ヴァスハー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


『雪男!』

『兄さん!』


懐かしの日々が甦った
神父がいて、弟がいて、まだ何も知らなくて


「・・・さん、」

『兄さん』


そういえば、いつから雪男の笑顔があんなに眩しいと思うようになったのか
神父や周りの人とは別で、もっと自分の心を掴むような・・・掴む?


「・・・いさん!兄さん!!」

「ゆき、お?」

「やっと起きた、」


ふぅ、と言う嫌味なため息で寝起きを迎えてくれたのは雪男だった
制服ではなく、私服の雪男が今日は休日だと教えてくれる



「また尻尾を握ってやろうかと思ったよ」

「あああ!!それだけは勘弁っ!」


過去にされたそれは、寝起きのダルさを通り超え地獄を見せてくれる
詠唱を唱えるよりも手で握った方が早いと雪男の握力で握られたときの地獄の朝を今でも忘れない


「フフッ・・・・」

「あ、てめっ今笑ったろ!!」

「だってさ、」


尻尾握りのおぞましさを思い出して身震いした俺を雪男が笑った
恥ずかしいのと、見とれてしまったのとで顔が熱いから赤いだろう


「わ、笑うなー!!」


きっとこれは、こ、こここ恋!?
いやいやいやいや家族だぞ、弟だぞ
落ち着け、落ち着くんだ俺


「笑うなって、兄さん顔青くしたり、今度は赤いしさ」


雪男は再び腹を抱えて笑った
どうしたらいいんだ?これはきっとあんな夢を見たせいであって
俺は雪男が好きじゃない!・・・なんてことは無いんだけど


「あれ?ずっと赤いね、熱でもあるの」

「・・・・・っ」


無防備におでこをくっつけようと、眼鏡を外して顔を近づけてきた雪男
思わずびくりと肩を跳ねさせぎゅっと目をつむり縮こまるしかなかった


「・・・・・・・・・?」


こつりと触れたおでこは離れず、ずっとくっついてる
無意識に止めてしまった息もそろそろ続かなくなりそうだ
恐る恐る目を開けた


「!?・・・・・・・っ痛ー、」

「・・・・兄さんてムード壊すのうまいよね」


果たして、やはり雪男はそこで燐を見つめていた
燐は驚きとっさに距離をとろうと後退したところ勢いがありすぎて壁に思いっきり後頭部をぶつけた次第だ

そんな燐に雪男は冷めた目で見やった
眉間にはやはりしわが寄っている


「ななな何だよ!!お前がびっくりするようなことしたせいだろ!?」

「僕のせいなわけ?」

「ったりめーだ!!」


後頭部を手で押さえながら、痛さで滲んできた涙が零れ落ちないように頑張る
雪男がしょうがないなーとクスリと笑った

心臓が飛び出しそう、もうどうにかなりそうだ


「診てあげるから出ておいで」

「・・・・・・」


痛いのはどうしようもないので渋々ベッドの奥から這い出る
雪男は救急キットを持って俺に視線を合わせるように屈んでいた


「ねぇ、兄さん」

「んだよ」


「さっき、僕から逃げたでしょ?」

「なっ!」


何でバレてんだ!?俺の頭覗けんのか!?
そしたら雪男でいっぱいってバレちまう


「逃げたって・・・!!」

「バレバレだよ?兄さん」

「!?」


雪男が真っ直ぐ俺の目を見ている
やっぱり心臓が飛び出しそうになる



「僕のこと、好きでしょう?」



雪男の確信が俺の胸を突いた


(無意識に僕を好きな兄さんも)
(隠そうと頑張る兄さんも)
(気づいてたのかな?)

(僕はもっと昔から)


(*****。)


End.
****************

○アトガキ

裏表ラヴァーズと言うことで原曲が大好きだったので挑戦させていただきました!
モラトリアム人間の湖倶瑠璃と申します
兄さん視点でギャグ風味なシリアスラブ目指しました(むしろシリアルなような・・・、
いざ書こうとしましたが歌詞の意味合いと言いますか、雰囲気を掴むのが難しく4日かかった(^q^)いつもの倍・・・・
裏表は兄さんの戸惑いと雪男の(性格的な)裏表で表せられてたらいいなと(´Д`*)
それでは素晴らしい企画に参加することが出来て嬉しかったです!うだうだと失礼しました!

湖倶瑠璃.

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等身大のキミと僕
モラトリアム人間



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