ふたりあそび

※アンドロイド設定 ※R18


響く。
弾む。
跳ねる。
音が、落ちては綺麗な音楽を奏でた。

「つ、が、るっ!」

澄み渡るような、まだ幼くも軽やかな歌声が止み、津軽の背中には小さな男の子が飛び付いた。

「……サイケ……」
「つがる!ひさしぶりっ!げんきにしてたっ?サイケはげんきだったよ!」

津軽がサイケと呼んだ小さな男の子は嬉しそうな笑顔を浮かべたままで津軽にぎゅうっと抱きついた。

「……サイケ」
「ねぇねぇつがる、きょうはなにするっ?あのねぇサイケはね、」
「サイケ、ちょっと待って」
「?」

早く遊びたくて堪らないのか、サイケは津軽の着物の袖をくいくいと引っ張りながら津軽に話し掛けていたが、その彼に遮られて不思議そうに首を傾げた。

「なぁに?つがる」
「……また今日もワープして来たのか?」

サイケの身体をやんわりと引き離し、津軽はサイケの目を見詰めながらそう尋ねた。サイケは暫くの間、うーんと唸り込んで、何度も首を捻って考え込んだ後、

「……わーぷって、なんだっけ?」

と呟くように津軽を見上げた。

「……サイケ、ワープっていうのは「あっ、わかった!わかったよつがる!うん、あれできたよ?」
「……そうか」
「つがる?どうしたの?わーぷだめ?」

額に指を当て、俯いた津軽の顔を覗き込み、サイケは不安そうに表情を曇らせた。いつも無邪気にはしゃぐその表情を翳らせてしまったことに気が付き、津軽は慌ててサイケの頭に手を伸ばし、柔らかなその髪をそっと宥めるように撫でた。

「ごめんねサイケ、だめじゃないよ」
「……ほんとうに?」
「うん、本当。ただ、臨也にちゃんと言ってから来たよね?」
「いざやくんに?」
「あぁ」

津軽が頷くと、サイケは大きく首を縦に振った。

「ちゃんとつがるとあそんでくるねっていってきたよ!いざやくんはおしごとしてたみたいだったけど」
「そっか」
「うんっ!」

元気良く頷いたサイケに津軽は堅くしていた表情を僅かに和らげて目を細めた。本当はまだ未熟なサイケが慣れないバーチャル空間でワープを使用すると、能力が安定していないせいでサイケ自身の機動力を低下させてしまうので、津軽自身としてはあまり使わせたくはないのだが、こうも無邪気な表情を見せられてしまうとどうも弱い。

「…………ねぇ、つがる」
「ん?」

控えめな小さい声に目線を下げると、揺れる虹彩と目が合った。かちり、と合わさった瞳にどきりとする。

「………なんだ?」

そう問うと、サイケは僅かに身体を震わせて伏せ目がちに俯いた。その様子を訝しく思い、津軽はそっとサイケの頬に手を伸ばし、その白磁のように滑らかな肌を撫でた。

「サイケ?どうしたんだ…?どこか、調子でもわる「ちがうの!」

津軽の危惧する言葉はサイケが唐突に上げた悲鳴にも似た声に遮られた。突然のことに驚いた津軽は言葉を失い、呆然と立ち尽くした。

「――…あっ…お、れ―――」

沈黙を破ったのは明らかに動揺を隠しきれていないサイケのか細い声だった。サイケは小刻みに震える手で顔を覆い、力無くその場にへたり込んでしまった。

「サイケ!」
「つ……がる、おれ、」
「どうしたんだ…?大丈夫か、サイケ」

身体に全く力が入らない状態のサイケの背中に手を回し、そっと、壊さないように抱き締めた。

「つがる」
「……何だ?」

まるで蚊の鳴くような声で呼ばれ、津軽は慌てて顔を上げ、サイケの顔を覗き込んだ。しかし、

「つがる、おれのこと、すき……?」

今にも泣きそうに歪んだ表情でそう問われ、津軽は息が止まるのを感じた。背中を、ひやりとした何かが伝った。

「な―――」
「ねぇ、つがる。おれのこと、すきだよね?」

幼くも愛らしい顔をくしゃくしゃにして、そう言われた。

「サイ、「おれはね、おれはつがるのこと、だいすきだよ?いざやくんより、しずおくんより、だれよりもいちばんっ、つがるがすきなの!だいすき、なの!」

たどたどしくも一生懸命に小さな口から紡がれた言の葉。それを耳にし、津軽はまるでフリーズが起こってしまったように固まった。

「……つが、る?つがるっ、聞いてる……?」

サイケに着物の胸元を弱々しく掴まれて揺すられて津軽は我に返った。

「なぁサイケ、おまえは俺のことが好き、なのか…?」
「うん」
「それは、恋愛感情としてか?」
「うん」
「……どうして、だ?俺たちは恋愛感情なんてものは知らないはずだ。なのに何故、恋愛感情だと言い切れる?」
「……それ、は」

