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いざ、ご挨拶へ


「では二人でご挨拶に参りましょう、絢姉様」


私がハンターになってから数か月。
ある程度のモンスターなら1人で倒せるようになってきた時の事。
その事を紫雨に報告した時に言われたこの言葉が始まりとなる。



さわさわと、そよ風に揺られて木々の葉達が揺らめいている。
雲一つない空、日差しが少し眩しい位良い天気で、こんな日はオトモやキッチンアイルー達を連れてピクニックに出かけたくなってくる。

そんな気分を斬り捨てるかのように、目の前にいたランポスを太刀で斬る。

一撃、二撃…

今の私の武器はある程度強化してもらって威力も強くなっているため、少し斬っただけですぐにランポスは倒れた。
と、同時にパチパチと手を叩く音。

剥ぎ取りを終えて立ち上がり、溜息をつきながら音の聞こえる方を向いた。

「お見事です、絢姉様」
そう言ってにこやかに拍手をする紫雨。
メルホアZにNフレグランスGで、武器以外は名前の通りの配色な感じ。
そんな自分は、名前とは関係ないけれどもピンク色のメルホア、それと骨刀【鮫牙】を装備している。

「…ちょっと雨、一つ質問するわよ?」
「何でしょう、絢姉様」

私が声をかけると拍手をやめ、今度は生肉を焼きだした。
私がいるため下位のクエストしか受注できないからか、強い装備のためか、素晴らしいほどの余裕っぷりだ。

焼かれていくお肉のいい香りがあたりに漂う。
なんだかお腹がすいてきたかもしれない、と思ったところではっとした。
まずはこのクエストをクリアしなくちゃいけない。
クエスト中に気を緩めていたら、急に何かが来たりした時など素早い対応ができなくなってしまう。

目の前ののほほんとした空気に飲まれないように気を引き締めなおした。
と、同時に聞こえる翼の音。
近づいてくるその音はどんどん大きくなっていく。


「…普通挨拶って言ったら先生なんじゃないの?」

上手に焼けました〜!、と焼けたお肉を空に掲げるかのように紫雨がばっと振り上げたのを見ながら溜息をついた。
そしてその紫雨の背後に降り立つそれは、いつだったか資料で見た記憶のある雌の飛竜。
本物をこんな間近で見るのは初めてだ。
でも私はある程度のモンスターを1人で倒してここまでこれた。
レイアで怖がるようなハンターではない。

レイアに気付いているのかいないのか、焼いたばかりのお肉に噛り付いている紫雨を見て思う。
紫雨は装備品的に軽く突くだけで下位のレウスなんかすぐ終わってしまうはず。

もしかしてこれって私は紫雨に試されている?


「それなら…」

やってやるわよ、と意気込んで背中の太刀に手をかけて少しずつ近付いていく。
そして近付いてみて今まで戦ってきたモンスターよりも大きいと改めて実感した。

「離れて下さい!!」
「え…ッ!?」

気配に気づいたレイアが振り向くのと同時に聞こえた紫雨の声。
声に気を取られた瞬間、雌とは思えないほど雄々しい咆哮が耳を貫き地面が揺れた。

「っ」
咆哮から解放され、耳から手を離したときはもう遅く、自分に狙いを定めたレイアが火炎ブレスを吐き出してきていた。

「あっ…」

回避なんて間に合わない距離。
目前に迫る火球にもう駄目だと諦め、目を閉じた。



「絢姉様、大丈夫ですよ」


焼け焦げる匂いではなく、甘い香りがした。
痛みに呻く自分の声ではなく、優しい声が聞こえた。

目を開くと、目の前は紫がいっぱいだった。


よく見ると紫雨がランスの盾でガードして守ってくれていた。


「紫雨…」
「咆哮には気をつけた方がいいですよ」



 * * *

盾で仲間を守るとか、真面目にやってみたいものです。
続きを書く気力があったら小説置き場に移動します。

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執筆:2010/?/?

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