―――ゴロゴロ…!
「ひゃあっ!」
雷の音に耳を塞ぐ。誰でもいいから早く帰ってきて。騒々しい雨音に反発するかのように雷音が轟く。近くで何回か落ちる度、テレビが一瞬消えては付く。
怖い。生憎依頼が入り、外に出ていった万事屋メンバーが居ないこの部屋は賑やかでもなんでもなくて、余計に怖さを増す。雷は大嫌い。昔、稲妻をモロに見てからトラウマだ。
仕事が休みだから遊びに来たのに、銀ちゃんたちは仕事が入ったから行っちゃうし、タイミングが悪すぎる。来るんじゃなかった、雷が落ち着けば帰ろう。
―――ピカッ!
「あわっ」
―――ドーン!
「ひゃあああ…」
もう耐えれない。ソファから立ち上がって私は迷わず銀ちゃんの部屋に向かい引きっぱなしの布団の中に潜り込む。
光も音も遮断して、銀ちゃんの匂いに包まれた私は、なんとなく安心できてそのまま眠ってしまった。
「名前ー、おーい」
「あ…う?」
揺さぶられる身体。聞き覚えのある大好きな声で私はハッと目を覚ました。
「なに寝てんだよ」
銀ちゃんの顔を見ておかえりと言ってあげようとしたときに光る稲妻。外は既に暗く、薄暗い室内を照らす。
1、2、3と心の中で数え、6秒目に達した頃、一番大きい雷が鳴った。
私は布団から起き出して銀ちゃんにしがみついた。銀ちゃんはどうしたんだよと言いながらも背中に手を回してくれた。
「かみ、なり…」
「雷?え、なに?名前ちゃん怖いの?」
こくんと頷いたのがわかってくれたのか銀ちゃんはよしよしというように背中を撫でてくれる。
「名前ちゃーん?」
「うー…」
「まぁ銀さんの心臓の音でも聞いて落ち着けって」
「んー…」
言われなくても聴こえている銀ちゃんの命を刻む音が、私を酷く安心させる。
あーもー、雷なんてなくなってしまえ。
どくん、どくんと銀ちゃんが奏でる音を聞きながら、私は目を閉じる。
雷鳴が遠くで聞こえる。でも心臓の音のほうがとても大きくて近い。
(名前?おいおい寝ちゃったよ)
(……やべ、銀さん、襲ってしまいそう)
100830