vacillate between fear and love
5話
だから、闇に沈んだほの白い影を必死になって追い続けた。
けれど、追えば追うだけ遠退いて、捕まえたと思っても、その次の瞬間には影さえ手に入れられずに、自分の弱さに悔し涙を流す……そんなことの繰り返しで。
その度に歯を食いしばり、負けるもんか、と強く強く思った。
自分の恋はもうずっと前に壊れて、否応なしに諦めなければならなかったけれど、でもサスケその人は、その掛け替えのない存在だけは、自分から先に諦めたりは絶対にしたくなかった。
だからナルトは追った。
今度こそサスケをこの手に捕まえる為に、必死に、それこそ死に物狂いで追いかけた。
「帰って来いってばよ、サスケ」
「…………ナルト」
腕を伸ばし、その白い手首をこの手に捕えた時には、全身に震えが走るほど嬉しかった。
ずっと好きだったから、生きて、彼を取り戻せた事に、泣きたくなるぐらいの幸せを感じていた。
サスケがここにいる。
自分の傍にちゃんといる。
好き、という想いが消えてしまっても、また昔のように喧嘩友達に戻って、罵声でも文句でもいいからサスケの声が聞きたい。
捨てられた片恋の痛みに疼く胸を、そう思う事で納得させていたのに。
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