貴方のいない世界


嫌な夢を見た。いつもと変わらないエルガストルム。違うのは、貴方がいないこと。



「はぁー」


モンロー・ファミリーの拠点。その一室で私は今朝の夢を思い返していた。


『なんであんな夢見たんだろ…』


私には付き合っている奴がいる。同じファミリーのデリコだ。互いに無愛想ながらも、幸せな日々を過ごしていた― 筈


にも関わらず、夢の中に彼は存在しなかった。一番嫌だったのは、その状況を当たり前のように過ごしていた自分自身だ。


「ナナシ?」


いつの間にかデリコが傍にいた。久々に見た夢が後味の悪いもので沈む私を、不審に思っているよう。


「ねぇ、」

「なんだ?」

「もし、もしもよ。」

「…」

「この世界に私がいなかったらどうする?」


固まってしまった彼。意地悪なことを聞いてしまったと今更ながらに後悔してしまう。


「ごめん、わ」


続くはずだった「忘れて。」は彼にのみこまれてしまった。


「ぷはっ、」

「―らない。」

「ん、デリコ?」

「ナナシのいない世界なんていらない。」


返ってきた答えは私を嬉しくさせるものでもあり、悲しくさせるものでもあった。


『ごめん、デリコ。貴方がいない世界で、私は普通に暮らしてたの。』


繰り返されるついばみ、溺れてしまおうと、自ら唇を重ねた。




貴方のいない世界

(本当に聞きたいこと、)

(そこで生きる私を貴方はどう思いますか?)







あとがき
甘いの書きたいのに撃沈。最近気づいたんですが、此処の作品悲しいの多いですね…

舞い降りろ、糖分の神様!!?


Inspired by 桜流し.


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