……うっぜぇな自分。寝よう。寝て、永久にアイツを脳内追放しよう。この銀さんを振ったことを後悔……




――――ドタドタ!ボスンッ!




……して帰ってきたようだ。目の前に飛び込んできた彼女は荷物を捨てて、目に涙を溜めて俺を睨んだ。おいおい、まだ別れて3日だぞ。早すぎじゃねぇか?捨てたのはお前からじゃねぇか。……でもまぁいいか。両手を伸ばして、彼女を見た。



「……おかえり」

「……馬鹿!最低!」

「うん」

「……ただいま」



再び腕の中に舞い戻ってきた彼女を久しぶりに抱きしめた。酒臭いと一言。まぁ勘弁してくれや、お前が居ない哀しさを埋めてたんだからよ。






君が居なくたって、僕はなんでもやれると思ってた。でも君が居るからなんでもできるんだ。




(ぜってぇ離さねぇよ。縛り付けてでも傍に置いてやっから)

(ひどい)

(ひどかねぇよ。お仕置きってやつ)






title/たとえば僕が さま






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