苦労と子どもの日

「たでーまー。」


一仕事終え、事務所に戻って来た俺ちゃん。いつものように、ゆるっとした声をかけた。


「あれ?」


普段なら返って来る筈の姉の声がない。部屋の中を見回し、地下にも様子を見に行ったが
影どころか気配すらなかった。


「え、ちょ、ねぇちゃん!?」


やばいやばい。あの人は、別段何かできるような人間じゃない。


ひらり


焦っている俺の目の前に、風に吹かれた一枚の紙が飛んできた。


「デスクから?何だ?」


『Dear.Worick

君のお姉さんは預からせてもらったよ。

From.M』


「…何やってんだあの人!!」




心当たりのある場所にやって来たが、あの人の真意が分からない。


『何故ねぇちゃんを連れてく必要がある?』


あの人だって自分の姉には会ったことがある。そして、なによりも彼女が"普通"だと言うことを理解している。


「くそっ、考えてもわかんね「あはははは、ヤンー、デリコがー!」え、笑ってる?」


こっちの気も知らない様な笑い声の方へ向かえば、よく分からない光景が広がっていた。


「デリコちゃん何してるの?」


「う、ウォリックさん!?」


「お、やっと来たか。」


青と白の見える布に雁字搦めになったスーツ姿の銀髪。それを見て爆笑するその他。


「てか、ニコラス?」


爆笑する集団の中には、よく見知った姉と相棒の姿。そう言えば、仕事がないにもかかわらず、こいつの姿も見当たらないことをすっかり忘れていた。


「ウォリーック!あのね、あのね!?」


「お、おう、どったの?」


かなり興奮した様子の我が姉。一体何が起こっているんだ?


「コイノボリ!!」


「もう一回言って?」


「こ、い、の、ぼ、り!」


あの青、白の布か…


「どういうことですか、モンローさん?」


にこにこと此方を見つめる元凶M、もといダニエル・モンロー。


「子どもの日を祝おうと思って、わざわざあれを用意したんだが、うちにはあれを純粋に喜んでくれる奴が居なくてね。」


「だから、俺の姉を…」


「ナナシちゃんなら喜んでくれると思って。」


つまりこうだ。モンロー組で子どもの日を祝おうとした。しかし、身内に鯉のぼりを見てはしゃぐ奴が居ない。ならば、はしゃいでくれる人間を連れてくればいい。そしてその人間がねぇちゃんだった、と。


「ねぇ、モンローさん!」


「おや、どうかしたのかいナナシちゃん?」


あちらさんの腹の内を知らないねぇちゃんは、予想通りの興奮状態。


「コイノボリが泳いでるとこみたいっ!!」


「そうだなー、そろそろ空にひらめく姿がみたいもんだ。」


そう言って彼とねぇちゃんは生温かい視線をデリコちゃんに向けた。


『お互い、辛いねぇ…』


暫く空に舞うことのなさそうな布を見て、しみじみと我に返っのだった。





苦労と子どもの日





あとがき
本当に何が書きたかったのやら…


こんなんでしたが、お目通しありがとうございましたぁぁぁあああ!!!








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