ヘルメットから零れる銀色の髪が太陽の光を浴びて綺麗すぎて、見とれていた。…ら、身体がグンっと前のめりになって銀ちゃんの背中に思いっきり突っ込んでしまった。
「わっ、」
「ん、どしたァ?」
慌てて私はなんにもないよ、と答えて銀ちゃんの原付から降りる。
「あぁ?まぁいーけどよ」
「それよりごめんね、わざわざ乗せてもらっちゃって」
被っていたヘルメットを取って銀ちゃんに渡すと、ガシガシと頭を撫でられた。晩御飯の買い出しに行くって言ったら大江戸スーパーまで銀ちゃんが「乗せていってやらァ」とか珍しく言うからお言葉に甘えてみたのはつい10分前。
「もーっ、髪がぐしゃぐしゃになるって」
「お前がぼーっとしてるから悪い」
「なにそれ。いーけどってさっき言ったじゃん」
「さぁしらねぇな。過去は振り返らねぇし」
「もうっ…ほら、早く買い物行こ」
「はいはいっと」
そう言うと銀ちゃんは珍しく素直(だっていつも追求してくるのが銀ちゃんだし)に 原付を駐輪場に止めて鍵を掛けた。
私はそこまで見届けてから銀ちゃんに背を向けて入口へと向かった
…はずなのに。
「なァ、名前?」
「ちょっ、銀ちゃん…!」
グッと手首を捕まれたと思ったら背中に温もりを感じた。ああ、抱きしめられたと瞬時に判断して銀ちゃんを制する。此処は外なんだから!!
「なに?銀さんに見とれてたわけ?」
ああもう、なんだわかってるんじゃない!この天パ!!でもそんなことは言えないし(天パだなんて言ったら実は隠れて落ち込んでいるのも知ってるし)
「…だって銀ちゃんの髪、陽に浴びてキラキラして綺麗だったんだもん」
だからね、と、小さく呟いたら銀ちゃんが私から離れた。
「銀、ちゃん?」
「コノヤロー」
「え?」
先に歩き出した銀ちゃんの声が低くて怒ったのかと思い私は焦る。銀ちゃんのコンプレックスだ。天然パーマより一番嫌いなもの。それは普通の人と違う髪の色だってことを思い出す。
「銀ちゃん…!」
離れていく距離を近付けようと私は早足で銀ちゃんに近付こうとする、と、銀ちゃんはいきなり立ち止まって私の方に向いた。
「ほんと、やってくれるわ、お前」
「っ?!」
「 」
…銀ちゃんは素早かった。だって私の前髪をかき分けてそっと額にキスをしてまた背を向けて歩き出した。今度は私の手を握って。
「あ…」
後ろ姿の銀ちゃんを見ると耳が少し赤かった。もしかして怒ったわけじゃなくて照れてる?咄嗟にさっき銀ちゃんが小声で言った言葉が頭の中でリピートする。
『ありがとな』
髪が綺麗だと言ったからお礼を言ったんだろうか。でもね銀ちゃん?私、銀ちゃんが嫌いなものは大好きだよ?ふわふわな天然パーマも人とは違う銀色の髪も、その特徴のある目も、
「…好きだからね」
「…おま、コノヤロー、今夜覚悟しとけよ」
そんな照れた銀ちゃんも大好き
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