2010 | ナノ








定春の散歩から帰ってくると、玄関には見慣れた靴が置いてあった。今日も来てる!嬉しくなってドタドタと居間に向かえば彼女はやっぱり来ていた。そしてソファに座る彼女を後ろから抱きついた。



「名前ー!今日のご飯なにアルか?!」

「もう、神楽ちゃん。帰ってくるなりそれなんだから……寒かったでしょ?」



振り返る名前の膝の上にはこの部屋の主が頭を乗せていた。つい舌打ちをしてしまう。



「神楽ぁ……邪魔すんなってー」

「フン!このド変態天パが!名前?大丈夫アルか?なにもされてないネ?」

「うん、大丈夫だよ。何かあればすぐに神楽ちゃん呼ぶから!」

「おいおいおい、それはないだろ名前ちゃーん!」




勢いよく起き上がった天パはニコニコ笑う名前にそれ以上何も言えなくて、なんだか面白い。この2人は恋人なのだけど、何処かそれを感じさせない空気。そう、恋人というよりも夫婦、みたいな。生憎、パピーとマミーとはまた違う雰囲気だからそれを夫婦と思ってもいいべきかは実は寝る前に悩んでいる。


「神楽ちゃん?どうかした?」

「な、なんにもないアル。それより今日の晩御飯知りたいネ!」

「ならいいけど……。これから買い物行こうと思ってたの、買い物しながら決めてくるね。神楽ちゃんも来る?」



後ろでいじけ始めた天パが可哀想になったので私は首を振って定春と留守番すると返した。



「でも名前一人じゃ物騒だから荷物持ちとして銀ちゃんを連れていくネ!絶対ヨ!」

「ふふっ……じゃあそうするね。銀ちゃん行こっ。いちご牛乳買ってあげるから」

「まじでか。行く行く名前様最高っす!」



あっという間に2人は家を出ていった。そっと窓から見れば腕組んでバカップルにしか見えない。



……本当は冷蔵庫の中にたくさんいちご牛乳が入っていることを知っている。それを名前もわかっていて、銀ちゃんを釣ったことも知っている。……そして銀ちゃんもわかっていて釣られたことを知っている。




「……ほんと、見てて飽きないアルネ」




今日の夜は名前と寝てやる



(買い物の件、譲ってやったんだから。精々タイムセールの波に押し潰されてこいよ)





101202