Fortune Cookie

ちょっとだけ小洒落たカフェの窓際の席を陣取ってティータイム。お気に入りのアッサムは美味しいのに、窓に映る自分を見て溜息ばかり吐いてる。


『好きなのに…』


ありきたりだけど、突然やって来た転校生に恋した。色素の薄い髪と、色白の肌、赤い目が凄く印象的な渚カヲル君に。彼の容姿は色んな女の子を魅了して、周りにはいつも可愛い子が居る。委員長よりも地味な私は勿論眼中になし。


『仲悪いって言ってたけど、アスカちゃんと居る時が一番絵になってるんだよね。』


同じ転校生エヴァパイロットのアスカちゃんと並んだ渚君は本当にお似合い。ファンクラブの子たちが悔しがってたけど、アスカちゃんへの嫌がらせはしないらしい。


『そうだよね。アスカちゃん可愛いし、頭いいもん。』


折角お友達になれたのに、アスカちゃんを僻んじゃってる自分が嫌んなっちゃう。彼女が悪いわけじゃない。悪いのはきっと私の卑屈な心。だって男の子は優しい子が好きなんて言うけど、実際は絶対に違う。可愛くなきゃ選択肢にだって入れやしないんだもん。


『顔がいいって、ステータスだよね…』


どんどん沈んでいく気持ちを紛らわそうと口を付けたアッサムは、いつの間にか冷めきっていた。茶色の表面に映る表情は、無表情。これじゃ、ダメだよ。


「名字さんこんにちは。」


「へっ?」


「相席いいかな?」


何この奇跡。明日私死んじゃうんじゃない?そんなこと本気で思っちゃうくらい、吃驚してる。当たり前だよ、だって声をかけて来てくれたのは意中の渚君だよ!?他の子を呼ぶその声で、私の名前を呼ばれたらどんなだろうって想像した時があったけど。ヤバイ、泣いちゃいそう。


「こ、こんにちは渚君。ど、ど、どうして此処に?」


「はははっ、どもり過ぎだよ名字さん。」


「ご、ごめんなさいっ!?」


驚きと緊張で思うように言葉を紡げない私。もう、笑われちゃったじゃん!!印象度アップどころか、圏外に入っちゃうよこれじゃ…


「このお店に入ったら同じ学校の制服の人が居て、よく見たら名字さんだったんだ。だから来ちゃったんだけど、迷惑だったかな?」


「そそ、そんなことない、ですよ!私はすっごく嬉しいから、そんな迷惑だなんてこれっぽっちも思ってないから、大丈夫ですっ!?」


「そっか、ありがとう。」


ふんわりと笑う渚君が目の前にいる。夢でもいいから覚めないで欲しいな。そんなことを頭に抱きつつ、夢の様な時間を存分に堪能した。けど随分と時間が経ってから、カヲル君に呼び出しが入ってしまって、もうお別れの時間。


「今日は急だったけど相席ありがとう。」


「う、ううん、私こそありがとう。楽しかったです!!」


「はは、名字さんって思ってた以上に楽しい人だね。」


「ふぇ!?」


「じゃぁ、僕行くね。あ、これお礼。よかったら食べて?」


軽やかに去っていく渚君の後ろ姿を見送って、力が抜けたように椅子にへたり込んだ。テーブルの上には、彼がお礼だと置いていったお菓子屋さんの袋。


「なんだろう?」


可愛らしいオレンジのラッピングを開けると、中には色んな形のクッキーが入っていた。


『これって、フォーチュンクッキー?』


一つだけ手にとって食べてみる。中に入っていた運勢を記す紙をドキドキしながら開いて文を読む。


「人生捨てたもんじゃないかも…」


これがどういう経路で私の手元に来たのかとか、気になることは色々あるけど。さっきの奇跡のお茶会のおかげで全部どうでもよくなった。




Fortune Cookie


(あんた、名字にクッキーあげたんですって!?)

(うん、あげたよ?)

(名字は渡さないいんだから!!)



あとがき
すんごい久々ですね。

可愛らしい曲だったから、がんばって書いてみました。よくわかんなくなったけど…


こんなんでしたが此処まで読んで下さってありがとうございました!!! 


inspired by 恋/す/る/フ/ォ/ー/チ/ュ/ン/ク/ッ/キ/ー







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -