ゆるり、離別
冷やりとした空気に意識が浮上した。身震いを起こして、隣の体温を探す。
『あぁ、居ないんだ。』
未だにやってしまう癖を自嘲してみた。相変わらず、私はお前を思い出してしまう。
『マルコ』
遠い街、エルガストルム。黄昏種と健常者が共存する街。今居る軍施設からは、蜃気楼でさえ見ることはできない。
もう暫くしたら、新しい誰かと出会って恋に落ちるだろう。本当でも、嘘でも、その恋をお前の知らない此処で育んでいく。
『私は、お前を忘れて生きていくよ…』
2人でヨエルさんの所まで使いに行った道。便利屋と出くわした裏通り。お前と知り尽くした街なんぞ、誰が帰ってやるか。薦めてきた映画、よく聞いた曲も、二度と見ないし、聴かないだろう。2年ほど一緒に世話になったアパート。今はもう、他の誰かが住んでいて昔の面影すら塗り潰されていればいい。
風の噂で聞いた。今はヨエルさんの所の孫とお付き合いしてるそうじゃないか。確か、コンスタンスさん。私とは違い、元気で快活な女性だったと記憶している。よかったじゃないか、今度は良い人に巡り合えて。こっちは、まぁ、心配には及ばない。少しお前を忘れるのに時間がかかっているだけだからな。
「今更気付いたって遅いんだよ。」
少しの後悔とお前との恋は、長い人生の端にでも置いて先を急ごう。
「さようなら、マルコ・アドリアーノ」
ゆるり、離別
(お前の世界に別れを)
(私たちの世界にも、)
あとがき
あれ、甘くなんなかったよ…何でだろう?
マルコさんでした。コニーちゃんが居るのでどうしようかと思ってたのですが、歌詞見た瞬間、「あこの人や。」となってしまいました。
こんなんでしたが、此処まで読んで下さってありがとうございました!!!
inspired by スローグッドバイ