好きな人を追いかけて江戸にやってきた私。そしたらその人は攘夷派と呼ばれる人で指名手配犯ということを知った。行方もわからないし、荷物は何故か置き引きに遭いお金もない私は江戸のかぶき町というところで途方に暮れていた。
「はぁぁ……」
私ってほんとに馬鹿!大人しく京の旅館の跡を継げばよかった。でも、「またな」って言われてつい追いかけてきてしまった。好きになった人だから後悔はしないって決めたのに早速何やってんだか。とりあえず、公園のベンチでサングラス掛けたホームレスの人に愚痴ってみる。
「そりゃあ大変だったな」
「江戸って怖いところですね」
「しかし嬢ちゃん、これからどうするんだよ」
「仕事見つけるしかないですよね。無一文じゃ故郷にも帰れないし」
はぁぁ。大きく溜め息をついたら隣のおじさんが、あっと声を出して立ち上がる。
「銀さん!」
ブレーキ音が響いて公園の入口に原付が止まる。うわぁ、生で初めて見た。ヘルメットを外してこっちに近付いてくる白髪のお兄さん。
「今日は新台入換だったのによォ、女の子と浮気ですか、コノヤロー」
「ちげーってばよ、住むとこもお金もないこの女の子の話を聞いてたんだよ」
「ふぅん?」
どうやらホームレスさんとお兄さんは知り合いみたいで、少しだけ会話を交わしたら2人の視線が私に突き刺さる。
「銀さん雇ってあげたらどう?女の子が無一文のままこの町に居るのは危険だよ」
「えっ、なんの話ですか。あ、すみません、気にしないでください」
顎に手を当てお兄さんはジーっと私を見る。これも初めて見る紅い目は私の心をドキドキさせた。
「従業員は手一杯なんだよなァ。でも、ま、可愛い女の子に寒空の下で居させるのは可哀想か」
「おっ、話がわかるねぇ。嬢ちゃん、運がよかったな」
「ほら行くぞ。じゃーな長谷川さん」
えっ、本当に話がわからないんですけど!ああっ、手を掴まれて原付の方に引きずられる私をホームレスさんは手を振って見送っている。
なにこれ、人拐い?臓器売買されるわけぇぇぇ?!
でも、悪い人じゃないよね?
(俺、坂田銀時ってんだ。アンタは?)
(苗字名前です)
(名前、か。お前の世話見てやっから、宜しくな)
101107