Original - n
Alice in Wonderland!!
走ってるウサギが時計を見ながらしゃべってるだなんて、夢みたいだと思うよね。
でも、それが夢だとしても。
何だかおもしろそうだと思わない?
「きゃああああああっ!!?」
どうしてこうなったの?
どうして今落ちてるの?
どこまで落ちるの?
ぐるぐると、沢山の疑問が浮かんでは落ちていく。
そんな中、どうしてこうなったのかを頑張って思い出してみる。
「確かあのウサギを追いかけてたら穴に落ちて、落ちた――って落ちる落ちるいやああああああ!!」
さすがに夢だとしても落ちるのは怖い。
しかも本とか椅子とか香水瓶とかとにかく色んな物が浮いている変な場所で、落ちてる時に何かと衝突してしまうかもしれないという不安もある。
でも、何より穴が深い。
深すぎる。
大げさだけど、地球の反対側に出ちゃうんじゃないかってくらい長い気がする。
「こんなに長いんじゃあ…もしかして、穴の終わりが来たら、私は…死―――っやだやだ夢でもそれは嫌だってば!!ああもうウサギなんて追いかけた私が馬鹿だった!」
ずっと落ち続けていたせいか、少しずつ落ち着いてきた。
が、このまま落ち続けたらどうなるかという事を考えて真っ青になった。
死ぬにしてもせめて形だけでも残りたいとは思う。
…いや、そもそも夢の中だとしても死ぬのは勘弁してほしい。
こんなにもリアルな夢なら尚更。
夢だけど、絶対に痛いだけじゃ済まない気がする。
「わ、私はっ…いや、そうじゃなくて…ああもう馬鹿!まだ死にたくないよっ!!」
再びパニック状態に陥り、泣きそうになりながらもどうにか体勢を立て直そうともがいて頑張る。
そして必死にもがいた結果、頭から落ちていたのが足からになった。
「どうにかしなくちゃ……ヒッ!?」
何か捕まるものはないのかと下を見るのと共にスカートが捲れ上がるのを押さえつけた時。
とうとう終わりの光が見えてしまった。
「―――っ」
見たくなかった光から目が離せなくなり、音も心臓の音しか聞こえなくなってしまった。
涙も出ず、叫ぶ事もできないまま、アリス・サーバニアは終わりの光の中にのみこまれていった。
「あ。アリ――ニ゙ャッ!!!」
「……あ、あれ…?」
気が付けば、見知らぬ部屋に倒れていた。
「生き…てる…?」
恐る恐る自分の手を見てみても、グロテスクな想像とは全く違く。
上半身を起こして上を見上げれば大きな煙突のように先程落ちてきた穴が見えた。
「あっ」
無事に生きていた事を不思議に思いつつも安心する。
そして、それと共に床の違和感に気付いた。
自分は何かの上に座っている。
何だろうとそれからどいて見てみると、驚きのあまり言葉を失ってしまった。
「…………。……ね、猫?」
「うぅ…ひどいよぅ…」
あんなに長かった穴から落ちてきた自分を受けとめた(とは言えないけれど)のは、床の上に仰向けで倒れた猫耳としっぽを装備したよくわからない男の子だった。
「え、と……その…」
なんて声をかけていいのかさっぱりわからないので、そのまま男の子を見ていると、耳としっぽをぴこぴこひょこひょこ動かしながらゆっくりと起き上がった。
「ひどいよアリスぅー…」
「……え。何で名前を…」
「猫は猫だから、チェシャ猫だから知ってるのっ!」
「…はぁ」
起き上がるなりいきなり名前を呼ばれて驚く。
けれど何故かを聞けばよくわからない答えが返ってきて、会話をする気を削がれてしまった。
ただでさえよくわからない事続きで頭がパンクしそうだというのにこれじゃあ、考える事を放棄しても良いんじゃないかと思えてきてしまう。
「もうっ。ちゃんと迎えに来たのに、アリスはひどいよっ」
「………あぁ……ごめんね…」
ぷくっと頬を膨らませて怒る猫。
もうよくわからないので、考える事を放棄しようと思った。
そもそもこれは夢の中なんだから、考える事なんてしなくても良い気もしてきた。
「猫はいい子だから許してあげるっ。……っと、忘れてた。…アリス、猫達の楽しい国にようこそっ!」
ため息混じりに謝れば、猫は仕方がないというふうに腕を組みながら許してくれた。
そして何かを思い出したかのように手を叩けば、急に両手を広げて笑顔で歓迎しだした。
「………あぁ…どうも?」
色々ありすぎてよくわからないけど、よくわからないなりには結構楽しそうな夢になりそうな気がした。
でもせっかくなんだし、目が覚めるまでこの夢の世界を楽しんでみようかなと思った。
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2011/07/14:執筆
2012/08/02:ブログから移動