きみをぺろり、無意識です。


こいつは朝が弱いから。
やわらかい頬を舐めればそれにくすぐったそうに身を捩って、やっと目を覚ます。

今日だってそうだ。
ベッドに手をついて、いつも通りその頬に舌を伸ばす。

(ぺろぺろ ぺろぺろ)

やわらかくて滑らかなその感触が気にいってるってのは、秘密だ。

「ふふ、くすぐったい…」

やっと聞こえてきた声。
それでももう少し触れていたくてもう一度舌を伸ばすと、こっちに伸ばされる名前の腕が視界に入ってきた。
ん?
なんだかいつもと距離感が…
そして次の瞬間、首筋に感じる手の感触に驚いた。

「え?」
「あ、」

やべっ…俺、今犬じゃなかった!
慌てて距離を取って名前から離れる。

「さ、左之助さん?」
「悪かった!人間になってたの、わ、忘れてた」

慌てて言い訳した声は自分で思っていたよりも情けなく響いた。
鏡なんか見なくたって、絶対自分の耳が熱を持っているのがわかる。
くそっ
見られたくなくて手のひらで覆うとすれば聞こえてくる笑いをこらえる名前の声。

「お、おい。笑うなって」
「だって、ふはっ」
「ああー!もういいから!さっさと顔洗って来い」
「はーい…ふふっ」

部屋から出ていく名前の背中を見送った後、脱力してそのまま目の前のベッドへと顔をうずめた。
乱れたシーツからは僅かに名前の匂いがして、さっきまでの恥ずかしさも情けなさも少しだけどうでもいいような気持ちにさせられた。

「甘い…匂い、だ」

そのまま目を閉じて眠ってしまいたくなる誘惑を振り払うように、ベッドから体を起き上がらせる。
食いしん坊な名前に朝食を作るために。
俺の作った飯を食べながら、おいしい、と幸せそうに笑う名前を見るために。



(おはよう編:左之助さんver)



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