逆転の発想


テオ先生の所で薬をもらうようになって、幻覚に怯える日々は減った。


『大丈夫、大丈夫っ、安定剤が切れてるだけっ。』


だが、まだこうして発作に襲われる。


きっかけは、昔の出来事だったり、バリーの所でのことがフラッシュバックすること。


「大丈夫、だいじょう、」


座り込んでいた私の頭上に影が差した。


「アーレっちゃん?」


「ナナシさん…」


顔を上げた先に立っていたのは、便利屋に出入りする警官のナナシさん。


「顔色悪いぞー。薬持ってるか?」


ウォリック達とは違い、かっちり着こなした黒スーツが印象的な人だ。


「はい、」


「んじゃ、出して、出して。開けてやるよ。」


「ありがとうございます…」


勝手知ったるなんとやら。薬を手渡してくれた彼はグラスに入った水を用意してくれた。


「ほーら、後は横にっと。」


慣れた手つきでソファに運ばれ、横たえられる。


「すみません。」


「謝ることはないぞ。俺はお巡りさんだからな!!」


横たわる私の隣に、そっとナナシさんが腰かけた。


「まだ、思い出すか?」


「バリーはもう、」


「ん。」


「でも昔を思い出すんです。母のこと、弟のこととか…」


どうしてこんなに大事なことを忘れていたんだろうかと自責の念にかられる。


「っ、ナナシさん?」


急に視界が暗くなった。男性独特の骨ばった冷たい手の感触が肌を伝わる。


「アレちゃんは強いよ。TBを此処まで克服した女の子を、俺は他に知らない。」


「でも、まだ…こうなっちゃって、」


「俺な、辛いことがあった時は、あって良かったーって思うようにしてんだ。」


「辛いことなのに?」


「普通なら笑っちまうだろ?でもな、逆転の発想だ。」


視界はナナシさんの手で遮られているから、彼の声だけが響き渡るように聞こえてくる。


「その辛いことを乗り越えれば、俺はもっと成長できる。そう考えたら、自然とありがたいって思えるもんなんだよなー。」


視界が開けるのと同時に、不思議だろ?と笑うナナシさんが見えた。




逆転の発想


(強くなれますか、私も?)

(勿論、だから今は休むんだぞ。)



あとがき
楽しい日課のお昼のサスペンス鑑賞をしていたら、サブキャラがいい感じのセリフを言ってくれたので書いてみました!


アレっちゃんと警官。多分ありえない設定だよね…いやだって、彼女のこと一味と一緒に始末しようとした方々ですから。きっと彼は、気にはかけてたけど立場上手が出せなかった人です。便利屋が助けてくれたので、ちょいちょい顔を見に行ってるって感じですね。その話を書けやって感じですよねー。


こんなんでしたが、読んで下さってありがとうございました!!









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