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苦愛

※死ネタではありませんが、首絞め有





「アッツェリテルト」


愛しい人の名前を何度も呼んで、首に掛けた手に力を入れる。


「…っ、は……くっ」


首を絞められて息も絶え絶えな彼女は、既に抵抗する事を諦めていた。

強い魔女を相手にして本来ならばこのような状況にはなる事はないはずなのだが、彼女の力は封じられてしまっているため今は使えない。


「ああ、アッツェリテルト……」


強く絞めては、弱く絞める。
彼女の意識が飛ばないように、死なないように、手の力を調節しながら名前を呼び続ける。
何時間も、何時間も。

最初は彼女も何かしらの反応を見せていたが、今では首を絞められた時に苦しむくらいしか反応を見せなくなってしまった。
しかし、それを気にするくらいならばこんな事はしないわけで。


「アッツェリテルト……アッツェリテルト、アッツェリテルトアッツェリテルトああアッツェリテルト」


愛でるように優しく名前を呼んだり、狂ったように激しく名前を呼んだり。
首を絞めて、何度も何度も呪文のように彼女の名前を呼び続ける。


「アッツェ、リテルト…」


いつまでこんな事が続くのかは、自分でもわからない。
既にどれだけ時間が経っているのかすらわからないのだから、きっと考えるだけ無駄だろう。
そもそもそんな事を考える事自体が馬鹿馬鹿しく思える、何故彼女の事以外を考えなければならないのだろうか。


「く、っ……かはっ…、っ」


今は、苦しみ喘ぐ彼女が見られれば、それでいい。

何も、考えなくて、いい。


「アッツェリテルト」



いつまでも、いつまでも。

ずっと、ずっと。

苦しんで、苦しんで、苦しんで、苦しんで。


「アッツェリテルト、アッツェリテルト、アッツェリテルトアッツェリテルトアッツェリテルト」


そうすれば、彼女は他の事を考えずに済む。
彼女は苦しみを与え続ける俺の事だけを見て、考えればいい。


「ああ…ああ、アッツェリテルト…!」



お互いに、死ぬまで。
永遠に。


「…アッツェリテルト」



さあ、全てを忘れ、投げ出して、一緒に苦しもう――――


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執筆:2013/08/16

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