俺は嘘つきだ。
「私のこと好き?」
「好きに決まってんだろ……」
目の前に居る女に偽物の笑顔を貼り付けて押し倒した。……本当は好きでもない。正直、名前も覚えちゃいないし。それでも抱けるのは男の性なのだろうか。
めちゃくちゃに俺の下で喘がせたいのはこの女じゃなく、本命の彼女だけだ。それが簡単に出来ないから違う女に走ってしまう。
最低?
んなことわかってる。それでも、俺の彼女……名前を醜い俺で汚したくない。そんな男心が複雑に絡み合う。
「……珍しいですね、銀さんが香水を付けているなんて」
「あ、……臭い、か?」
「いえ、……銀さんにあまり似合わない香りだな、と」
くす、と笑う名前に心が痛んだ。香水を纏ったのには、つい先程まで別の女の匂いが染み付いていたから。軽く風呂を浴びたくらいなので仕方なくホテルにあった香水をつけている。
……騙している、改めてそう思った。だけどそれが止められるはずもなく、今日もまた名前を騙す。
「じゃ、行くか」
「はい」
何故か手を繋ぐのすら憚られる。……ガキの恋愛じゃねぇんだ。そんなことで、どうするんだよ俺は。
「どうかしましたか?」
「あ、いや、なんでもないっつーか……」
「調子でも悪いんですか?今日は止めときます?」
「平気だって。心配させて悪ぃ、行こっか」
先を歩くついでにようやく手を捉えた俺は名前に笑いかけると、名前は屈託のない笑顔を返してきた。
この手を握りつぶしたい。壊したい、そう思いながらもできなくて、俺はまた何とも言えない笑みを溢す。
愛おしすぎて壊せない
(……ほんと、俺、最低)
title/たとえば僕が さま
101018