「っはー…!」
まだ秋に入ったところなのに外は寒く、冷え性な私は仕事から帰ってきてすぐに浴槽に湯を溜め、たまには入浴剤なんか使ってみたり、と、身体の芯から暖まっている最中。
ちゃぷちゃぷ揺れる湯の中に、口まで浸かり、今日の疲れを癒す。今日は忙しかったなーとか、お風呂から上がったら銀ちゃんに電話しよーとか、色々考えていた。…脱衣所で揺れる影に気付かずに。
――ガララッ
驚いて脱衣所に向けた目線の先に裸の銀ちゃんが居た。
「っ、あ、ちょ…ぎぎぎぎ銀ちゃん!?!?」
私の声がけたたましくお風呂場で反響した。当の本人は顔色変えず「よっ、名前」と言いその場に立っている。
「なんでいるわけぇ!」
「なんでって、寒いから入ろうと思ってよ」
「いや私が先に入ってるし、ここ銀ちゃん家じゃないし!!ててててか、隠してそれ…!」
裸の銀ちゃんを改めて見てしまって恥ずかしくなり、銀ちゃんから目を反らし湯の中で縮こまる。
「あー?銀さんの見慣れてんだろー。触ったこともあれば舐め…ってぇぇぇぇぇ!」
「うるさい!」
馬鹿!最低!変態!銀ちゃんに思いっきり洗面器を投げつけ、はぁはぁと息をする私はいつの間にか浴槽に立っている。これじゃあ私の裸も丸見え!
慌てて入浴剤で白く濁ったお湯に浸かり直しさっさと銀ちゃんを追い出そう。そうしよう。…できるかはわからないけど。
「ったく…そんなに一緒に入りたくないんですかー?」
「あのねー、いきなり不法侵入して勝手にお風呂入ってくる馬鹿に言われたくないの。…来るって言ってなかったくせに」
「驚かしてやろうと思ってよ、そしたら名前が風呂に入ってるもんだから、じゃあ一緒に入ろうと……だめ?」
復活した銀ちゃんが私だけに見せる甘える表情をしてそう言った。ずるい。今更、追い出せるわけがないじゃない、やっぱり。
「ばか」
了承の意と受け取って銀ちゃんはにやりと笑った。ざぶん、とお湯が溢れた。
だけど、本当の戦いはこれからだということに気がついた
(あったけー)
(ねぇ、何処触ってるわけ?)
(いやー此処でやったら興奮するんじゃないかと)
(!!ばかばかばか!辞め、離せぇぇぇ!)
101003