Star Gazer
「今日も綺麗。」
日常生活と避難を繰り返す日々。そんな中、唯一の癒しは近所の公園で夜空を見ること。
「何が綺麗なんだい?」
「っ、な、渚君?」
独り言のはずが、返事が返ってきた。しかも、声をかけた人物は、学校の人気者―渚カヲル君
「そんなに驚かないでよ名字さん。」
「ご、ごめん、なさい。」
「敬語じゃなくていいよ。」
「えっと、うん…」
あの渚君に敬語なしなんて、恐れ多いことこの上ない。でも、困ったような、少し悲しげな表情をされてしまっては、仕方がないと思う。
「ところで、名字さんは何をしていたの?」
「星をね、見てたの。」
「星?」
「うん。今まで平凡だったのに、最近は避難指示ばっかりでしょ。」
「そうだね。」
「普通だった日常が崩れても、あの星たちは変わらないなって」
「変わらない様が綺麗なのかい?」
「んー、そうなのかな?なんて言っていいのか分かんないや。」
訳が分からなくなって、乾いた笑いしか出てこない私。
「手の届かない物は好き?」
「へ?」
手の届かない物?流れからして星のことだろうけど…いきなりどうしたのかな?
「僕はね、欲しくて欲しくて、堪らない物があるんだ。」
「そうなんだ。」
「だけど、いくら手を伸ばしても、まったく届かないんだ。」
「うん。」
夜空を見上げたまま話す渚君。話の内容は、どうやら星ではないらしい。
「焦がれるばかりで辛いんだ。」
恋愛相談、というやつなのかな?
「幸せだね。」
「えっ?」
「だって、渚君にそこまで想われてるんだもん。幸せ者だね。」
気付いてないのもったいないなーって笑えば、さっきまで夜空を眺めていた彼がこちらを向いた。
「そうなのかな?」
「そう思うよ。少なくとも私は。」
私の答えが腑に落ちなかったのだろうか。複雑な表情の渚君。
「えっと、私帰るね。」
「あ、送っていくよ。」
「目の前だから大丈夫。」
ちょっとだけ渚君の表情に耐えられなくなって、逃げるように帰宅することを告げてしまった。
「そっか。じゃぁ、また明日。」
「うん、また明日ね。」
そう言って自宅に向かっていた途中だった
「―」
何か聞こえた気がして振り返ってみれば、先ほどと変わらない位置から渚君が手を振っていた。
なんだかその姿が可愛く見えてしまった私は、手を振り返して再び家路に着いた。
Star Gazer
（君は遠いね。）
あとがき
あはははっはは。ごめんなさい、sweetieが書くとこうなりました。