泡沫の夢
2話
ただ、今は里にいないサスケの代わりにと、そっとポケットに忍ばせてきたのに。
いつの日か、彼と共に初詣に行けたら。
飽きるほど笑い合って、喧嘩もして、年に一度ぐらいは殊勝に神の御許へ詣でて。
そんなごく平凡な日常を、この手に取り戻したい。
その夢を実現する為に、もうすぐ修業の旅に出るのだ。
いつ叶うとも知れない夢を思い、今は遠い空の下にいるであろうサスケを想う。
蘇る記憶は、切なく甘い。
ライバル、友達、マンセル仲間。
淡い憧れを抱いていた相手。
自分達の関係を何と表現すればいいのか、ナルトは今でも分からないままだったが。
それでも、何もかも引っ括めて、サスケという存在が大切だった。
その彼が、繋ぎとめる事の適わなかった彼が、去り際に唯一残していったもの。
あの終末の谷で彼と闘った、たった一つの証。
サスケの額当て。
それを無くしてしまったのである。
(どーしよ………)
ナルトは唇を噛んで、深く俯いた。
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