言葉に詰まったサイケが息を飲む。それから目を泳がせて困ったように呟く。

「かくしんはないんだけど、でも、わかるの。これがだいすきっていうキモチだって。これがこいだって」

今にも消え入りそうな、その声に津軽は胸を締め付けられるのを確かに感じた。機械のこの身体に存在し得ない、感覚を確かに。そしてそれに突き動かされるように津軽は

「っ、さい、け…!」
「え……、つ、が――――」

驚いたサイケが上げた声さえも包み込むかのようにその華奢で細い体躯を抱き締めた。先刻より力強く、だが大事に。決して壊さないような力で優しく。

「ごめん、な、サイケ」
「な、…にが……?」
「ごめん、逃げてて、ごめん」
「…つがる?にげるって、なにから?」
「…………全部から」

サイケの問いにそう呟くように返し、津軽は柔らかなサイケの髪に、肩に、顔を埋めた。何処か甘い香りがするサイケの匂いを吸い込み、どうにかして騒ぐ心を静めようとするが、無理だった。甘やかなその香りに津軽の頭は翻弄されるように惑わされ、思考が掻き乱される。

「あのな、サイケ」
「なぁに?つがる、どうしたの?」
「―――俺もサイケのこと、好きだ」

長い沈黙の後に吐き出したその言葉は低く、押さえきれない熱を孕ませたままでサイケに届いた。

「え…、つが「好きなんだサイケ。ずっとずっと前から、お前だけが大切で大切で、守りたくて、恋しくて、愛しくて」

まるで箍が外れたように津軽は自らの胸中を吐き出した。戸惑うサイケを腕の中に閉じ込めて。

「大切でたまらなくて、」
「……ね、つがる」
「?」
「つがるはどうしてわかったの?おれのことすきだって」
「―――そ、れ、は」
「どうして?」
「―――……」
「つがる、おれはね、りゆうなんてなかったよ?きづいたらすきだったの、つがるのこと。だから、」
「……サイケ……」
「……つがるもおれのことすきなら、もっとぎゅってして?」

逡巡の後に漸く続けられた言葉に瞠目し、津軽はサイケを抱き締めていた力を唐突に抜いてしまう。だが正気づいた津軽は再びサイケを抱き締めると、仄かに赤く色づいた耳に掠れた声を落とした。余裕を無くした囁きを。

「……後悔、してもしらないぞ」

だがその台詞を聞いたサイケは嬉しげにはにかむと、津軽の胸に頭を擦り寄せて笑った。

「しないよ、ぜったいに」


×


「つ、がるぅっ……」

荒い息を吐き出しながら、サイケは腰を揺らす。すっかり赤く色づいてしまったサイケの秘孔はぐちゅぐちゅとその幼いサイケの姿とはかけ離れたはしたない水音を立てて津軽の楔をきゅうきゅうとくわえ込んでいる。最初は指の侵入すらも拒んでいたとは思えない。接合部からは津軽の我慢汁とサイケの腸液が空気と混ざり合い、泡を作りながら孔からごぽりと溢れている。

「う、あっ、ひっ…あっ、あああ」

断続的に上がるサイケの声が悲鳴混じりなのは、津軽が緩く腰を揺らし、浅いところに見つけた泣き所を突いてやると、強すぎる快感に慣れないサイケは気持ち良すぎて泣いてしまうからだ。

「サイケ、こっち見て」
「あぅ、ふ、っあ」
「サイケ」
「ん、むぅっ……っふ、は、ぁ」
「可愛い……」

目を瞑って激しい快感の波に身悶えていたサイケの顎を掬い上げて口づけると、息苦しいのか津軽の胸を叩いた。唇を離すと、サイケは何回か咳き込みんで、弱々しく非難するように津軽を見た。

「く、るしいよ、つがる、」
「……ごめん、つい」
「ひゃ、あぁっ、や、つが、るっ…!」

津軽の上で必死に腰を揺らしてひぃひぃと喘ぐサイケが可愛くて、強めに突き上げればサイケは目を見開いて甲高い嬌声を上げた。

「やぁ…っ、おっきくしちゃ、らめぇっ」
「っ、悪い、サイケ」
「おく、ぐりぐりしないれぇ…!」
「でも、気持ちいいだろ?」
「ひぅっ、や、気持ちよすぎるのぅっ!」

喘ぐサイケの胸の尖り口に含み、わざとぴちゃぴちゃと音を立てる。

「ぅ、あ、きもちぃよぉ……」

真っ赤に染まった顔も、赤くなった乳首も、先走りでぐっしょりと濡れた津軽のものよりは幾分か小さな性器も、呼吸に合わせて上下する腹も全てが倒錯的な淫猥さを醸し出していて可愛い。腹に付きそうに反り返っていたサイケの性器を掴み、先走りの滑りを借りて上下に擦る。先端の窪みに爪を立てると、サイケはひときわ高い声を上げた。

「ひゃ、あぁ…っ!」

びくんと大きく跳ねたサイケの性器から勢い良く精液が迸り、サイケの腹と俺の顔までをも汚した。目の近くについたそれを手で拭い、糸の切れたマリオネットのようにぐったりと津軽の胸に倒れ込んだサイケの髪をふわりと撫でる。

「あ…つが、る、ごめ………」
「いいよ、大丈夫」
「でも、めにはいったり」
「してないから。大丈夫だよサイケ」
「……ほんとに?」
「うん、それに無理させたのは俺だから」

汗で額に貼りついたサイケの前髪を掻き分けて津軽が口づけを落とせば、サイケは安堵したように笑った。

「ん……」

サイケの足が津軽の腰に絡み付き、唇が耳元に寄せられる。熱い息がくすぐったくて津軽が笑えば、サイケはあのね、と囁いた。

「もういっかい、だめ……?」


(それは、秘密遊戯)



end.




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