bach's melodies

寝付けない夜。ベッドに転がって横を見るけれど、そこに此方を見る優しい瞳は無い。


「はぁ、」


こんな夜には音楽をかける。睡魔が来るまでずっと。








「選曲間違えた、よね…」


哀愁に駈られ、窓の外の月を見た。


「綺麗。」


でも、どうして?君と眺めた月に今更囚われるの?


あの日のカヲル君が、私の隣で唯微笑む君が、脳裏に過った。折角、覚悟を決めたのに
袖を引かれるような錯覚さえしてしまう。


ふつふつとそんなことを考えていたら、懐かしい香りが鼻腔を擽った。気がする。


馬鹿馬鹿しい。カヲル君は使途で、敵で、シンジ君が…


それでも、部屋に溢れるチェロの音に、思い出が、記憶が霞んでいく。







「名字さん。」


『カヲ、』


吐き出した空気は声帯を震わせず、意味のない音のまま口を抜ける。


「どうしたんだい?風邪でも引いた?」


必死に伝えようとする私を、カヲル君は勘違いしてしまった。


「無理はしちゃダメだよ?」


くすり、くすり


綺麗な笑顔が眩しくて、苦しくて、病的に白い身体に抱きつこうとした。





「はっ!? ゆ、め…?」


彼の体は触れる直前に光に弾けて、反動で意識が浮上した。


「忘れ、させてよ。前に進ませてよっ!」


夢に、現に姿を見せる君。忘れかけていたのに、忘れられないのは誰のせい?



Bach's melodies





あとがき
この曲聴いた時に、絶対書くって決めてました。


けれども誰にしよっかなーって思って放置…


「月」と言うフレーズでカヲル君かな?と思い直しこうなりました。


こんなんでしたが此処まで読んで下さってありがとうございました!!



inspired by バッハの旋律を夜に聴いたせいです




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