「銀さん、名前さんが病院に運ばれたって……」
「あ……?」
最初、電話に出た新八が何を言っているのかわからなかった。突如震える俺の身体に、脳みそは新八の言葉を理解し、俺自身に伝達される。
名前が病院?
身体中に流れる血が凍るような感覚、冷や汗が吹き出す。神楽が俺の身体を揺らす。ハッとして立ち上がった。
「……行くぞテメーら」
原付の鍵を片手に万事屋を出る。最高時速で病院に向かう俺の脳内は名前のことでいっぱいだった。最近名前が忙しくて連絡を取れなかった。もし、もし名前が居なくなるようなことがあれば、俺はおかしくなってしまうだろう。
「名前!」
「あ、銀ちゃん」
「へ…?」
院内を走り、大きな音を立てて名前が居るとおぼしき病室を開けたことで看護師に怒られるわ、当の本人の名前はケロッとしてジャンプを読んでるわ、なんだこの疲労感。
「お前…なにがあったんだよ」
「仕事でヘマして、足にヒビ入ったから暫く入院って新八君に言ったんだけど」
お見舞いに来るついでに焼きプリン買ってきてって伝言頼んだのに、と名前は付け足してジャンプを閉じた。そういえば、新八の言葉を全部聞かないまま家を出たことに気が付いた。取り越し苦労ってやつか。
「あ、今週号の読む?」
「ったくよォ、心配させんなって」
きょとんと名前が首を傾げて、俺はベッドの傍の椅子に腰を降ろした。
「……心配してくれたの?新八君に託した伝言が耳に入らないくらい?」
「当たり前だ、馬鹿。銀さんの寿命縮んだから、マジで」
それでも、俺の頭の中では名前が居なくなることを想像しちまって、嫌になる。無事でよかった、それでいい。
「そっかぁ、ごめんね?」
ふにゃりと笑う名前の頭を引き寄せて、彼女の存在を改めて確認した。
ああ生きてる、あったけぇよ、ほんと。
(てなわけで、銀さんを心配させた罰としていちご牛乳な)
(えープリン買ってきてくれなかったしなー)
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