フィーリングオブグルーム



例えば、少し夢見が悪かった朝。その倦怠感は突如として肩にずしりとのし掛かってくるのだ。何の前触れも無しに、それは突然に。それは彼が傍に居ようと居まいと変わらないもので、自分自身どうしようもないその感情にうんざりしつつも半ば諦めていた。しかし、そんな時に彼が決まって言う言葉は屈託の無い笑みと共に向けられるのだ。

「どうしたんだい、そんな暗い顔をして」

あちこちにピンピン跳ねる独特の癖がある髪の毛をくしゃくしゃと掻き回しながら、ジェームズ・ポッターは問い掛けた。眼鏡の奥では榛色の虹彩が好奇心に揺れていた。

「……別に」

素っ気なく返すと、ジェームズは不服そうに眉を寄せて、勝手に隣に腰を下ろした。ベンチの上に波を作るローブが触れ合うほどの近さに。

「近い。離れろ」
「……どうしてそう、君はいつも短い言葉で僕を傷付けるんだ…別にこれくらい、全然近くないじゃないか」
「近いと言ったら近い。今すぐ離れろ」
「………はいはい」

ちらりと彼を窺えば、未だに不満そうな表情のままで僅かに離れたようだった。

「にしても、やけに早起きだと思ったらこんな所で読書かい。まだ朝方は冷えるっていうのに、身体に悪いよ?」
「…別にいいだろう、たまたま目が覚めてしまっただけだ」
「そんなに暗い顔をしてるのに?」
「………」
「僕の目は誤魔化せないよ、セブルス。君が大好きな読書をそんなに陰鬱な顔でしてて何も無いと思うほど鈍感じゃない」

いつの間に止まってしまっていたページを捲っていた手を優しく包むように握られた。手から伝わる暖かさは低体温な僕の身体をじわりと暖めた。それはもう、悲しいまでに優しくてたまらない暖かさだった。


(こんな温もりは反則だろう)



end.




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