いっそ、
俺は知っている。
『よぉ。』
「あっ、ニコラスさん!!」
花の咲いたような笑顔で出迎えるナナシ。こいつは俺の前ではいつも笑っている。
「はい、いつものです!」
『明日、空いてるか?』
「明日、ですか? 空いてますよ?」
『迎えに来る。』
「へ、えっと、よろしくお願いします…」
ほんのり朱の差した頬が煽情的で、自分を想ってくれているのだと実感できた。事務所への道すがら、後ろ髪を引かれるように彼女に想いを馳せる。
『泣いてんだろうな…』
前に一度、品を置き忘れるなんてヘマをして店に戻ったことがある。そこで、ナナシが涙を流しているのを見てしまった。ついさっきまで笑っていた彼女がだ。
自分と恋仲にあることは彼女のプラスにはならない。そんな中で、あいつの優しさに触れた心は暖かく、己を必要とする心は愛しい。口をつく溜息に諦める、別れるなんて意味が含まれておらず、我ながら辟易する。そして、もう離してやれないのだと自覚してしまう。
その涙を止めるために、俺は何ができる?傍に置いて、囲って、繋ぎとめて…だが、それを実行してしまえば、あの笑顔は二度と見ることができなくなるだろう。
『明日、いつもより構ってやるか。』
いっそ、言葉で縛ってしまおうか…
(俺は何処にも行けないから)
(俺は何も変われないから)
(お前が居なければ息の仕方も忘れてしまうから)
あとがき
あれ、ニコラスさんってこんな感じでしたっけ…
キャラが迷子とか…orz
駄作でしたが、此処まで読んでくださてありがとうございましたああああ!!!
inspired by ララバイ