「父さんから絵葉書が届いた?」
 珍しく声だけでも分かる程に驚いた豪炎寺に吹雪も目を丸くした。
「あれ、豪炎寺くん知らなかったの?」
 目の前で小首をかしげて不思議そうな顔をした吹雪に、隣を歩きながら豪炎寺も神妙にうなずいた。
「父さんは一言もそんなこと言っていなかった」
「そうなの?まぁいちいちそんなこと言わないか」
「と、言うか、父さんがそんなことするなんて珍しくて驚いた」
 ひとり納得して頷く吹雪をよそに豪炎寺は吹雪の隣で深く考え込んでいた。
豪炎寺の父親がいくら吹雪の主治医だったとはいえ、
しかも父親が吹雪の主治医だったのは去年のFFIの途中のことで、
一か月半程度のことだ!そんな短い期間の患者の為に絵葉書を送るような細やかな性格の人ではない。
それにしても仕事一筋のあの父と絵葉書が結びつかないと、
豪炎寺が吹雪に対してではなく、父親に不信感を抱くのは、
長年忙し過ぎる仕事のせいで家族の団欒をなかなか設けてくれなかった寂しさや、
サッカーを続けるに当たって衝突した思い出やらと、
そして大半は吹雪に対して近づく男に無条件に差し出す敵対心がごちゃ混ぜになって豪炎寺の眉間に深くシワを刻んだ。
 なにせ吹雪はよくモテる。
女だけならまだしも男にすらその美貌は通じるようで、FFIを終えてから吹雪の幼い顔立ちに魅了された男たちから段ボール一箱分のファンレターが届いたし
(ちなみに女からのファンレターはその三倍だった)、
街を一人で歩けば男女問わずナンパのエンカウント率が何かのアイテムでも使っているのかと思うほどに頻繁である。
自分の父親だって、いや自分の父親だからこそ吹雪に愛情を持ってしまったのではないかと不安になった。
普段から食の好みや性格も、父親譲りだなんて言われて育ってきたのだ。
人の好みだって似ている可能性も高い。
父親にだって譲る気はないと、吹雪の整った横顔を横目でチラと見ると
「それはきっと、ボクが豪炎寺くんの友達だからだよ」
 豪炎寺の内心など、どこ吹く風で微笑んでいた。
 こいつのふわふわと笑った顔は好きだがもう少し警戒心を欲しい。でないといつか誰かに襲われるんじゃないだろうか。
今だって歩いているだけで色んな女の人が大量に振り返っているというのに。
 豪炎寺はたかが一つの絵葉書でそんなことまで考えて、吹雪の隣で盛大にため息をついた。
送られてくる視線の半分は豪炎寺のせいでもあると気づかずに。
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